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高天原物語  作者: 兎鬼
12/21

『十二章 地獄篇』

地獄―――

そこにヤマがいた。


「さぁ、機は熟した!地上を我々の物にしようぞ!」


高らかに叫ぶ。オオオオ!と様々な妖怪が雄叫びを上げる


「貴様も来い、金時」


ヤマは自分の後ろで縛られている金時に言った


「てめえ!何のつもりだ!」


「分からないのか?貴様は地上を手に入れる為の駒の一つになってもらうのだ」


「地上を手に入れるって・・・地上のみんなはどうなる!」


「どうなるも何も抵抗するなら殺すだけだ」


「っ!てめぇ!」


殴りかかりたいところだが体を縛り付けられている為身動きが出来ない、そんな金時を見てヤマは鼻で笑い


「行くぞ」


そう言い地上へ向かう、死神は縄を引っ張ると金時を引きずって行った


――――――

地上ではいつも通り平和な日常が繰り広げられていた。


「いや、ですからいらないのかなと思って・・・」


「いるよ!だから井戸で冷やしてたんだよ!」


清香とスサノオが喧嘩をしている。原因は羊羮、井戸に吊るされていた羊羮を清香はいらないと思い食べてしまったのだ。そんな喧嘩を微笑ましく見守るのがアマテラス、母も私とスサノオが喧嘩している姿を見るのもこんな気持ちだったのだろうか、と思う。


