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DARIA-鬼の数奇-  作者: 葉名
出逢うべくして出逢う者たち
3/6

……… 2 ………

 Barの店内は、外と違って人の数は賑わっており、テーブル席もカウンター席も、ほとんど埋まっている状態だった。

 しかし誰もが、騒ぐことなく酒を嗜んでいる。


 カウンター越しに、マスターと思われる年配の男性と、1人の若い女性客が話をしていた。

「……お嬢さん、あんたもねぇ」

マスターは蓄えたあご髭をさすりながら、ため息まじりに言った。

 カウンター越しに座っているその客は、幼い顔立ちをした若い女だった。自分の髪と同じオレンジ色の飲み物が注がれたコップにストローを挿し、ちるちると飲んでいる。

「どうするつもりか知らないけど、世の中知っていい事と知らなくていい事ってのがあるんだよ」

そう話すマスターの表情は、先ほどから曇っていた。マスターの言葉を黙って聞いているオレンジ髪の女も、表情は晴れていない。

 マスターは入り口のドアが開く音が聞こえると、顔を向けた。

 2人の男、ロードとザンサスの姿が目に入った。

「いらっしゃいませ。お好きなところへ」

 ロードは店内を見渡しながら、店内の奥カウンターの方へ進んだ。

 そして、オレンジ髪の女の隣の席を指差して、マスターに向かって言った。

「ここ、いいか?」

「ああ。……いいよね、お嬢さん」

女はロード達に目を配ることなく、むすっとした表情のまま頷いた。


 ロードとザンサスがコートやマフラーを脱ぎながら席に座ろうとすると、マスターは女に向かって先ほどの続きを話しだした。

「例えば、あんたが今私に聞いてきたことは、イイ例だね。間違いなく、知らなくていい事だよ」

「……」

ロードは、おしぼりを持ってきたバーテンダーに向かって手をひらりとさせた。

「何か適当にあったまるやつと、あったかい茶1つずつ」

「かしこまりました」

ロードは一息吐き出し、そこでようやく、隣で俯いている女の姿にちらりと目をやった。

「……そんなこと言って」

先ほどまで黙っていた女が、突然口を開いた。

「どうして大して知らないんでしょ! 偉そうに!」

マスターはまた深いため息をついた。

 女は眉をひそめながら、飲み干して空になったコップをマスターに突き出した。

「どこに行ってもそう…みーーーーーーーんな、知らないんだから!」

マスターはコップを受け取り「まだ飲む?」と聞いた。女はそれに返事はせず、頬杖をついた。

「なんでみんな知らないのよ? あんな有名人! 誰か一人くらい、ちょっとだけでも情報もってないの?」

 ロードは横目でザンサスを見た。

 ザンサスはその視線に気付いてか気付かずか、変わらない冷静な顔で、ロードの方を向き言った。

「お腹すきませんか? 私はパスタのようなものを、食べたいですね」

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