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14、発表会に向ける三人と裏の策。

 衣装はヨイチが用意することになり、小道具は帽子にするらしい。

 SNSのグループトークにぽこぽこ入ってくる情報は、何だか皆で少しずつ作り上げていく感じがして嬉しい。


(文化祭とか参加出来なかったからなぁ……)


 カラオケで練習しながら、ミロクはほっこりとした気持ちになっていた。

 最近知り合ったシジュさんは面倒だと言いながらも、ダンスのカリキュラムには大体参加していて、プロの動き方をミロクに教える。一言アドバイスするだけで、ミロクがターンの後によろける事が無くなった。元プロダンサーの実力はかなり高いようだ。

 ヨイチもシジュも四十代とは思えない体力を持っている(ミロクの体力が無さ過ぎるという説もあるが)。なんとか二人について行こうと、発表会の曲をカラオケで歌いながらも体は動かして、息が上がらないようにひたすら自主トレするミロクであった。









「ミロクさん、おはようございます!」


「あれ?フミちゃん?」


 カラオケ店から出たミロクに、ぺこりと頭を下げるフミ。肩までの茶色い猫っ毛の髪がホワホワ揺れて、相変わらずの小動物感を出している。


「叔父……社長からミロクさんがカラオケで練習されてると聞き、迎えに来ました!」


「何だか悪いね。でも助かったよ、ありがとう」


 ミロクは興が乗ってしまい、つい時間ギリギリまで歌っていたのだ。


「うふふ、聞きましたよ。シジュさんも一緒に三人で発表会に出るとか、私も見に行きますね」


「フミちゃんはシジュさんを知ってるの?」


「はい、社長を迎えに行った時に、ジムでお会いした程度ですけど」


 なぜか少しホッとするミロク。そんな彼の小さな感情の揺らぎにフミは気づかない。


「今日から事務所の雑用を手伝ってくれるみたいで、久しぶりに会ったんですけど『野獣!』って感じですよね。無精髭とか」


 それを聞いたミロクは無意識に自分の顎を撫でる。体毛が薄いため、濃い男性には憧れていた。恐る恐るフミに問いかける。


「フミちゃんは、シジュさんみたいな人がタイプ?」


「へ!?あの、その、な、何で!?」


「あ、ごめん、一般的な話だから。ワイルドな感じが良いのかなって……あ、仕事の参考に!参考にしようと!!」


 真っ赤になるフミを見てミロクは自分の失言に気づいたが、言い訳の言葉も色々とおかしくなっていく。そんな彼の様子にフミはハタと気づく。


「もしや、ミロクさん日焼けサロンとか行こうとしてません!?」


「え!?」


「だからダメですって言いましたよね!ミロクさんには元々持つ個性を出せば良いだけなんですから!」


「あ、はい、すみません」


 すっかり勘違いされたミロクは現場に到着するまでの約一時間、フミのお説教をくらうのであった。












「はい、振付の動画。友達に頼んで作ってもらった。鍵付きでアップしてっからサイトで確認して。Tシャツの赤がミロク、青がヨイチのおっさん、黄色が俺ね」


「え!?全員振付が違うの!?」


「落ち着けおっさん、大体同じだがポジションの入れ替わりがあるだろ?あと俺らコーラスやらないとだし」


「え、えええ!?」


「大丈夫だって、ファルセットは俺やっから」


「シジュさんって……やっぱりすごいです……」


「それは普通だって。ホストも歌が上手いのもひとつの武器だったりするんだ」


 シジュはニヤリと笑う。この人はまだまだ武器を持っていそうだなとミロクはこっそり考えていると、インストラクターの人が呼んでいる声が聞こえた。


「あ、そうだ、これから仕事だった!」


「頑張れよー」


「フミに今日は直帰で良いと伝えてくれる?」


「了解です。行ってきます!」


 輝くような笑顔で走っていくミロクに、おっさん二人は「今のやつ(笑顔)は現場で必要だったんじゃ?」と苦笑いで見送る。






「シジュ、厄介な事を押し付けて悪いな」


「謝るなって。ちょうど無職だったし、バイトとして雇ってもらえたしな」


「でも、僕までやらなくても良かったんじゃ……」


「馬鹿だな、一ヶ月引きこもった俺でさえキツかったのに、あいつは十年近くだろ?今こうやってやりとり出来るだけでも奇跡だ。モデルだけじゃなく他の才能を伸ばしてやりたいのは分かるが、人前でいきなり一人はハードルが高すぎる」


「シジュ……お前って優しい奴だったんだな」


「ちげーよ。あいつが素直過ぎるだけ。俺は特に何もしてねーよ。それよりここからがヨイチのおっさんの踏ん張りどころだ。専属トレーナーは続けてやっから、おっさんも頑張れ」


「分かった。ありがとう」


「あとさ、ミロクの姉さんだっけ?あの人一体何なの?俺の今の肌質があり得ないくらいツルツルモチモチなんだけど」


「あの人が何なのかは知らんが、怒らせない方が良いという事は知ってる。僕の肌も彼女の実験でツルツルモチモチだよ」


「…………なんかすげーな」



 途中まで良い話っぽかったのに、姉ミハチの話で思わぬダメージを受けるおっさん二人なのであった。






お読みいただき、ありがとうございます!

裏で動くおっさんズ。

ラスボスはミハチさん。

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