生徒会の、生徒会による、生徒会の為の議論会
初めまして、投稿者の黒井沢です。
お立ち寄りいただき、誠に有難うございます。
今回が初投稿ということもあり、振り仮名の付け方などもまったく無知ですが、ご了承ください。
誤字・脱字も見つけ次第、指摘してください。
また、この作品にはアニメネタなどが含まれますが、今回は一話ということで、わかりやすいものを基本的に使用しています。
ぜひ、コメントや評価などをお願いします
午後五時。
授業が終了し、部活動が行われるこの時間に生徒会室には長いテーブルを囲むようにして、男子生徒二人と女子生徒二人がそれぞれ向き合うように座っていた。
そして、その間にももう一人女子生徒が。
つまり、計五人の生徒がここに集まっていた。
「では、早速始めましょうか」
間に座っていた黒いロングの髪で目のパッチリした女子生徒…生徒会長である『輝夜』が立ち上がった。
それに合わせ他の四人も姿勢を整えた。
輝夜は、水性ペンでホワイトボードへと何かを書き始めた。
本日の議題である。
キュッ、というキレのいい音と共に彼女はそれを書き終えた。
『無人鳥に1つ、何か持っていけるとしたら?』
というものだった。
「あー、会長……」
輝夜の斜め前に座る金髪で二重の目をした男子生徒、副会長の『愁斗』が議題の文字へと指を立てた。
そこに輝夜は慌てて訂正をする。
『無人島に1つ、何か持っていけるとしたら?』
「では、気を取り直して。今日はこの議題について、です」
輝夜は小さく咳をして、場を仕切りなおした。
そして、A4の白い紙を他の四人に渡す。
「そこに自分の考えたものを書いて下さい」
その言葉に皆、頷いてポッケや鞄やらからペンを取り出す。
三分程の時間が流れ、答えが出揃った。
「じゃあ、まずは僕から」
愁斗の横に居る、茶髪で鋭い目をした男子生徒、書記の睦月が率先した。
「では、お願いします」
輝夜は会釈をする。
「僕の意見では、ナイフが妥当ではないかと」
一同は頷く。確かに必要だ。
それに恐らく、百人にこの質問をすれば二十人はこう答えるだろう。
性格にも捻りがない、睦月らしい答えだった。
「では、それを選んだ理由をどうぞ」
「そうですね。大きな理由は、魚を捌いたり、建築に使う木材を作ったりするのにも使用することができるからです」
睦月は自信ありげにその意見を示した。
もうこれが結論でいいのでないかという空気になった。
「じゃあ、次俺でいい?」
が、空白の間を押し潰すように愁斗が手を挙げた。
彼は学力も特に良いわけでも真面目なわけでもない。
しかし、友達付き合いがとてもよく、人望だけで副会長までのし上がった者である。
「では、どうぞ」
輝夜は左手を翻して愁斗へ向けた。
「俺は、四次元ポケッ
「論外です」
輝夜は愁斗の言葉をさし止めた。
「論外って、駄目っすか?」
その言葉に輝夜は呆れ、睦月を見て、もう一度愁斗を見る。
「1つだけ何か、と言いましたがあらゆるものとは言っていません。それが許されるのなら、どこでもいけるドアや装着型プロペラも選択可能になってしまいます」
こんな考えをするのは愁斗ただ一人だけだ。
「「ギクッ……」」
という訳でもなかった。
愁斗と睦月と向かい合う茶髪と黒髪の女子生徒二人が肩を震わせた。
前者は会計の亜美、彼女は緑の眼鏡と垂目ということで暗い印象を受ける。
後者は風紀の夏目、キリッとした感じでとにかくキリッとした女性、っぽい見掛け倒しだ。
「お二人、どうかされましたか?」
輝夜は焦る亜美と夏目を気に掛ける。
「あ、いや。別になんでも」
と亜美が紙を隠そうとする。
が、愁斗はそれを見逃さず、彼女から取り上げる。
そして、読み上げる。
「んと、ダイヤのピッケル。理由は、地下に掘り進めば黒曜石があって、ネザーゲートが作れるから」
「あぁ!この野郎、愁斗!なに読んでるんだよ!!」
素の彼女は結構口が悪い。
「どこのブロックの世界の話ですか……」
輝夜はため息をつく。
実は輝夜は結構ゲーマーであり、亜美の書いたことが理解できている。
夏目は自分に周囲の目が来てないことにホッとし、紙をそっと鞄の中に入れようとした。
が、こちらも亜美の時同様、紙が取り上げられる。
「あ!ちょっ睦月、やめてよ!」
夏目はジタバタして睦月からそれを取り返そうとする。
しかし、睦月はそれを難なく避ける。
「プリキュアの歴代から現在までのDVD。理由は、全部見終わるくらいには救助が来そうだから」
「あぁぁ!違くて!それは私がプリキュア好きなだけで、じゃなくて!だから、その……」
夏目は沸点、いや融点にまで達し、やがて机へと突っ伏した。
「全く……まともなのは睦月君だけじゃないですか」
輝夜は再度ため息をつく。
「いやいや、そんなことないみたいですぜ」
愁斗はニヤニヤしながら睦月の紙に書かれたナイフとは違う、もう1つの答えを読み上げる。
