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一人歩く。仲間との思い出を胸に  作者: 惑城鍵


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一話

 カミルは村にある民家の前で立ち止まった。カミルは左手で腰のポーチから一枚のハンカチを手に取る。残った右手で木製の扉をノックした。その顔つきに強張っていた。


「少しお待ちください」


 家の中から四十代ぐらいの女性の声が聞こえた。ほんの数秒、待つと扉が開いた。カミルの目に一人の女性の姿が映った。その女性を見たカミルは懐かしさを感じた。だがカミルにとっては初対面の相手だった。


「カミルといいます。ジルヴィアさんとは冒険者団で一緒でした。今日はジルヴィアさんの物を渡しにここまで来ました」


 カミルが挨拶をすると、女性は呆然とした様子で何度も瞬きをした。


「あのジルヴィアはどこにいるのですか? 魔族の軍勢を止めるために冒険者団により参加したはずですが」


 カミルは固く口を閉ざし視線を下に向けた。


「まさか、ジルヴィアは。そんなそんな」


 乱れた女性の声がカミルの耳に入ってきた。カミルは顔を上げた。女性の唇は震えていた。


「はい、ジルヴィアさんは戦死しました。今日は訪ねたのは遺品を渡すためです」


 カミルはジルヴィアの母親に向けハンカチを差し出した。ジルヴィアの母親はハンカチを受け取ると、大粒の涙を流し始めた。


「なんであの子が死なないといけなかったのですか。夫は病でいない今あの子だけが唯一の家族だったのに」


「お気持ちは察します。ジルヴィアは果敢に戦いました。ジルヴィアのおかけで救われた命もあります」


 カミルは言った。カミルの目頭は熱くなっていた。それでも頬を滴が伝うことはない。


「あの子がいないと駄目なんです。まだ二十歳ですよ。あの子はよく言ってました。冒険者を引退したら結婚して子どもを作るのだと」


「それはわたしもよく聞かされていたのでお気持ちは分かります。あの子は幸せになるべきでした」


 カミルは悲しみを抑えるかのように震える右手を握りしめた。


「聞かされていたってまさかあなたは――」


 ジルヴィアの母親が話しだした。それにカミルは言葉を被せた。


「すみません。他の遺族の方にも遺品を届けないといけないのでわたしはここで失礼します」


 カミルはジルヴィアの母親に頭を下げた。背を向けると歩き出した。ジルヴィアの母親はカミルにそれ以上話しかけようとはしなかった。村の出入り口へと向かうカミルの目には一滴の滴が付着していた。

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