1話~出逢い~
はるか昔に書いていたものに少し手を加えたものです。初めての投稿なので、何かと不適切なところもあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
「やっと出逢えた」
一人の少女がそこに立っていた。けれど、少女は自分がどこにいるのかわかっていない。やけに頭がぼうっとして、ただそこに立っているだけだった。
ああ、夢なのだと少女は思った。
何度も何度も繰り返してみる夢だ。
そこには誰もいない。でも、少女は待っている。誰かを。逢ったこともない、その誰かを。でも、どうして自分は待っているのだろう。それすらもわからぬまま、じっと待っている。
確か、誰かに頼まれたのだ。誰だったかは憶えていない。とても昔のことだったような気がする。もういつだったかは憶えていない。
永遠に続くその場所で、少女はずっと待っていた。
そうしているうちに、どれほどの時間が経ったのだろうか。
ある日、世界が揺れた。やわらかく、なめらかな声と共に。
少女の目の前に、もう一人の少女の姿がゆっくりと鮮明に映し出される。
この少女もずっと探していた。ずっとずっと探して。鈴のように美しく響く声に導かれ、ようやく少女を探し出した。
初めて二人は巡り会えた。この夢の世界で。互いに顔を合わせたこともないのに、こんなにも懐かしいのはどうしてなのだろう。
「ようやく逢えた。ずっと、ずっと貴女を探していたの」
でも、あまりにも遅すぎだ。崩壊はすでに始まってしまった。だから―――。
「お願い、私たちを助けて」
その声はまるで子どもの姿のまま大人になったかのよう。
そして、この声をもう何度も聞いている気がいた。今この瞬間に初めて耳にしたのにも関わらず、本当はずっと聴いていた気がした。
「貴女でないと。貴女の助けが必要なの。早くしないと、間に合わないところまで来てしまっている。だから、ア……ス……タ…て…」
もう一人の少女の言葉は最後まで続かずに途中で途切れた。それは、その少女のほうでなく、待っていた少女の世界がぐにゃりと形を変えたからだった。
ああ、と少女は悟った。忘れていた。そう、ここは夢の世界だったのだ。身体が目覚めようとしている。それと同時に、ここにある心もそれに引き戻される。
待って。まだ、何も聞いていない。
声にならない悲痛な叫びもも願いも届かず、少女の姿はどんどん遠ざかっていく。
瞳が開かれるその前に、少女が最後に眼にしたものは、どこか懐かしい鮮やかな髪の色だった。
どちらの夢か、今はもうわからない。
ただ、二人の少女は夢の中で出会ったのだ。