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競技会最終日

――いよいよ、聖女選抜競技会の最終日。

倒れ、傷つき、立ち上がってきた少女たちは、いまひとつの「奇跡」を目撃することになる。

勝敗を越えた「祈り」と「慈悲」の力とは何か。

そして、真に“聖女”と呼ばれる者の条件とは――。


この章では、アンナとベアトリス、そしてキラ――三人の聖女が、それぞれの想いと葛藤を胸に最後の試練へ挑みます。

ベアトリスがアンナに投げかけた言葉に、立ちすくむアンナ


「アンナ、どうしたの?」とベルが心配して話しかけます。

ノルも、寄ってきて

「昨日の治療を見て、何か思うところがあったのかもしれませんね」


「まぁ気にしないでおきましょう」とサンディが締めくくりました。


そして4人は次の患者病室に向かったのです。


病室に入ると、アンナは皆を振り返り


「では先ほど話したように、治療を始めましょう」4人はそれぞれの患者のベッドにすすみ出てました。

患者の担当医師と2,3確認して、治療を始めたのです。


患者の横にたち まず左手を肩の高さまで挙げ

しばらくして

ゆっくりと患者の患部に手をおろしてゆき,

その手のひらを当てます。

そして祈るかのように目を閉じます。その姿は大丈夫ですよと言うかのように微笑んでいます。


長い時間、どのくらいその状態で時間がたったでしょうか、

アンナ、ノル、少し遅れてベル、最後にサンディが目を開けました。



「終わったようです 良くなると思いますよ」とアンナは安心させるように患者に声を掛けます。

さすがに軽傷者の時の様にはいきませんが、この課題も東の4人はなんとかこなせた様です。


あとの状況は、担当医師に任せて4人は控え室に引き上げました。

「おつかれさまでした」と医師がねぎらいの言葉をかけてくれます。

治療は無事に終えましたが、4人ともかなり消耗しています。


「あなた達の治癒は本当に素晴らしいです。これならうまくいきそうです」と医師が励まします。

「そうですか、ありがとうございます。がんばります」と4人は疲れた顔を見せながらも答えます。

しばらくしてアンナ達と入れ替わる様にベアトリス聖女が、続いてキラ聖女が引き上げてきます。


やはり両者とも相当疲れた表情で、キラは声すらも上げられず無言で休んでいます。

もうこれ以上の治療継続は不可能な状態で、

今回のこのレベルの患者の治療が完了できたのは、結局この6名しかありませんでした。


 各自王城の宿舎に今日は引き上げる事になりました。馬車が用意されます。

「お先に失礼しますわ」とベアトリス聖女がアンナに挨拶します。

「ベアトリス聖女様、本日はご苦労様でした。次もよろしくお願いします」

とアンナが挨拶を返します。

ベアトリス聖女は、アンナの方をチラッと見ただけで何も言わずに帰っていきました。

馬車のなかで

「出来ました。言われたように、それも4人ではなく1人でです」

「思う以上に早い結果です。でも、あのレベルの患者ではいままで治療が出来たという経験がありません」

「どういうことでしょうか、あのベアトリス聖女、キラ聖女に負けていません。信じられません」

3聖女は治療の結果におどろいています。

「出来ましたでしょう」アンナは微笑みながらそれ以上何も話そうとはしませんでした。

ほんとの聖女がさらに月輪を得た意味を、3聖女はまだ理解出来ていないようですが、遠からず月輪の意味を知ることになるでしょう。


こちらはベアトリス聖女の馬車です。


(ベアトリス聖女の回想)


