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高天原物語  作者: 兎鬼
17/21

『十七章 妖怪の総大将』


暗い暗い森、そこに一人の老人とヤマタノオロチがいた


「ひょひょ、そのスサノオとやら神を痛い目に遭わせればワシらの名誉よ」


老人は髭を撫でながら言う


「まあそうだが、上手くいくかね?」


「ひょっひょっ!ワシを誰だと思うとる?」


「はいはい、妖怪の総大将さん」


「分かっとるではないか。ではワシは奴に文でも書こうかの」


といい老人は筆をとり、文を書き始める。


何か策でもあるのだろうか?あれほどまで自信たっぷりなのは見たことがない。


ヤマタノオロチは酒をくいと呑むと老人をじっと見た。いかにも弱そうである、だがこんなやつが妖怪の総大将とは。


「ひょひょ!出来た!ではお主には悪いがスサノオはワシが倒すのでの!」


「お前に出来るのか?」


「ワシを誰だと―――」


「分かってる分かってる!妖怪の総大将、《ぬらりひょん》だろ」


「ひょひょ!そう、このぬらりひょんに勝る者など―――」


やれやれとヤマタノオロチは頭を掻く、長話しが始まった。

――――――


「ひゃっほう!私の勝ち!」


清香が手を広げて喜ぶ


「あら、でも二番着は私が安定ね」


笑顔だがその心には闘志が宿っているのが分かる。負けていられない、スサノオは緊張した。


さて、俺たちが何をしているのかというと双六をしている。これがなかなか面白くて何度目か、そして俺の最下位も何度目か。


――――


結果は俺が最下位、天姉が二位、月兄が三位となったところで双六は終わる、天姉はぐうたらと縁側で昼寝。月兄は寺子屋にいるオモイカネに会いに行った。清香はと言うと―――


「おまっ、俺のかすていら!」


「一片残ってたから要らないのかと思って」


「いるって!なんで遠慮とかしないのさ!」


「私は強欲ですからね」


「酷い女だ」


こんな感じである、まあ仲良くやっている。


「そういやあの雷は静かになったな」


「あ、そう言えば」


ここ暫く雷が凄かった、天姉が言うにはタケミカヅチなる人物の仕業だと言っていたがどうなのだろうか。


「でも今日も平和ですねー」


清香は伸びをする、何とも呑気なやつである


「ああ、平和だな」


ヤマタノオロチ、オーディン、アマツ、マガツチ、酒呑童子、ヤマ、色々あった。そう言えば金時は元気でやっているだろうか?


「んー、私は妖怪でも懲らしめに行こうかなー」


そう清香は言うと家を出た、あいつもここに来て結構経つ、家族の者は心配しないものか?






