表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/352

111、ワルツのお披露目。

歌詞が……

ウッドベースにストリングスが乗る。流れる曲は三拍子のワルツ。

燕尾服で身を包んだ三人のうち、真ん中にいるミロクは一人スタンドマイクに腕を絡める。

両側にいるヨイチとシジュは、仮面をつけた白いドレスの女性をパートナーとして、ワルツの曲に合わせて踊り始めた。

パートナーのいないミロクは、スタンドマイクを片手に一人で踊る。

甘く響くテノールで歌い出したミロクは、少し悲しげに目を伏せてみせた。



花ひらくように、咲いていくドレスを

ただ虚ろに、見るだけの日々

続くワルツは、単調に回る

同じ音、同じメロディ、変わることはない


貴方の手をとることを

ずっと求めているのに

黒をまとう貴方は

闇の中では見えない



ヨイチのターンで、女性は柔らかく身体を反らすと、その間をシジュはゆったりと女性をリードしてターンをする。

数組のバックダンサー達は男女共に仮面をつけて、一斉にくるりと回った。

ミロクは、周りに合わせて体を揺らし、再びよく響く声で歌い出す。



移り変わる世界に、散っていく花達を

泣くことなく、見るだけの日々

続くワルツは、ひたすらに回る

同じ音、同じメロディ、変わったのは貴方


ドレスを脱いだ私を

求める人はいないけど

待つ私にドレスはいらない

貴方の手があればいい


続くワルツは、回っていくだけ

同じ音、同じメロディ、始めたのは貴方

繰り返す、同じメロディ、終わらないワルツ











「もうやらないからね! 明日絶対筋肉痛だわ!」


「姉さん、最近ジム行くのサボっているでしょ」


撮影が終わると、さっさと椅子に座って仮面をとる姉のミハチに、ミロクは思わずツッコミを入れる。ちなみにミロクは頑張っているものの、なかなかオッサン二人の体力に追いつかない。


「ミロクのCMが好評すぎて、商品の売り上げ好調、おかげさまで残業過多なのよ!」


「それは良いことじゃないの?」


「残業多いと、ジムで体動かすのがキツイのよー」


「僕も最近行けてないなぁ。爆発的に忙しくなったからねぇ」


さり気なくミハチの隣をキープするヨイチは息ひとつ乱していない。後から来たシジュも同様だ。

今回ミロクは歌メインであり、歌は録音したものを流していたので疲れてはいない。それでも女性と踊る二人をみて、ミロクは少し羨ましかった。


「俺もフミちゃんと踊りたかったなぁ……」


「フミは踊れないよ。そして壊滅的に不器用だよ」


「え、そうなんですか? ヨイチさんもヨミさんもダンス上手なのに?」


「義姉さんに似たんだろうね」


苦笑するヨイチの後ろで、それまで黙っていたシジュが口を開く。


「なんか悪かったな。俺のせいで……」


「ああ、もうそれ聞き飽きましたよ。姉さんもニナも、久しぶりに踊れたし良かったと思いますよ。ねぇニナ」


「うん。良い練習になった」


「つか、何で大崎家は社交ダンス習得が必須なんだよ?」


「まぁ、家風みたいなものですよ。習い事もそうでしたしね」


「……腑に落ちねぇ」


「あはは」


「笑ってごまかすな!」


そんな掛け合いに皆は笑顔になる。不貞腐れたような顔をしていたシジュも、しょうがねぇなと笑顔になった。


「それにしても、眼福だわぁ……」


ミハチがうっとりした顔で吐息交じりに言う。バックダンサーの人達もこくこく頷いている。


「何が?」


首を傾げる美丈夫の三人。


ミロクはカチッとした燕尾服に、髪は絡めず緩やかに後ろに流す程度だ。今回女性目線の歌詞である為、ミロクは中性的に見えるようメイクもしている。どちらでもいける感じの妖しげな色香がすごい。

ヨイチはアッシュグレーの髪を丁寧に撫でつけており、モノクル(片眼鏡)をかけて「お嬢様」と言えば美形のやり手執事の出来上がりだろう。

シジュは先程の美しいダンススタイルとはうって変わって、タイも緩めてセットした髪も乱れている。舞踏会の合間に女性と逢引きしたかのような、情事の途中のような色気が出ていた。色々あって少し疲れている感じが、その色気に拍車をかけているようだ。


ミハチはスマホで撮影しまくり速攻どこかにメールを送っている。


「SNSには上げないでね」


「分かってるわよ。ここに居ないフミちゃんにだから」


「だと思ったけど、一応ね」


ドレス姿のミハチと撮影してご満悦なヨイチだが、さすがに仕事は忘れていない。


「あれ? ニナは?」


「着替えるって言ってたな」


「な!! まだ大崎家オンリーの写真撮ってないのに……母さんに殺される……行くわよミロク!!」


「はいはい」


慌てて走っていく姉に、苦笑した弟のミロクは後を追って行った。


「ミロクの姉さん、まだまだ元気なんじゃねぇか?」


「ふふ、そこが可愛いよね」


「はいはい。ハゼロハゼロ」


「……今回頑張ったのに」


「これは俺だけの声じゃねぇからな」


シジュの言葉に、後ろにいたバックダンサー達が「その通り」とばかりに、首を思いっきり縦に振っていたのだった。





お読みいただき、ありがとうございます。



……精進します。m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