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高天原物語  作者: 兎鬼
11/21

『十一章 清香の企み』

目の前に料理を並べる。

天姉に月兄、そして清香が座っている。

どうも慣れない、というか好きになれないのだ清香は


何を考えているのか分からないし変に俺を慕うところも怪しく思える、言ってしまえば俺は彼女に怯えている。


いつ首が飛ばされるかと警戒しつつ料理をテーブルに置くと椅子に座る。


いただきます。と皆声を揃えて言うと夕飯を食べ始めた。


天姉は彼女のことを気に入り、月兄は相変わらずの楽観的。

警戒しているのは俺だけとなる、何だか恥ずかしい。


「これ、とても美味しいです!」


清香は味噌汁の感想を言ってくる、その目に偽りはない。


「あ、ありがと・・・」


例え嘘でも美味しいと言われるのは嬉しい。


「うん、あいつが作る味噌汁なんかより断然いい・・・」


清香はぶつぶつと呟いている、しかしこの娘、何か違う。人間であることに変わりはないが何かが・・・


「スサノオ」


そう言えばこの娘、どこから来たかと問えば何か隠すように・・・


「スサノオ!」


考えはツクヨミの声で消される。


「な、なに」


「醤油」


ふと手元を見ると醤油が傾いたまま、冷奴にかかっていた。


「あわわ・・・」


慌てて醤油を置く、黒い池に浮かぶ白い冷奴だ。


「あ、そうだ。これ食べたらお風呂お願いね」


天姉が平然とお願い事をしてくる。


「分かったよ」


天姉はほんと家事をしない、俺は呆れている。



それから夕飯を食べ終わった皆はそれぞれやりたいことをやり始めた。


俺は風呂場を掃除している。

ふと背後に何かの気配が。


「何のようだ」


振り返らずに聞いてみる、すると


「スサノオさんは家事全般を任せられているんですね」


「その声は清香か」


しかし振り返る訳にはいかない、振り返った瞬間、胸を刃物で貫かれないとも言い切れない。


「私は、婆ちゃんに褒めてもらう為にここに来たんです」


「へぇ、どこから」


俺は掃除の手を休めずに返事をする。


「それは・・・その・・・スサノオさんも行くことも出来る所です」


「どこだそこは」


やや呆れ気味に答える、まぁ黙々と掃除するよりはいい。


「お、オモイカネさんなら知ってる筈です。彼女の知恵なら恐らく・・・」


「そうか、また聞いてみるよ」


よし、掃除は終わった。あとは水を沸かすだけだな。


「巫女、というのは何をするものなんだ?」


「巫女ですか・・・神様に仕える役目があります」


「神様・・・ねぇ・・・」


ん、確か俺は神様だったな。と言うことは。


「つまりなんだ、巫女と言うものは神の世話をするもの、だったかな?」


少し思い出した、巫女。懐かしいな、そう言えばいたな。


「なるほど、よく分かった」


スサノオは薪を入れ、火を着ける。


「俺はお前を警戒してたな、すまん」


流石に警戒しすぎていた、それがかつて俺たちに仕えていた者だったとはな。



「風呂が沸いたら先に入ってってくれてもいいぞ」


スサノオはそう告げるとオモイカネの家に向かった。


「あら、珍しいわね」


彼女の家は相変わらず本に囲まれた家である。いつも座りっぱなしで本を読んでいるようだが一応寺子屋の教師をやっている。


「清香のことなんだが」


「ああ、やっぱり。彼女がどこから、どんな方法で来たか、でしょ?」


言い当てられてしまったので頷く

「教えてあげる、でもこれは本当のことよ」


そう言うとオモイカネはゆっくりと話始めた


「清香、彼女が来た所はこの世界ではない、別の世界よ」


「別の世界・・・」


いわゆる異世界か


「そして彼女がどうやって来たかは分からないけど、鏡ね。私の部屋に鏡があるのは知ってる?」


結構前になるが、古ぼけた鏡が置いてあったのを覚えている


「あの鏡は扉みたいなものなのよね、たまにあの鏡に見たことのない世界が写るの」


「そんな鏡が・・・」


にわかには信じがたいがオモイカネが言うには本当のこと


「その鏡は私のところだけじゃなく色んなところにあるはずだわ」


そこまで言うとオモイカネは黙った、どうも俺と話すときは口数が減るのである。


