『十五章 破壊神』
―――ある日、一つの山が一夜にして消えた。スサノオはその原因を突き止めるべく大天狗を訪ねた。すると昨日の晩、消えた山の付近に西方の神がいた。と
(何故西の神が山を・・・)
スサノオは西方に向かいながら考えた、しかし理由が分からない。
その時だ、ドン!と爆発音が聞こえたかと思えば音のしたほうから煙が上がっている
「なんだなんだ、嫌な予感だな」
その方向へ歩みを進めた
その頃、ブラフマーたちは、爆発音を聞き、急ぎその方向へ向かっていた
「間に合ってくれ・・・!」
爆発音が聞こえた場所に着く、そこで目の前に広がる惨状にブラフマーは言葉が出なかった。一つの村が奴により破壊され、生きていたものは全て死に絶えていた。
「お、おのれ・・・」
ブラフマーは久しぶりに怒りを感じた。握り締める拳が震える。ユリックを置いて先に行くことが得策、だが彼女を一人にするのは
「なんだよこれ・・・」
そのとき、向こうから一人の少年が現れる、そうだ彼に頼もう。
「そこの若いの!すまんがこの娘を暫く預かってほしいんじゃが」
「え、ええ・・・」
少年は戸惑いながらも頷いた。よしこれで先に行くことが出来る、早くしなければ
ブラフマーは彼女を彼に預けるやいなや先へ進んだ。
スサノオは困惑した、突然この娘を預かってくれと言われたから無理もない
「どうするか・・・なぁあんた名前は?俺はスサノオ」
「私?私はユリック・・・らしい」
らしいとはどういうことか、しかし見た感じこの娘は吸血鬼か。珍しいな
「ま、いいや。それはそうとこの惨状はなんだ」
「これは・・・あいつが・・・」
「あいつ?」
「分からない・・・覚えてないの」
「そうか」
さっきの老人を追いかければ答えに行き着くだろうとスサノオはユリックを連れてブラフマーを追いかけた。
―――――――
「ようやく追い詰めた、さぁ大人しく独房に入ってもらおうかの」
ブラフマーは目の前にいる男にいう
「クククッ、誰がまた地下深くなんかに入るかよ」
男は振り返らず言う、ここで逃がしてはいけないとブラフマーは必死だった
「ならばなぜこのようなことをする」
「何故か?それはな」
男はゆっくり振り返る、その顔は笑っていた
「俺が破壊神だからだよ!積み木の家を壊してまた新たに別のものを作らせる!それをさせたいんだ!」
「なるほど、だがそれは創造神であるワシに任せな―――」
その言葉は、男が突き刺した三又矛により遮られた
「ヒヒヒッ、無駄なものを創る貴様には言われたくないな」
男の目は狂気に満ち、ブラフマーを睨んでいた
「貴様・・・」
そのままブラフマーは倒れる、男は止めに三又矛を高く上げたときだ
「待て!」
スサノオがそこに入ってきた
「なんだぁお前・・・お前も俺の敵か?」
「目の前で殺されかけてる奴がいたら助けるだろ!」
「キヒッ、ジジイの次はお人好しかぁ!!」
ゾワッ。スサノオは彼の目を見た途端、寒気がし、思わず飛び退く
「お前は下がってろ、こいつはヤバイ・・・」
冷や汗を拭いながらユリックに言う、ユリックは頷き、少し離れる
「オメーは・・・ケッ生きてやがったか」
彼はユリックを見て言った。生きてやがったか?つまりこいつは彼女を殺しかけた?ますます危険な奴である
「さあ来いよ!遊んでやる!どれぐらい丈夫なオモチャか―――――」
彼がそこまで言ったと同時にスサノオは斬りかかった。彼はこの不意打ちに驚く。体に傷を負わせたが、浅いようだ
「アハハハ!また不意打ちか!だけどな、俺はこの程度じゃあ壊れやしない!破壊神、《シヴァ》!その暴虐の限りを尽くす力に恐怖――――」
同じようにスサノオは話の途中にシヴァに斬りかかる、シヴァの体からは血が飛び散る
「うわああああああ!!!」
突然シヴァは発狂する、よろよろと立ち上がるとスサノオを睨む。その目は恐ろしく感じ、思わず顔を背けた
「壊してやる!この悪魔の王を知らない馬鹿に俺の恐ろしさを!」
シヴァの目が僅かに光る、そして
ドォン!
突然の衝撃、スサノオはゴロゴロと吹き飛ばされる。一体何がと見てみると、土が抉れていた、先ほどの爆発だろうか
「ちぃ外した!」
シヴァは三又矛を構え、こちらに走ってくる、迎え撃とうとこちらも構えるがあの目が恐ろしく立ち竦んでしまう
「うらああああ!!」
シヴァは渾身の力を込め、三又矛を突き出す。スサノオは体を反らし、間一髪避ける。
ボンッ!とまた爆発が起きる、今度はスサノオの真下が爆発したようだ、スサノオは吹き飛ばされ、木に叩きつけられる
「うぐ・・・」
全身を襲う痛みに悶えながらもシヴァを見る、何かあの目に秘密がある筈だ
「もう壊れたか?」
とシヴァはスサノオの襟を掴み上げる
「まだだよ!」
刀をシヴァの左肩に振り下ろす。間合いが広い槍のシヴァには防ぐことが出来ず、左肩から血が出る
「ぐぅ・・・フフフ、ハハハ!久しぶりだ!ここまで楽しい遊びは!《イザナギ》以来っ!」
イザナギ、その名前にスサノオは聞き覚えがあった
「お前、なんて言った」
「ああ、イザナギ以来の楽しさってことだよ」
「そうか、まだ生きてやがるか、あの野郎」
スサノオは刀をシヴァに向ける
「悪いが俺は壊れる訳にはいかなくなった」
「そうか、なら早く俺を壊してみせてよ!」
三又矛を振り下ろす
「おおおお!!」
スサノオは刀を突く、お互いの武器が届くのは同時だった、三又矛はスサノオの腹に刺さり、血を滲ませる。刀はシヴァの右肩に刺さり血を滴らせる
あとはどちらが倒れるか、二人は動くことがなかった、ただお互いを睨む
視界が歪む、スサノオは負けを感じた。だが意識を失う直前、同じように崩れるシヴァを見た
「あ・・・あ・・・」
二人が倒れた、ユリックは慌てて駆け寄る、お互い息はある
「ど、どうしよう・・・」
と慌てていたときだ、いつか見た異形たちが集まってきた
「やれやれ、困った人たちねぇ」
鵺がいた、鵺は異形に彼らを運ぶように命令し、異形はそれに従った
「生きててよかった、記憶は戻った?」
「それが・・・あまり・・・」
まだぼんやりとしか思い出せない、ただ私はシヴァを殺そうとして返り討ちに合い、記憶を失った。ただユナは誰なのか、まだ思い出せない
「ユナ・・・・・・」
もう一度呟いてみる、だけど何か思い出しそうで思い出せないむず痒さが残った