「仲がいいわね、ほんと」


「全くだ、騒がしくて眠れん」


ツクヨミが欠伸をして言う


「アマテラス、清香が言う別の世界とは知っていたか?」


「ええ、知ってたわ」


「やれやれ、流石はアマテラス。何でもお見通しか」


そうしている内に二人の喧嘩が殴り合いに発展したのでツクヨミとアマテラスはその喧嘩を止めに行った。

「やれやれ、あんたたちは子どもだね」


アマテラスはその後、二人を説教していた。ツクヨミは縁側で昼寝をしている。

アマテラスが説教していると、急に辺りが暗くなる。


「アマテラスさん!大変です!空が・・・!」


一人の男が慌てた様子で駆け込んで来たのでアマテラスは外に出て、空を見上げる。


「まぁ!何事・・・」


空は黒い雲に覆われ、暗い昼をさらに暗くしていた。


「太陽が弱くなっていると言うのに・・・」


そして、向こうから何かが来る、それはヤマだった。アマテラスは何故ここに来たのかと思った。


「あら、これはこれは地獄の皆さん、何かご用ですか?」


「おお、いつぞやの女、ここにいたか。なに、地上を我が物にしようとな。その道中に貴様らがいただけだ」


「へぇ、聞き捨てならないわね」


「だと思ったよ」


「さっさと地獄に帰りな!」


「地獄の王に楯突いた罪!いまここで裁いてやる!」


何事かとスサノオが表に出てみるとヤマとアマテラスが争っているではないか。

しかし何故、こんな大群を連れて。


「あの、あれは?」


「分からん、ただ地獄にいる奴らだ」


「あの服装からして閻魔ですね、どうして・・・」


「あれが地獄の王・・・」




「やるわねあなた!」


アマテラスはなかなかの相手に喜びを感じていた。


「ふ、お前こそな!地上は強いやつが揃っているようで安心だよ!」


ヤマは飛び退くと


「地獄の王、ヤマ・ラージャがこの罪に裁きを下す!『閻魔ジャッジメント』!」


凄まじい衝撃波がアマテラスに走る、しかしアマテラスはそれにヤタノカガミを向ける


「ヤタノカガミよ!私の障害となるものを跳ね返せ!」


衝撃波はヤタノカガミに当たるとその勢いを増し、ヤマを襲う。


「っ!?なぁっ!」


その早さに驚き、衝撃波を食らう


「私の勝ちね!」


「くくっ、残念だな・・・」


黒い影が人混みのなかから現れたと思うと


「なんだお前は!」


スサノオに襲いかかっていた


その影の攻撃を防いだスサノオは、押し返し、刀を構える。


「ああ、君は不幸だ・・・」


だらんと倒した上半身をゆっくりと起こしながら、彼、ハデスは言った



「こんな俺に負けるんだ・・・君は運が悪い・・・だけど俺のほうが不幸だ・・・」


なんだこの男は・・・暗い気しか感じない。どんよりした雰囲気はスサノオの闘争心を萎えさせつつある。


「どうしてくじ引きなんかで決めたんだ・・・」


ぶつぶつと何かを呟いている。


「ハデス!愚痴はいい!早くやれ!」


そんなハデスを見てヤマが言う


「ああ、そうだね・・・分かったよ、運が無いのが悪いんだね、兄さん・・・」


ハデスはゆっくりと剣を構える。いつでも斬りかかる隙はあるがこのどんよりした雰囲気、気が進まない。


「でも兄さん・・・くじ引きで決めるのはいくらなんでもないよ・・・」


ダッ!とハデスは走り出す、が決して早くは無い。


スサノオはタイミングを合わせて刀を振り、ハデスに傷を負わす


「ああ、痛い・・・痛い・・・」


「ええい!埒があかん!火車を出せ!」


同じようにして黒い影がハデスの足元に現れる、それは一匹の黒猫だった。


「ああ、火車か・・・俺と一緒に戦ってくれるのか?」


火車はニャーと一鳴き、そして体を丸め、こちらに飛び込んできた。その体には炎が灯り歯車のように回転している。


スサノオはそれを避け、避け際に一太刀入れる、が対したダメージではないようだ、火車はUターンすると再びこちらに転がってきた。スサノオはまたそれを避ける、すると火車は止まることなく、ハデスに衝突した。


「ああ、運が無い・・・」


そのままハデスと火車は気を失った。コントのような戦いが終わる、するとヤマが


「おのれ!次だ!死神!奴を出せ!」


人混み掻き分けて現れたのは――――


「金時!」


アマテラスが叫ぶ。そう、坂田金時だった。しかし様子がおかしい、人形のように生気が感じられない。


「さぁ!坂田金時よ!《ヘル》様に力を示すがよい!」


「ヘル?それは誰だ?」


スサノオは当然の疑問をぶつける。しまった。とヤマは口を押さえる。なるほど、ヘルというのが黒幕か


「私が、やるわ」


清香が前に出る


「何を考えてる、バカか」


「あの人、スサノオさん達の知り合いですよね」


少なくともアマテラスはそうだろう。


「なら本気で戦えないじゃないですか」


「それもそうか・・・」


「任せて下さいな、婆ちゃんとの争いで鍛えてますから」


すぅ、と息を吸うと


「宝棍に宝塔!毘沙門天様!私に力を!」


お祈りか、とスサノオはつっこむ


「行きますよ!」


清香は金時に突っ込む、金時は斧を振り上げ、迎え撃とうとする。

清香が十分近づき、金時が斧を振り下ろしたときだ


「危険神!『スサノオ』!」


その時、清香はあり得ない動きをする。一瞬で金時の背後に回る。しかし危険神とはなんだ危険神とは、とスサノオは言う


「不運の土着神!『モリヤ』!」


くるりと一回転すると清香の手にはモリヤの鉄輪が、その鉄輪で金時を攻撃する、金時は吹き飛ばされる、そこに追い討ちをかけるように清香が走りだし


「これでお仕舞いです!暖かき太陽神!『アマテラス』!」


カッと鉄輪が光ったかと思えば金時はその場に倒れ、気を失った。


「こんなものですねっ」


「なんだよ!すげーじゃんお前!」


戦いもろくに出来ない小娘かと思っていたが


「な、なんてことだ・・・し、死神!」


ヤマは振り返るが死神の姿はない、逃げたのか


「お、おのれ!」


すると急に空が明るくなる、見上げると太陽があった。今まで黒くなっていたと言うのにどうしたのか


「な、太陽が・・・?まさかヘル様!」


何か嫌な予感がしたのかヤマたちは戻って行った


「よかったー・・・」


清香が安心しきった顔で言う


「ええ、よくやってくれたわ」


アマテラスは清香の腰に手を回し、耳元で囁く


「流石清香ね、かっこよかったわ」


ハアハアと息を上げている、相変わらずの変態な姉でスサノオは呆れた、しかしなぜ太陽が戻ったのか、ヘルがどうのこうの言っていたが・・・

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