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高天原物語  作者: 兎鬼
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『十六章 雷神』

体のあちこちが痛む、俺は目を覚ました。綺麗な白い煉瓦造りの部屋だ。その部屋のベッドに寝かされているようで隣にはシヴァがいた、どうやら助かったらしく、あれからユリックが助けでも呼んだのだろう。俺はグルリと部屋を見渡し、起き上がろうとした。


「つ・・・」


腹に痛みが走る、ああそうだ、シヴァの三又矛か


「まだ起きてはダメですよ」


一人の女性が入ってきた、常に笑顔な女性は食事を持ってきた


「私は《ヴィシュヌ》、この度はシヴァがご迷惑をお掛けしてすみません」


深々と頭を下げる、俺は慌てて頭を上げるように言う


「あ、あの。俺の近くにいた女の子は・・・」


「ああ、彼女はブラフマーといるわ。どうやら記憶喪失のようだけど」


「そのブラフマーさんは無事ですか?」


「ええ、ピンピンしてるわ。貴方たちより重症なのにね」


ヴィシュヌは心配そうに言う


「やっぱり心配だわ。ごめんね、ちょっと見てくる」


といい、食事の乗ったお盆をテーブルに置くと部屋を出た


「さてどうするか・・・」


しかしお腹が減っているのもある、食べてしまおう


「なんだ、飯か?」


隣からシヴァの声が聞こえる


「ああそうだ」


「よこせ」


それが物を頼む聞き方かと言いたいが怒らせたくはない、飯ぐらい楽しく食べたいので渡す。よく焼けたクロワッサンにジャムを塗り、食べる。パンなどいついらいか


「ジャムよこせ」


「自分で取れよ!」


思わず言ってしまった


「ちっ、うるせーな。夜雀かよ」


と言いながらもシヴァはジャムを取りに来る


「妖怪と一緒にはされたくねーな」


「そんなに妖怪を毛嫌いするもんじゃねーよ」


「お前も以外に優しいんだな」


「なっ・・・」


シヴァは黙りこくった、なんだ照れているのか?


――――――――


竹林、そこには竹細工職人の翁が住み、カグヤ、ダイコク、因幡もそこいた


「雷がスゴいな」


ダイコクは雷が鳴る方を見ながら言う、晴れているのに雷とは


「くわばらくわばら、ねえダイコク」


カグヤが因幡と鞠で遊びながら言う


「なんだ?」


「見てきて頂戴よ、何があるのか」


「何でだよめんどくさい」


「いいじゃない別に、住まわせてるんだから」


それを言われたら仕方がない。あれから俺たちはここに住んでいる、戻ろうにもアマツに土地を奪われ帰る場所もない。ダイコクは雷の鳴る方向へ向かった


―――――


「せいやー!!」


男は大木へ自分の体をぶつける。ピシャン!!とその度に雷が落ちる。雷はこの男が原因である


「しかし、また稽古か。そんなに面白いか相撲とやらものは、《タケミカヅチ》殿」


そんな男に言うのはトールであった


「ああ面白いとも!そしてリベンジするためさ!タケミナカタ殿に!」


「ほう、では俺は何をすればよい」


「オーディンから休みを貰ったのだろう?茶でも飲んでけ」


「茶か、お前たち、東方の者はこんな苦いものをよく飲める」


「ははは、そちらこそ珈琲なんぞ苦いものを」


そこにヒタヒタと一人の妖怪が現れる


「やあ、来たよ、ミカヅチ」


「ほう《河童》とは珍しい」


トールは少し驚き河童を見る


「おや!龍之介殿!一戦どうだ!」


「いいね!やろう!」


と言うと早速相撲が始まった、雨が降り、雷が轟く。トールはさぞ迷惑そうに屋根の下に入る。そして二人がぶつかる、それだけで辺りに雷が落ちる。トールは呆れていた。しかし何故気にならない、それにこんなにも周りに被害が出ると――――


「おい!お前だな!この雷は」


ほら来た、厄介なことになったな


―――――――


まさか相撲でここまでの被害とはな。ダイコクは二人の相撲に唖然としていた


「おい!聞いて・・・ないな」


やれやれと手を振る


「お前も大変だな」


「お前こそな」


「俺は、トール。オーディンに仕える者だ」


「俺はダイコク」


「ダイコク?お前がダイコクか」


やはりアマツの一件でそれなりに名は知られているようだ、何だか複雑な気持ちだ


「不幸であったな」


「ああ、この注連縄も外れないしな」


体に巻かれた注連縄を撫でる、これのせいである程度の力は封じられている。困ったものだ


一際大きな雷が落ちると、辺りは静まり返る。土俵を見れば河童とミカヅチが仰向けに倒れ、笑っている


「今回も引き分けだな!」


とミカヅチは言う


「ああ!そうだね!」


と河童が言うと起き、帰っていった


「やい貴様、お前が雷の原因か」


ダイコクが言い寄る


「なんだ!挑戦者か!?」


「ああ、そうだな。少しばかり痛い目みてもらおうか」


「なんと!相撲ではないか、別にいいが」


ミカヅチは石ころを拾う、そしてバチバチと右手に雷が走る


「どこの誰だか知らんが俺に決闘を申し込むとはな!」


バシュン!一瞬、雷が光ったかと思うと石ころがこちらに放たれた。ダイコクは体を反らせ、石ころを避けると一気に踏み込み刀で切りかかる。


「ふんぬ!」


ミカヅチが地面を激しく踏みつける、すると雷がミカヅチの周りに落ち、ダイコクを遮る。再び石ころを広い、右手に雷を走らせる


「妙な技を使うな、流石は雷神、雷の扱いには慣れている」


「ふふ、しかしこの『電磁加速砲』を避けられるとは思わなかったぞ」


「よくは分からんが電気を使った大砲か、火薬を使わなくて済む」


またミカヅチは石ころを撃ち出す、ダイコクはそれを避け再び近寄るが雷を落とし、行く手を遮る


そんな繰返しの戦いをトールは眠そうに眺めていた、こうも進展しない戦いは飽きる。だがミカヅチの防御は完璧、自分でも破ることは困難だと思う。ただ、何か策はあるのだろうか?ダイコクと言う男、先ほどから何か探っているように見えるが


「どうした、息が上がっているぞ!」


「へっ、大したことねえよ!」


段々と動きが鈍ってきたな、早く決着を着けねーと・・・あの電磁加速砲とやらものをまともに受けてしまえば終わりだ直感で分かる、あれはマズイ。ただ策は一つある、攻め入れば奴は雷を落とす、ならば―――


「りゃあああ!」


ダイコクはミカヅチに突っ込む、ミカヅチがタイミングを合わせ、雷を落とそうとしたときだ。ピタッとダイコクは足を止める。しまったとミカヅチが言うが襲い、雷が落ちると同時にダイコクは切りかかる、そして―――







「参った!いやあお前さん強い!」


ガハハ、とミカヅチは笑い、茶を飲む


「笑っていられるか、見ろ辺りが滅茶苦茶だ」


トールは呆れた顔で言う


「いやいつものことよ!気にすることはない!」


「それはそうと雷はなんとならんのか、恐ろしくて落ち着かない」


ダイコクはミカヅチに言う、ミカヅチは茶を一口啜り


「そうか、迷惑だったか、すまなかった。これからは気を付ける」


「ああ、よろしく頼むよ」


そう言うとダイコクはその場を去った、これでカグヤも満足であろう


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