木枯らしの頃②
ご覧いただきありがとうございます。
本作は、実話をもとに再構成した「叩き上げ公務員」の半生を描くサクセスストーリーです。
学歴もコネもなく、定時制高校からスタートした主人公。
決して順風満帆ではなかった彼が、どのような葛藤や壁を乗り越え、霞ヶ関の本省、そして幹部へと駆け上がっていったのか。
実際の官僚機構や他省庁でのリアルな泥臭さ、そして人生後半での新たな挑戦までを丁寧に描いていきます。
働くすべての人、そして逆境から這い上がりたい人に届く作品になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いください!
2学期の終業式を終え、浩一はどこかホッとした気持ちで自宅の玄関を開けた。
しかし、足を踏み入れた瞬間、家の中に漂ういつもと違う重苦しい雰囲気に皮膚がピリリと痺れた。
その張り詰めた空気のなか、居間にいた母親が静かに声をかけてきた。
「……終業式、終わったんやね」
「うん、そうやで」
「お疲れさん。……浩一、ちょっと話があるねん」
母の硬い表情を見て、浩一の胸に嫌な予感が走る。
「……ひょっとして、前に沖田先生から預かって渡した、あの手紙に関係すること?」
「……それやねん。もう薄々分かってると思うけど、学校の授業料とか設備費の支払いが……ずっと滞り気味になっててな。学校、なんとかならんやろか」
「なんとかならんって……どういうこと?」
「転校するとか……」
突然突きつけられた「転校」という言葉に、浩一の頭がすっと冷えていく。
「……前から思ってたけど、授業料の支払いが厳しいんやったら、奨学金制度とかもあるんちゃうん? 俺、成績かて悪くないねんで」
「先生からの手紙を読んでな、私も奨学金のこといろいろ調べてみてん。でも……うちは対象外みたいなんよ」
「そっか……。でも、引っ越しもしてないのに転校なんて、ほんまにできるんかな」
「それは……なぁ」
母もそれ以上は言葉を続けられず、部屋の中に重い沈黙が落ちた。
刻一刻と過ぎる静寂のなか、浩一の心の中では様々な感情が渦巻いていた。桐通と誓った皆勤賞のこと、せっかく築いた仲間との日常、そして自分の将来。
数分間の長い沈黙を破ったのは、浩一の静かな声だった。
「……公立とか、転入できそうな高校にいくつか自分から聞いてみるわ」
浩一はずっと前から、どこかで思っていた。
いつか、お金のことでこの日が来てしまうのではないかと。
けれど、思ったよりもずっと早く訪れてしまった事実に、浩一は動揺を隠せないでいた。
ご覧いただきありがとうございました。
終業式という節目の日に突きつけられた、あまりにも厳しい家庭の事情。
奨学金の対象外、引っ越しを伴わない転校という難題に、15歳の浩一がひとり向き合おうとしています。
「いつかこの日が来るのではないか」とどこかで予感していたからこその静かな決意と、隠しきれない動揺。浩一の背負うものの大きさがひしひしと伝わってきます。
追い込まれた浩一はどのような行動に出るのか。