「ありがとう、疑問が無くなった」


そう礼を言うと自宅に戻ると、清香が風呂を入り終えていたので風呂に入り、眠ることにした。

―――――

翌朝、目が覚めたスサノオは朝食を作り。アマテラスを起こしに行った。次に清香が起きる、スサノオがいないことを確認すると計画を練り始めた。


彼らのことだ、大勢で攻め入るはず。そして彼らとスサノオが戦うように仕向ければ・・・

相変わらず悪巧みだけは得意だな。と少し笑ってしまう。

そうしているとスサノオとアマテラスとツクヨミが来た。四人は朝食を食べ終わり、アマテラスは自室へ、ツクヨミは縁側に猫と遊びに、スサノオは食器を片付けていた。


そして昼頃。

そろそろ来るだろうと清香は待ち望んでいた。

かなり強いと噂されている神たちだ、これで婆ちゃんも・・・


「あいや、すまぬ」


突然一人の男に声をかけられる。


「はい?」


「なんだ、お客さんか?」


スサノオが奥の方から現れる


「私はミナカタと申す―――


「なんで大勢で来なかったんですか!」


名を聞いた途端清香は彼に耳打ちをする。


「清香なる女にここに来るように言われたのでな」


「だからって一人で来ることは!」


「一人ではない。モリヤが子どもと遊んでおる」


「そうじゃなくて・・・」


はぁと落胆する清香を見て、ミナカタは何か分かったのかニヤリと笑い


「ほう、さては私たちと戦いを起こさせたかったようだな?」


「なんだって?」


スサノオが反応する。

ああ、失敗だ。どうしよう


「どうやら真のようだな。何が目的が分からぬが私は私自信の意思で戦うことが好きなのだよ」


「清香ー!どういうつもりだ!」


スサノオは怒鳴る。すみませんー!と清香は謝り続ける


「ハッハッハッ、だが私たち諏訪の力を世に示す為。アマテラス殿と一戦交えたいのだがな」


「私がなに?」


アマテラスがゆっくりとミナカタに歩み寄る


「そなたがアマテラスか、噂通りお美しいこと」


「それはどうも。でもね、私は極力戦いは避けたいの。帰ってもらえるかしら」


「それは困る、私たちは遥々東の方から来たと言うのに」


ミナカタはパチンと指を鳴らす。するとモリヤがこちらに走ってきた


「戦わないと気が済まないようね・・・」


アマテラスは鏡を構える


「アマテラス殿、そなたの力、どれ程か見せてもらおう」


清香は結果オーライと内心笑っていた、しかしミナカタとモリヤとアマテラス。この戦いはどうなるのか、ワクワクしていた。


「ハッ!」


アマテラスが鏡で攻撃する。だが何処からか現れた蔓により、鏡は塞がれる


動けないところをモリヤは鉄輪を振り回す、しかし距離が届かず転ける


「何をしておる。早に立て」


ミナカタは蔓を操り、モリヤを立たせる


「部下使いが荒いのね、涙目じゃない、その子」


「彼女は一度負けた。力は私が上。ただそれだけだ」


アマテラスは無理矢理鏡を引き抜き、飛び退く


「昼ご飯も食べたいし、終わらせるわよ」


鏡を頭の上にかがけ


「ヤタノカガミよ!その光を持って我に勝利を!」


鏡が光ったかと思うと光線がミナカタたちを包んでいた、しかし、その光は掻き消される。


「流石アマテラス殿。僅かながら防ぎきれませんでした」


「!なっ」


アマテラスの手足は蔓によって縛られ、身動きが取れなくなる


「悪いねっ!」


モリヤは鉄輪を重たそうに引きずりながら走り、アマテラスに向けて鉄輪を振り回す


「きゃあ!」


鉄輪を受け、アマテラスは見事に吹き飛ばされた


「・・・我々の勝ち。ということでよいか?」


そう言うとミナカタたちは立ち去る。スサノオはアマテラスに駆け寄り、怪我はないかと聞く。


「無いわよ、ただ強いわね。彼ら」


「あ、そうだ。清香!」


そろりと逃げようとしてた清香を呼び止める


「お前は何を考えているんだ!」


「その・・・」


清香は計画の全貌を話した。要約すると一番強い神を連れて帰り、お婆さんに認めてもらう。という計画だったそうだ


清香は反省したのか元いた世界に帰ろうとしたが、アマテラスがそれを引き留める、なぜここまで清香に執着するか

そんなこともあり、清香はもう暫くここに居座ることになった。

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