「いや平和平和」


村を歩きながら清香はあくびを一つ


「あ。あなたは」


そこに大天狗が現れる


「あら、何かしら?私とやろうってことかしら?」


「いやいやいや!ちょうどよかったです、これ、スサノオさんに渡すように言われまして」


と大天狗は一枚の封筒を渡す


「手紙?まあ渡しておくわ」


「ありがとうございます、では」


といい大天狗は飛び去った、さて何の、誰からの手紙かと封筒を見るが宛先も何も書いていない。疑問に思いながらも清香はスサノオに渡すため家に戻ることにした。


「あのー・・・」


家に戻った清香は玄関の前を掃除していたスサノオに声をかけた


「ん、なんだ」


「大天狗から手紙を渡すように言われたんですが・・・」


「なに、手紙?」


スサノオは手紙を受けとると封を切り、中を読む。何度か頷き、手紙を閉じる


「何だったんですか?」


「なんか出雲村にある広場に来てほしいとさ、なんだろ」


「はあ、出雲村ですか」


「んー、まあ行くだけ行ってみるか」


「はい、気を付けてくださいね」


「ん、じゃ行ってくる」


刀を持ち、出雲村へ向かった。







そして出雲村に難なく着いたわけだが。ヤマタノオロチの騒ぎのあと。ここにも人が増えたな。スサノオは混雑する道を歩き、クシナダの店へ行った


「懐かしいな」


立ち寄りたいが今は広場に行こう、この先にあるはずだ。









心地よい風が吹く、ただ広い場所に着いた。いや、ここはヤマタノオロチと戦った場所だ。しかし何故ここに呼んだのか。


・・・あれから数分後、いっこうに手紙の主は見当たらない、イタズラか。帰るとするか。と戻ろうとしたときだ


「イデッ!」


何か壁にぶつかった、しかし何も見えない。だがスサノオはそれが何か知っていた。


「いてて・・・なんで《塗壁》が・・・」


「ひょっひょっ、何故だと思う?」


背後に声がする、スサノオはそちらを向くとそこには小さな老人が一人いた


「お前か、手紙を送ったのは」


「ひょひょ、左様、ワシが主を呼んだ」


「目的はなんだ?」


「なに、少しばかり痛い目を見てもらおうかなと」


スッ、と老人が手を上げると周りから妖怪が現れ、逃げ道を阻む


「なるほど、挑戦状か」


「ひょひょ、なに、殺しはしない。ただ我々の名誉にしたいだけよ」


「ふん、老人に何が出来る!」


スサノオは刀を抜き、間合いを詰め切りかかる。だが老人はひょいとそれを避ける


「老人ではない、ぬらりひょんじゃ」


ぬらりひょんはスサノオを蹴り飛ばす。スサノオは転がり、妖怪の壁にぶつかる


「おいおい、まさかのぬらりひょんかよ・・・」


ぬらりひょんは妖怪の総大将と聞いている、どれほどの強さか・・・


「チッ、負けるかよぉ!」


「ひっ」


ぬらりひょんは小さく悲鳴を上げる。なんだ、睨んだだけだぞ?


「おおおお!」


雄叫びをあげ、切りかかる


「ひ、ひぃ!」


ぬらりひょんは驚き飛び退く。なんだ?さっきから、まるでビビり・・・


まさか


スサノオはぬらりひょんは睨んでみせる。するとぬらりひょんはガタガタ震え始めた、それでスサノオは確信した。こいつ弱い、と


「しゃあ!行くぞ!っらあ!」


そう叫び、ぬらりひょんに向かって走る


「ひいい!」


ぬらりひょんはあわてふためくが、ニヤリと笑った


スサノオはそれに気付き、足を止める


「ひょひょひょ!行け!《ダイダラボッチ》よ!」


突然辺りが暗くなった、まるで雲に太陽が隠れたように。スサノオは空を見上げる


「あ・・・あ・・・」


それを見て声が出なかった。そこには山のように巨大な一つ目の巨人、ダイダラボッチがいたからだ


「ひょひょひょ!やってしまえダイダラボッチ!」


ダイダラボッチはゆっくりと顔を動かし、スサノオをその一つ目で見る。それだけでスサノオは震えた、勝てそうにない。これには。スサノオは直感的に思った

逃げようにも足がすくむ、冷や汗が頬を伝う。ダイダラボッチは高く拳を上げ、そして───


ゴッ!


思いきり叩きつけた。しかし、その拳はスサノオを襲うことはなかった。


「ひ、ひぃぃ!な、何するんじゃ!」


拳はぬらりひょんの近くを叩きつけていた、何が起こったのか、理解出来ない。仲間割れだろうか?


「その辺にしとおけ、ダイダラボッチ」


どこかから声が聞こえた、その声を聞くとダイダラボッチはゆっくりと拳を持ち上げ声のする方を向く


スサノオとぬらりひょんはその方向を見た。次々と妖怪が道を空け、一人の人影が現れる


「お、お主はぁ!なぜここに!」


ぬらりひょんは驚きの声を上げる


「なんだ、俺がいちゃマズイのか?」


スサノオはその男を見た途端、身の毛がよだった。禍々しい妖気、巨大な力を感じた。


「いやすまないね、ぬらりひょんが迷惑かけて」


その男はいつの間にかスサノオの目の前にいた


「・・・!」


スサノオは声が出なかった、ただ驚きに体を強ばらせる


「いやいや、争うつもりは無いよ。無意味な戦いは嫌いでね、それじゃ俺は引き返すよ」


男は立ち去ろうとする、スサノオはそれを引き留めた


「あ、あの!名はなんと?」


「名?名か・・・・・・《山本五郎左衛門》だ」


そう言うと山本五郎左衛門は歩き始める、その後ろを妖怪たちとぬらりひょんが着いていく。その姿が見えなくなりスサノオは膝をつく。


「山本五郎左衛門・・・・・・」


体が震える、戦わなくてよかったとスサノオは心底そう思った。彼には絶対に勝てない、それだけ分かった。もしかすると天姉も苦戦するかもしれない、そんな相手だ。


「い、いや。まずは帰ろう・・・」


震える足を叩き、出雲村へ戻り始めた。

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