スィート ジェミニー
賢二は、続けた。
「すると、何気に青の服の、その人が俺の側に来てな。俺の方から話をすると、気さくに応対してくれて、会話が自然と弾んだ。俺は、そんな中で彼女に魅了されて、オフ会が終わる直前に、連絡先を聞いたんだ。すると、それにも、すんなり応じてくれた。俺は、そのオフ会を去った。しかし、その教えてもらった番号には、結局は、連絡せず、そのままにしてしまったんだ・・」
「どうしてだ?いい感じだったんだろ?何かイレギュラーか!?」
和明が聞く。
「いや・・、あの時の俺の考えというか、気持ちの問題というか・・。こんな例えは、少し可笑しいかもしれないが、昔、俺は、あるカードゲームをしていて、そのカードをコレクションしていた。そういったカードには、必ずレアなカードがあってさ。それが一枚、手に入るとスゴく喜んだものさ。それが、たまたま、もう一枚、同じレアなカードが手に入ったとする。それは、本来、スゴく喜ばしいことなんだが、なんだか、2枚が手に入ったことによって、レアな感じが薄まるんだよ。うまく伝わらないかもしれないが、自分の中の価値が下がるのさ。実際は、そのカードの価値は下がらないのに。話を戻すと、俺は、そのヒトが双子であり、同じような人間が、もう一人いるという感覚、そして、あまりにもスムーズに連絡先が交換できたことに、その出逢いの素晴らしさ、その人の美しさ、その人と俺の相性も決して悪くないことを、曇らせてしまったんだよ・・。俺が考えが浅いこと、世間知らないこと、そんな出逢いは、そうはないことを分からなかったことが、今更ながら悔やまれてさ。一人で最近、それを考えていたんだ。そしたら・・」
「さっきの彼女が、目に入ってさ!その時の双子の青い方だと思ったのさ!」
「マジかよ?さっきの彼女がか?」
和明は、興奮して聞いていた。
賢二は、答えた。
「いや、それがさ、結論から言うと、赤い服を着ていた方だったんだよ。彼女に、3、4年前に、そのオフ会に参加したか、と聞いたら、それは、あると答えたが、俺のことは、一切、記憶にないと・・・。俺は、その時、話した内容を伝えたが、どれに関しても、首をかしげていた・・。」
和明は、まだ興奮して聞いていた。そして言う。
「つまり、賢二が最近、テレビとかを見ていて、双子のタレントが気になっている原因は、そのオフ会で見た双子の女性の影響があり、そのうち、お前と楽しく過ごした方を最近、思い出し、それが、さっき見かけた彼女だと思ったが、その彼女は、双子の赤い服を着ていた方、つまり、お前とは無縁だった人だったと!」
「ザッツ ライト!その通りだ!分かりづらい話だろ・・」
賢二は、また遠い目をして、言った。
和明は、まだテンション高く言う。
「いや、賢二!お前、さっき、よく、あのヒトに声かけに行ったよ!お前が、動かなかったら、何も分からない話だろ!それに、これは、御前の願いというか、何かが、今の彼女との出会いを導いてくれたんじゃないのか?お前が、もし、また今の彼女と再会したら、『あの商店街で、以前、声かけた者ですが・・・』と、言えばいいし、もし、青い方と再会したら、もう一度、オフ会で話したことを覚えているか、聞けばいいじゃんか!!」
賢二は、タメ息をついて言った。
「はーっ、お前、そんな世の中が、うまくいくように思ってんのか?・・」
「それでも、世界は出会いの奇跡に溢れている・・きっと、そうさ!」
和明は、そう言って車のエンジンをかけた。
ざわめく、商店街を颯爽と車は駆け抜けて行く。
(終わり)