 今日は昨日より重い症状の患者でそれだけ力がいります。時間がかかるのは当然でしょう


しかし 結果はあの4人とおなじ時間が必要でした。


わたしは、アンナ聖女はともかく、あの東の3名の聖女の力量より優れているのは確かのはず

しかし、なぜ? 昨日の軽傷の患者の時よりも確実に早くなっている。


なにかがおこっていることは確か、そう思いを巡らせたとき浮かび上がるのが、やはりあのアンナ聖女の姿です。


心の中に弓の聖女の姿が沸き起こります。


(わたしは負けるかもしれない……)そんな思いがよぎったのでした。


 各地区の聖女達はさすがにこれだけの治療をおこなったため、

体力が枯渇してきている人が多数なので、明日は休日との申し合わせとなりました。

さすがに今日はゆっくり休むようにとのお触れが出ています。


さて、宿舎についた聖女達は一室に集まってきました。

「さあ、今日はみんな疲れているでしょ。ゆっくりと休みましょう」


「今日は本当に大変だったね」

「まさかこんなことになるとは思ってもいませんでした」

3聖女は今日の感想を驚きをもって話しています。



「まさか昨日より難しい患者をこれだけ短い時間で治療ができるなんて」

「それも今日治療出来た人は6人だけ」

「そしてその内の4人はこの私たちです」


アンナに向き直って、

「これができたのは昨日のことが原因ですよね」


アンナは無言で頷きそして

「次は最後の最も重い患者の治療です。いまから言うことを行なってください」

その様に言って、何事かを皆に話し始めました。



もう3聖女にはなにも疑問がありません。トリー聖女も聞き入っています。


 最終日は最も治療が困難な重傷の患者の治療の日です。

いつものように、治療前に全員控え室に集まっています。



多くの見学者が待機しており、そのなかには見習い聖女のトリーの姿もみえます。


これだけの有力な聖女が一同に集まったことは無く、それを見るだけで大変な勉強になるからです。

最後に残った聖女は6人、直前の予想と全く異なり、4人の予想外の聖女がいます。

残るのは2人と思われていたのです。



しかし、競技運営係であるナターシャ聖女から意外な伝達がありました。

「アンナ聖女一人が東の代表として出場いたします」との連絡です。


開始前に東地区聖女達より、最後の治療においてはノル、サンディ、ベルの三聖女は参加しませんとの申し入れがあったとのことでした。


いまの体力ではこれだけの重体な患者は治療する自信がありません。とのこと

(あれだけ無理をしていたんだから、やっぱりそうなったか)という思いがまわりに広がります。


その会場に漂う静寂の中に、アンナ聖女が一人歩み出ます。

そこには東の責任と重責を背負った姿がありました。



そのような理由により競技会最終日は3人の聖女の競技です。


順序としては、いままでの成績から

1番アンナ聖女、2番キラ聖女、そして最後の3番目がベアトリス聖女という順番となりました。



 まずアンナが重傷患者の治療を開始します。患者のベッドの横に立ちます。

その時、その治療を見学するかのように、その四方にサンディ、ノル、ベル、トリーが見守るように立ちます。

アンナが手を患部に手を置き目を閉じると、その4人もそれを祈るかのように目を閉じています。


しばらくして 

「おわりました。よくなりますよ」アンナがそう言うと患者の患部はゆっくりとそして癒えて行きます。

この治療は、さすがに前回よりも相当時間がかかっています。



アンナは周りの三聖女のサンディ、ベル、ノル、そしてトリーを見回します。

4人はアンナの不思議な微笑み見て、微笑みを返したのです。



 次はキラ聖女が治療を行ないます。


その周りには、サンディ、ベル、ノルの3聖女と見習い聖女トリーが立っています。

その治療は素晴らしく、アンナ聖女を上回るすばらしいスピードで治療が終了していきます。


「終わりました」とキラ聖女。


そう言ってただうつむいています。終わった喜びもなにもありません。

ただうつむいて患者のベッドを後にしたのです。


じつは

このキラ聖女の治療の前にはこのような事があったのです。

しばらくさかのぼります。


開始前にアンナはキラ聖女とすれ違いました。



なにごとかわかりませんが、そのからだからある匂いが漂っていることを

感じたのです。


アンナの顔がすこし曇ります。これは……

競技会のはじめの頃から、このことはアンナには気がついていました。


重傷の患者の治療を開始するまえに、キラ聖女は一人控え室に下がっていました。

アンナは気づかれないように、その控え室に入りました。


キラ聖女は気がつきます。

「だれ!!!」

「東のアンナです」

「なんの用事、関係ない人は出て行って、出て行かないと人を呼びますよ」


アンナは、その言葉には構わず、キラ聖女につかつかと近寄り

そしてキラ聖女の顔を強い目でにらみそして言います。


「その持っている物、それを出してください」

「絶対に使ってはいけません」


その言葉にキラ聖女は動揺します。

「そんなものは……」その言葉には力がありません。


「それは、ソーマ、絶対に使ってはいけません」

そのものの名前までも全て知られている事に、キラ聖女は愕然とします。


「渡してください。お願いします」

「それはあなたを破滅させる物です」

「それがわかっているから今まで躊躇していましたね。でも使おうと」

その言葉にキラ聖女は自分の心の中をすべて見透かされたと感じたのです。


「わたしは勝たなければいけないのです」

「わたしは貧しい家でうまれました」

「偶然に聖女の力があることで、ここまで上り詰めることまでできたんです」

「あなたのように初めから恵まれた貴族の方とは違うのです」


それにはアンナは答えずただ

「あなたは素晴らしい聖女です。だからこそ、ここで道を間違えて欲しくないのです」


キラは絞り出すような声で

「私にはベアトリス聖女を超えるためには、もうこれしか残っていないのです」


 アンナはその言葉を聞くと、静かに胸から数本の容器を取り出しました。

「これを差し上げます」


「これは?」

「私たち東地区があの初日の緊急治療による体力の枯渇から復活できた特別の回復薬です」

「これは私たちの持つ最後の物です」

「これを差し上げます。お使いください」

そう言ってキラ聖女に差し出すのです。


「これを使えば、すぐに体力が回復します 治療を行なう前にお使いください」

それを聞いて動揺しているキラ聖女に、


「毒ではありません。わたしが先に飲んでみます」

そういって半分を飲んで見せました。何事も起こりません。

アンナの身体の中には力がよみがえってきました。


それを見てキラ聖女は、迷いながらもゆっくりとそして一気にそれを飲み干したのです。

「あーーーこれは!!!!!」


「おわかりでしょう。嘘では無い事に」

キラ聖女の身体には、力の泉があふれるかのように湧き出てくるのです。


それを知って、キラ聖女は懐に隠し持っていた容器をオズオズとアンナに差し出します。

「よかったわかってもらえて」

「本当のあなたの力を今から見せてください」

そう言って受け取った容器の内容物を手の中で破壊しました。

その独特の匂いは消えてしまいました。



(この悪魔の薬を手に入れるために、キラ聖女は王城への到着が遅れたのです)

