表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/353

閑話3、江月仁・江月静(35)の場合。

モブ参加企画、こむ様『江月仁・江月静キャラ設定』考案いただき、ありがとうございます!

「……ご苦労様」


「毎度!!」


 言葉少なに礼を言って届いた荷物を受け取り、ホッと息を吐く。

 接客業をしている割に、未だ初対面の人間に話す時は文字数が少なくなってしまう。悪い癖だ。


 江月静(こうづきしずか)(35)は、雑貨店の店員である。

 店長からは「メガネとってちょっと磨けば美女なのに!」と悔しがられる容貌をしているが、本人にとっては無用の長物。何故なら彼女は『愛でられるより愛でたいタイプ』だからだ。

 こんな嗜好を持っているのは双子の兄の仁のせいでもあるのだが、今のところ彼女は兄に感謝こそすれ、嫌うことは無い。ご近所でも有名な仲良し双子……なのである。


 届いた荷物を開けると、予想通りの品で顔が緩む。

 常連さんが昨日電話で取り置きを依頼するほどのボディソープ。とりあえず二十本ほど仕入れたと言ったら「それなら二本取り置きをお願いします!あと店を紹介したから同じボディソープ買いに来る人がいるかも!男の人だったら……健闘を祈ります!」と言ってたが、静は彼女を面白いお姉さんと認識しているため、いつもの冗談だと思って聞き流していた。

 まさかその事で今日、静の人生を変えるとんでも無いことが起ころうとは、今は誰も知らない。

 空いていた棚に品物を並べ、開店準備が完了した静は入り口のシャッターを開けに行った。


「…………」


「おはようございます」


「…………」


「あの、開店ですよね?」


「…………」


「もしもし?もしもーし?」


 静がシャッターを開けると、信じられないくらいの美青年が立っていた。

 長めの黒髪をかきあげて、ジーンズにTシャツというラフな格好の中にも、ブレスレットなどの小物を身につけていてオシャレな感じに見せている。

 男性とは思えない綺麗な白い肌で、整った顔には微笑みを浮かべて静をジッと見ていた。


「大丈夫ですか?」


「……え、あ、はい」


 そっと静の額に手を当てる彼は「熱はないな」と呟く。その手の甲で頬を撫で、静のほつれた髪をそっと耳に掛けてあげる。

 その瞬間、頭から湯気が出たと思うくらい真っ赤になった静は、絞り出すように「いらっしゃいませ…」と声を発するのであった。











 江月仁(こうづきじん)(35)の、日曜日の朝は早い。

 平日はほとんど手入れをしない髭を剃り、髪をきちんとセットし、清潔感のある服に着替えて家を出る。

 早朝から開いている駅前の喫茶店でモーニングを頼み、コーヒーを飲みながら十時頃まで時間を潰す。周りを見ても収穫は無い。今日はハズレか……と腕時計を見る。


「そろそろかな……」


 喫茶店を出て商店街から脇道にそれると、最近増えてきた雑貨屋が並ぶ場所がある。

 双子の妹の静が勤める店に行く為、その途中の店々を冷やかしながら歩いていく。


「可愛い新作の雑貨とか仕入れてないかなぁ」


 仁は可愛いものが好きだ。そして美形の男性も好きだ。

 休日は可愛い雑貨を愛でながら、イケメンを眺めるのが仁の幸せな時間である。眺めるだけで何かしようとは思わない。あくまでも鑑賞するのが好きなのだ。


 ふと前を見ると、妹の働く店の前で、背の高い男性がたっている。

 そして、その男性は自分の妹である静に話しかけていた。


(ナンパ?)


 確かめるために近くまで行くと、その男性が振り向いた。


「あの、この店によく来られる方ですか?」


 その男性の綺麗な顔は、困ったような表情をしててもなお美しかった。

 仁に向かって問いかけると、再び静の方を見る。静はすっかり魂が抜けたように呆然としていて、顔は真っ赤だ。確かに男に免疫のない静は、こんな美青年を見たら意識レベルの低下は当然だろう。


「ああ、この子は妹なんです……あれ?」


 仁は気づく。この男性に見覚えがあると思ったら……。


「もしかして、最近出てきたモデルのミロク?」


「わぁ、俺のこと知ってるんですか?すごく嬉しいです!」


 パァっと周りが明るくなったかのように錯覚するほどの笑顔に、仁はクラクラ目眩を感じていた。

 仁が初めてミロクを知ったのは、愛読書でもあるメンズnannaの表紙だった。通常と違い、ポッと出のモデルを起用する思い切りの良さと、そのモデルの魅力に仁は大興奮したのを覚えている。

 店の前で立ち話も往来の邪魔になるから、仁は静とミロクを店に入れる。


「あの、妹がこんななので自分がお金預かるよ、何を探しているの?」


「ボディソープです……あ、このメーカーだ。これ二つください」


「ああ、このシリーズ良いよね。自分はこっちのシトラスレモンを使ってる」


「ああ、確かに」


 ミロクは仁の首すじに顔を寄せる。びっくりして固まる仁を気にすることなく、クンクン匂いをかぐとミロクは「爽やかで良い香りですね」と耳元で言うと体を離した。


「…………」


「ありがとうございます。また来ますね」


 にっこり笑って店を出るミロク。

 その日、江月兄妹が立ち直るのに数時間かかったというのは、この数分後に出勤してきた店長の後日の話である。









お読みいただき、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