20、結局どうなのか確認、そして虎の尾。
嵐のような尾根江プロデューサーが去ると、会議室でおっさん三人は途方に暮れる。
彼曰く「発表会でみた三人が表紙になっている雑誌を見て、私の中で確定したわ!」との事だった。
打ちのめされるヨイチ。軽い思い出作りとしてやった事が、まさかこんな大事になるとは思ってもみなかったのだろう。
「まぁ、でも企画の段階ですし……」
「何言ってんだ。あの尾根江加茂が『美形オッサンがアイドルなんて、面白いわ!』って、企画がどんどん出てくるって、ウキウキで帰って言ったんだぞ?」
「……シジュごめん、僕のせいで」
「まぁいいさ。俺はともかくヨイチのおっさんがキツいんじゃねぇか?」
「最悪フミに回してもらう。あの子はここの業務ほぼ網羅してるから。決済は僕がやるけどね」
「フミちゃんハイスペックですね。かっこいい……」
ミロクは髪をホワホワさせながらテキパキ働くフミを思い浮かべ、蕩けるような笑みを浮かべる。
「ぐぅ……またこいつ、色気のコントロールしろっつーの」
「色気?何がですか?」
コテリと首を傾げるミロクを見て、ヨイチはシジュの肩にポンと手を置いた。
「シジュ、無自覚タラシに何言っても無理だから。なんせ無自覚だから」
「すまねぇ、俺が無力なばかりに……」
「何なんですか!俺は何もしてないですよ!」
ぷりぷり怒るミロクが、場の空気を緩めてくれる。本人は気づいていないが、彼がその場にいるだけで拗れた問題が自然と解決することがある。
ヨイチもシジュも、そんな彼に助けられていると改めて感じていた。
「ま、尾根江さんは自分がプロデュースしているのを隠すって言ってたから、基本は地道にミロク君をメインに活動……って感じかな」
「ああ、それなんだけどよ、さっき俺ら三人宛に仕事入ってた」
「「え?」」
「この前の雑誌、GAINAからだ。モデルだと」
「ま、こういうのも活動に入るだろうから、やるべきだろうね」
三人は疲れた顔をお互いを見合わせて、これからの不安を飲み込みつつ解散となった。
「え、叔父さん本気?」
「そうなんだよね。僕自身もびっくりだよ」
事務所に残っていたフミに、事のあらましを話すヨイチ。なぜこうなったかは、もう自分でもよく分かっていない。ただ尾根江の「三人でやれば絶対面白いわ!」という言葉に乗ってしまったのだ。
「売れる」じゃなくて「面白い」と言う彼のビジョンを見たくなってしまった。これは自分の悪い癖だ。
「まぁ…でもミロクさんが一人じゃなくて、ちょっと安心かも」
「はは、フミはミロク君にだけは過保護だなぁ。とりあえず僕は動きながらでも仕事出来るようにしておかないと。フミの負担が大きくなってすまない」
「ううん!尾根江さんプロデュースの仕事に携われるなんてすごい!私も頑張る!」
「でも尾根江さんの事は秘密なんだ。実際デビューするかも分からないしね。ただ三人の活動はするから、取り急ぎGAINAの撮影のスケジューリングはシジュに頼んでおいた。フミは僕らとミロク君の仕事に被らないようよろしく」
「はい、社長」
フミは自分の叔父を改めて見る。
事務所の運用が上手くいかず、ストレスのあまり太っていたのは心配していたが、元の格好良い叔父に戻った上に、ミロクと芸能活動をする事になるとは……。
セットした少し長い前髪が落ちて、それをかき上げる仕草は昔と変わらず魅力的だ。
テレビに出て有名になったりしたらどうなってしまうのか、尾根江ではないが「面白い」とフミは感じる。
それにミロクの王子様みたいな魅力と、シジュの野獣っぽい魅力がプラスされたら……やっぱり「面白い」のだろうと。
「社長……いえ、叔父さん」
「なんだい?」
「ミロクさんのお姉さんと付き合ってるの?」
一区切り付いてお茶をすすっていたヨイチは、思いっきり噴いた。
「げっほげっほ……な、なんでそんな話になるんだ?」
「二人で会ってるところを見たから」
「それだけで?」
「だって、叔父さんってそういうの気を使うでしょ?二人でとか。それもミハチさんだよ」
「それはミロク君の事を話していて…」
「それだけじゃないよ」
ヨイチのデスクの前に立っていたフミは、ゆっくり横に動くと、そこには笑顔のミハチが立っていた。
「こんばんは、フミちゃん、ヨイチさん。何か興味深い話をしていたわね?」
「あ、あの、ミハチさ…」
「ミハチさん!叔父のことをどう思っているんですか!?」
ヨイチの言葉を遮り、フミは思い切って聞いた。思い切りの良い所もフミの長所である。
そんな彼女の言葉にミハチは艶やかに微笑む。
「どう思って欲しい?」
そんな彼女の微笑みに顔を真っ赤にしてフリーズする二人。
天然タラシ王子の姉ミハチはクスッと笑い、化粧品サンプルを置くと「またね」と二人の顎を人差し指で撫でて去って行った。
如月家の二人は、大崎家長女に為す術もなく敗北するのであった。
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次回はミロク君と悩めるおっさんシジュの絡みです。