「さあ患者さんが待っておられますよ」

 

促されるようにキラ聖女は部屋より出て行きました。

アンナはもう一つの入り口から人知れず出ていきました。

このようなやりとりが、キラ聖女の治療前にあったのです。


さて

最後はベアトリス聖女が重傷者の治療にかかります。


同じ様に重傷者に取りかかったのですが、その表情には苦悶の色が見えます。

思い通り行かないのです。その表情にはだんだんと焦りの色が見え始めています。

その時です。


ベアトリス聖女の周りにそっとより集まる人たちがいます。

ベアトリス聖女は気がつきます。

「誰?」



アンナ、サンディ、ベル、ノルの東の4人の聖女達です。


そしてベアトリス聖女と患者を取り囲むように、目を閉じて立ったのです。

ベアトリス聖女は気がつきます。自分のその力が増強されていくことを

もの凄い勢いで治療が進むのです。

凄いスピードで治療が終わるのです。キラ聖女の結果と遜色ありません。



ベアトリス聖女は「おわりました」ただその声は力なく、

そしてアンナをじっと見つめるのです。

ただ心奪われた目で、4人の聖女を見ているのです。


このようにして、全員の治療が終わりました。



治療の結果は、ベアトリス聖女の治療が僅差ですが、

この競技会の第一位に選定され内示されました。

優勝者ベアトリスに歓声が起こりました。


そしてこの治療競技会はおわりを迎え、人々が解散していきます。


二位であったキラ聖女は、うつむいて泣いています。

そして、部屋を出て行きます。

すれ違うアンナ聖女の前にうつむき立ち止まり一言「ありがとう」と



アンナはその肩をポンポンと無言でたたき、さあといって退出を促します。

(その二人の姿を見た人は、三位の聖女が二位の聖女に残念だったねと言っている様に見えるだろうと思いますが)

キラ聖女は退出していきました。



 ベアトリス聖女の周りには第一位おめでとうと言う祝福の人が集まっています。

しかしベアトリス聖女の顔は、一位を喜ぶと言うより、ただ押し黙り顔には困惑という意味がありありと現れています。


そしてその部屋を出て行くとき、多くの取り巻きと歩き始めたベアトリス聖女は、急に一人、取り巻き達を離れ、壁のところに立っているアンナに向かいます。



そして、その前に立つと

「なぜわたしを助けてくれたのですか」


「一位おめでとう」にこにこした顔でアンナは祝福します。



「そうではありません!!!助けなければあなたが一位です」


「どういうことですか?」

「あれがわからないとお思いですか」


それには答えず

「聖女は困っている人、苦しんでいる人を助けるのが仕事ですから」

とアンナは穏やかな、にこやかな顔で伝えるのです。


ベアトリス聖女は、その答えに愕然とハットした顔でうつむきます。


「アンナ帰りますよ」という声が後ろから聞こえてきます。



「はーい」

と言うとアンナは振り向き、一礼してベアトリス聖女から去って行きます。


ベアトリス聖女はその場にただひとり残され、たたずんでいました。

いつまでも……                   


トリー聖女(見習い)の回想

アンナ様から助けてほしいと頼まれて、教えてもらった方法で立っているだけでしたけど

周りに立つ聖女の頭上に光輪が現れて、その輪が増光して拡大していくのが見えます。



あのとき以上です。こんなの見たことがありません。

頭上の光、月輪を持つ聖女、これこそがあるべき姿で多くの絵に描かれてきたもの、それがいま自分にも現れるなんて!!!


それよりも凄いのが、このリングを重ねるなんて


4つの神が現れて、中央の神を守る、十字の意味

4つのリングが中央で重なり4重リンクとなり、中央の聖女の光輪を増強していき、そして混じり合い、


光の宝塔が聖女達と患者の上に立ち上がるのが見えます。


それは、あまりにも美しく、静かで、聖なるものとしか、次の言葉がでません。


普通の人にはわからないでしょうけど、アンナ様に教えてもらった方法を行うと見えるようになるのです。3聖女もベアトリス聖女もそれがわかるのですから、さすがです。


それにしても聖女はみなこのような光輪を持つ者であるのだから

本当であれば、誰もがこの光輪をもっているものであるのだから

わすれないでください。 それが女神様が一番に伝えたかったこと

この章では、「勝ち負け」の向こうにあるものが描かれました。

アンナの行動は、単なる理想ではなく「魂の実践」として読者の胸に響くでしょう。


――聖女とは、光を競う者ではなく、光を分け合う者。

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