『一章 始まりの話』
神話を題材にした話です。何か間違っていたりするかもしれません。御注意下さい。
ここは高天原、色んな神々や妖怪が大勢いるんだ。
「おはよー天姉ー」
スサノオは眠い目を擦りながら挨拶をした
「あらおはようスサノオ」
「何故に抱き付く」
「可愛いから」
「ったく・・・」
天姉、アマテラスは座敷に座った。朝食はスサノオが作るのである。
(天姉が料理しているところ見たことねーな)
そんなことを思いながら料理に取り掛かる
暫くして味噌汁が出来た。それと同時に
「お、朝食出来たか」
そう言いながら現れたのは《ツクヨミ》アマテラスの弟でスサノオの兄である。美青年な見た目だが陰が薄く、あまり知り合いはいない。
「「「じゃ、いただきまーす」」」
三人はそう言い、朝食を食べ始める
「お、スサノオの卵焼きか」
ツクヨミは箸で卵焼きをつつく
「天姉は料理出来ないの?」
スサノオは疑問をぶつけた
「んー?出来るわよ」
「じゃあなんで俺に作らせて・・・」
「めんどくさいから」
相変わらず天姉には呆れさせられる、しかしどこか憎みきれないところもあるから不思議だ。
暫くして朝食を食べ終わるとアマテラスが
「出雲村にまでちょっと行ってきてくれないかしら」
「なんだ唐突に、出雲村なんて・・・」
割りと近くにある村だが、少し前に妖怪に襲われ、近寄る人も少なくなったと聞いたが
「私の知り合いがいるの、その知り合いにね。櫛を頼んでいて」
「取りに行け、と?」
「そ、よく分かったわね」
「すぐ近くじゃないか」
「嫌よ、めんどくさいし妖怪に襲われたらどうするの」
俺が襲われたらどうする。そう言いたかったが言わないでおこう。
しかしこうも頼まれたら断る訳にもいかない。それにただ櫛を取りに行くだけだ、何を渋る。
「分かった、行ってくるよ」
「ありがと、じゃ、行ってらっしゃい」
スサノオは刀を腰に差し、家をあとにした
出雲村に行くには小さな森を抜ける必要がある。
しかしこの森には妖怪が出ると言われ、あまり立ち入る者はいない。
「しかし気味が悪い・・・」
昼頃とは言え、森のなかは暗くなっていた。
辺りを警戒しながら進む
──────
ふと空を見上げると日が沈み始めていた。
空に一筋の光が横切る
「流れ星か、珍しいな」
しかし日が沈み始めたのはマズイ、早く村に着かなければ。
スサノオは少し歩みを早めた。辺りが暗くなるころ、森を抜けた。
少しホッとすると村の明かりが見える、しかし人気が無い
不気味に思いながらもスサノオはアマテラスの知り合いを探した。
櫛、だと言うのだから店でもしているのだろう。
そう思ったときだ、目の前に『櫛屋』と書かれた店を見つける
「すみませーん」
スサノオは店の者を呼ぶ、しかし返事は無い
留守か?いや、明かりは点いている
「すみませーん!」
次にスサノオは少し大きな声で言った
すると扉が小さく開き、隙間からこちらを見る目が見える
「あの・・・アマテラスの知り合いで・・?」
「あなたがスサノオ?」
「え、ええ」
すると扉が開き、少女が姿を表す
「どうぞ、入って下さい」
しかしその声は暗く、沈んでいた
「えと・・・なにか・・・?」
少女が何か警戒しながら聞く
「いや、天姉が櫛を頼んでたみたいでさ」
「ああ、櫛ですね」
少女は奥に入り、暫くして手に櫛を持ち戻ってきた
「これです」
スサノオはその櫛を受け取り、懐に仕舞った
「これが、私の最後の櫛ですね」
「あんた、名前は?」
「・・・《クシナダ》」
小さく答えた
「なぁ、何があったんだ?人気も無いしあんたも変に暗い」
スサノオは思いきって疑問をぶつけた
「今夜なんです・・・」
「今夜?」
「はい、《ヤマタノオロチ》が贄を喰いに来る日・・・その贄が私なんです」
ヤマタノオロチ・・・妖怪のなかじゃ強いことで有名なアレか
「そんな・・・なら逃げよう!」
「なりません!そんなことをすれば村の皆が殺されてしまいます!」
「っくそ!」
目の前に困っている人がいる。それをどうにかしようとしてしまうのがスサノオだった。
「でも、最後にアマテラスさんに頼まれた櫛を渡せてよかった・・・」
クシナダは少し微笑む
「っ・・・」
そんなクシナダの表情を見て、スサノオは言葉に詰まる
「では、さようなら」
またクシナダは笑う
スサノオは店を出た
「きゃああああ!!」
そしてすぐにクシナダの悲鳴が聞こえる
「クシナダ!」
店に戻るとクシナダの姿は無く、裏口の扉が開いていた
「っ!ヤマタノオロチィィ!!」
スサノオは裏口を通り、クシナダの跡を追った