表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

1話~出逢い~

はるか昔に書いていたものに少し手を加えたものです。初めての投稿なので、何かと不適切なところもあるかもしれませんが、よろしくお願いします。

「やっと出逢えた」


 一人の少女がそこに立っていた。けれど、少女は自分がどこにいるのかわかっていない。やけに頭がぼうっとして、ただそこに立っているだけだった。

 ああ、夢なのだと少女は思った。

 何度も何度も繰り返してみる夢だ。

 そこには誰もいない。でも、少女は待っている。誰かを。逢ったこともない、その誰かを。でも、どうして自分は待っているのだろう。それすらもわからぬまま、じっと待っている。

 確か、誰かに頼まれたのだ。誰だったかは憶えていない。とても昔のことだったような気がする。もういつだったかは憶えていない。

 永遠に続くその場所で、少女はずっと待っていた。

 そうしているうちに、どれほどの時間が経ったのだろうか。

ある日、世界が揺れた。やわらかく、なめらかな声と共に。

 少女の目の前に、もう一人の少女の姿がゆっくりと鮮明に映し出される。

この少女もずっと探していた。ずっとずっと探して。鈴のように美しく響く声に導かれ、ようやく少女を探し出した。

 初めて二人は巡り会えた。この夢の世界で。互いに顔を合わせたこともないのに、こんなにも懐かしいのはどうしてなのだろう。

「ようやく逢えた。ずっと、ずっと貴女を探していたの」

 でも、あまりにも遅すぎだ。崩壊はすでに始まってしまった。だから―――。

「お願い、私たちを助けて」

 その声はまるで子どもの姿のまま大人になったかのよう。

 そして、この声をもう何度も聞いている気がいた。今この瞬間に初めて耳にしたのにも関わらず、本当はずっと聴いていた気がした。

「貴女でないと。貴女の助けが必要なの。早くしないと、間に合わないところまで来てしまっている。だから、ア……ス……タ…て…」

もう一人の少女の言葉は最後まで続かずに途中で途切れた。それは、その少女のほうでなく、待っていた少女の世界がぐにゃりと形を変えたからだった。

 ああ、と少女は悟った。忘れていた。そう、ここは夢の世界だったのだ。身体(・・)が目覚めようとしている。それと同時に、ここにある()もそれに引き戻される。

 待って。まだ、何も聞いていない。

 声にならない悲痛な叫びもも願いも届かず、少女の姿はどんどん遠ざかっていく。

 瞳が開かれるその前に、少女が最後に眼にしたものは、どこか懐かしい鮮やかな髪の色だった。

 どちらの夢か、今はもうわからない。

 ただ、二人の少女は夢の中で出会ったのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