「斜線で修正されてますけど、読めるな。っと、よゐこの濱口。理由は、0円生活の経験を持つ彼ならば実際にそんな状況になっても適切な行動をとることができるから」
これもなかなかの意見だった。悪い意味で。
だが、睦月は別に動揺していなかった。
「これの何処が恥ずかしいのですか?むしろ、四次元ポケットだのネザーゲートだの、プリキュアだの、そんな考えに比べればこの回答は満点です」
そもそもプリキュアのDVDを持って行ったとしても再生するものがないことなどの点に気づいていない一同も一同である。
「ところで、会長はどんな意見を?」
不意に亜美が問う。
確かに、先程から輝夜は他人の意見ばかりを肯定・否定しているだけで、自分の考えは示さなかった。
すると彼女は少し下を向いて赤くなった。
「私は、猫一択ですね」
場の空気が静まり返る。
沈黙が流れ、時計の針が動く音だけが生徒会室に響いた。
これはその答えはどうなんだ、ということに対してではなく、輝夜のイメージが皆の心の中で壊れたからだ。
誰か何か会長に言ってやれ、と愁斗が目を配るが睦月と亜美は目を逸らす。
夏目に至っては寝た様に死んでいる。
いや、逆だ。死んだように寝ている。
「……そんなに、可笑しかった、ですか?」
輝夜がそう囁く。
「会長、よくそれで人に呆れられていられましたね…」
今度は亜美がため息をつく。
「そうですか?私は先程、睦月君が仰った様にこの意見も満点なのでは?」
その言葉に机が震える。
「じゃあ、私のDVDという意見も正当なものでは?」
半泣き状態の夏目が顔を上げる。
「夏目さんの意見では確かに余暇を楽しめ、希望を持ち続けられるということにも読み取れます」
「絶対違うだろ……」
愁斗が言葉をはさむが、輝夜は気にしない。
「しかし、全人類の意見を代表してのものが今話し合われています」
「いつからそんな大事に…」
再度、愁斗はスルーされる。
「つまり、全人類の中でプリキュアが好きな人はどれだけですか?」
妙に説得力がありそうだが、言っていることは滅茶苦茶だ。
が、夏目は完全敗北したように沈んでいった。
「なら、会長の意見はどうなんですか?」
亜美が指を立てる。
「プリキュアの場合は先程通りですが、猫の場合は、全人類の中で犬派・猫派・その他とおよそ三分割できます」
「でも、死ぬか生きるかの瀬戸際で猫を選ぶ人間がどれだけいますかね…」
睦月の一言で完全に論破された。
確かにそうだ。
これは母親に買って欲しい物をねだるのとは訳が違う。
ドラゴンボールを七つ揃えて物をねだることに等しい。
しかし、輝夜は引かない。
「でも、猫ならば『お魚咥えたどら猫』っていうぐらいですし、魚を捕って来ますよ!?」
「それは顔がみんな同じの髪型しか違わない一家だけの話です」
亜美がダメ押しをする。
正直、もう無人島関係なしに自分が何を欲しいか語り合う会、みたいになっている。
愁斗が不意に立ち上がった。
「こんなものはどうっすか?」
愁斗がホワイトボードに何かを書き始める。
『負けないこと・投げ出さないこと・逃げ出さないこと・信じぬくこと』
「素晴らしくないか?」
愁斗は誇らしげにドヤ顔をする。
某ブラザーズバンドの曲の歌詞である。
が、輝夜はため息をつく。議論の中だけで三回目だ。
「却下です。1つ、何かをという議題なので」
1つ、ということで複数は駄目だ。
「じゃあ、こんなんはどうでしょうか」
プリキュアが好きなことを開き直り、完全回復した夏目が愁斗の字の下に書き始めた。
ふっふふー、と鼻歌を歌いながら進める。
『元気』
「どっこのアントニオだよ」
亜美が素で感想を言ってしまう。
まぁ、ツッコむのも無理はない。
しかし、一人はその言葉に賛同したようだ。
「筋は悪くないです…」
輝夜が悩み始める。
真剣だ。
「この二つを組み合わせる、というのは?」
輝夜のそんな姿を見て、睦月が提案する。
亜美は「そうね」と頷く。
正直彼女は面倒になって適当に返事をしただけなのだ。
「そうですね、恐らくそれが私たちの答えなのかもしれませんね」
輝夜はひらめいた答えを大きく、力強く書く。
「できました……」
『大事MANトニオ猪木』
皆、違う意見を出し合い、やがて一つの答えを出す。
それが例え、どんなものになろうと。
それこそが生徒会の、生徒会による、生徒会の為の議論会なのである。
有難うございました。
初投稿の初話いかがでしたか?
少し物足りなさがあったりした方、申し訳ありません。
自分はもともと、話の中で人物の容姿を説明するのが得意ではありません。なので、今回はこのような出来になってしまいました。
次回はキャラの個性をもっと出した話にしたいです。
また、ネタを使い過ぎ!という方にも申し訳ございません。
しかし、こちらもしっかり自分の考えで笑ってもらえるようにしていきたいです。
ぜひ、次回も読んでください!