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セイント達 サンディ、ベル、ノル

こんにちは、作者のmegaです。

 今回は「アンナの旅」第五話――平穏な旅の中に見える、少女たちの素顔を描きました。


 選定会へ向かう途中、アンナと三人の若いセイントたちは、まだ穏やかな東の地を進みます。

 おしゃべりが止まらない彼女たちの姿は、戦いや試練とは無縁のように見えますが……

 この無邪気な時間こそ、嵐の前の静けさなのかもしれません。


 物語はいよいよ、東地区を越えて王都へ――

 次回から、旅は静寂を離れ、試練と運命の森へと入っていきます。

 旅は順調だった。

 このあたりは小さな村が点在しており、盗賊などの気配もなく、草の香りと風の音がただ流れている。


 セイント四人が乗る馬車の中は、平和そのもの――もっとも、静けさとはほど遠い。

 同行する三人の若いセイントたちは、年頃の娘らしくおしゃべりが止まらない。


「出発はしたけど、競技会って……やっぱり不安だわ」

 サンディがため息をつく。

「それでも、それなりの成績は出したいと思ってるのよ」

 ベルが小声で続ける。

「わたしは王城を見るのが楽しみ。競技会はおまけみたいなものね。おみやげも買えるかもしれないし」

 ノルが笑うと、三人の声が弾んだ。


 どうやら彼女たちは、最初から好成績を狙ってはいないらしい。

 「王城なら、おいしい料理もあるんじゃない?」などと、早くも物見遊山の気分だ。

 「競技会で見そめられて、結婚の申し込みなんてあるかも」――そんな冗談まで飛び出す。


 けれど、それもあながち夢物語ではなかった。

 今の王妃も、かつてはセイントの一人だったのだ。

 セイントとは、領地の安寧と豊穣を祈る存在。人々からは敬われるが、同時に災厄の責任を負う立場でもある。


「それでも、セイントに選ばれるのは名誉なことですよね」

「みんなが羨ましがるような嫁ぎ先、見つけましょうね」

「協力し合って、がんばりましょう!」


 少女たちの声は春の小鳥のように明るい。

 アンナはその光景を見て、思わず微笑んだ。

(この子たち、ほんとうにかわいい……)


 だが、話題はすぐに現実的な方向へ戻る。

「でも、競技会……そんなに厳しいの?」とサンディ。

「マリー姉さんに聞いたけれど、かなり厳しいらしいわ」

 アンナが答えると、三人は顔を見合わせて小さくうなずいた。

「それでも、やるしかありません」

「少しでも見栄えのする聖女になりたいですしね」


 アンナは尋ねる。

「でも若いのに、もっと他にやりたいことはないの?」

「特には……」

「いつも教会でお祈りばかりだから、こうして外に出るのも新鮮なんです」


 どうやら彼女たちには、冒険よりも旅そのものが喜びのようだった。

「それじゃあ、この旅は楽しい?」とアンナが笑って聞くと、

「はい! みんな一緒ですし!」

「それに、トリーさんもセイントになったんですよね!」

「本当にびっくりしました!」


 トリーが年長で頼りになるせいか、三人は彼女をすっかり信頼している。

「アンナさんとトリーさんがいれば、怖いものなんてありません」

「頭が良くて、美人で、絶対なんとかしてくれるはず」


 アンナは微笑んだまま、ただその賑やかな声を聞いていた。

 その何気ない時間が、奇妙に心をあたためる。


 やがて、車窓の外に次の村の屋根が見えてきた。

 到着すると、村人たちは一斉に駆け寄ってくる。


「聖女様!」

「ご無事でなによりです!」

「どうか道中お気をつけて!」

「明日は村をあげてお見送りいたします!」


 歓声と祈りの言葉に包まれながら、アンナたちはこの村に宿を取った。

 今日で旅の三日目が終わる。ここが東地区の境界だ。


 だが翌日からは、旅の様相が変わる。

 王城へと続く深い森――盗賊と魔物が出るという難所が待っている。

 この平和な村は、静けさと安堵の最後の夜。

 アンナは馬車の影に立ち、風にそよぐ森を見つめながら、そっと胸の奥で祈った。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


 今回は、アンナが年下のセイントたちに囲まれながら、“導く側”としての優しさを少し見せる章でした。

 旅の中の何気ない会話や笑顔――それが、後に訪れる緊張や悲しみを際立たせる対比になります。


 次話「深き森の手前」では、彼女たちの旅が初めて「試される」場面を描く予定です。

 平和な時間の裏に潜む不穏な気配を、どうぞお楽しみに。


 もし気に入っていただけましたら、ブックマークや感想をいただけると励みになります。

 それではまた、次の旅路でお会いしましょう。

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