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序章 月明かりの下、決意と
ひんやりとした風が木々を揺らし、辺りは密やかな騒めきで満たされている。
闇夜の様な黒髪をなびかせながら、少年が一人佇んでいた。
艶やかな毛の愛馬の元で、彼は天を仰ぐ。
「……嗚呼、凄いな。星が、綺麗だ」
感嘆の声を漏らして、そっと愛馬のたてがみを梳く。
彼によく懐いたそれは、気持ちよさそうに目を細めた。
「帰ろう。故郷に。何としてでも絶対に、生きて帰る」
穏やかな風が頬を撫でる。
空を映した瞳が、わずかに揺れた。
「どんなに過酷だろうと、俺は諦めないよ。
どれだけ傷ついたとしても、この旅を続けてきた意味を、交わした約束を、
―――あの人の想いを、無駄にするわけにはいかないから」
言葉に込められたのは強い意志。
凛とした声は、夜風に乗って掻き消えた。
そこに、微かな寂しさを残して。
強く風が吹いて、黒衣の裾が翻る。
満天の夜空を見上げる旅人を、ただ蒼月が穏やかに照らしていた。
初めまして、雪鷲と申します。
書き方が迷走していますが、大体こんな感じで書いていこうと思っています。
更新ペースは亀ですが、末永くお付き合いいただければ幸いです。