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競技会2日目

王城での競技会は二日目を迎える。

東地区代表アンナ一行は、一日目で異例の成果を見せ、注目の的となっていた。

一方、北部代表ベアトリス聖女の胸には、予想外の焦燥が芽生えていた――。

「朝食の用意ができました」

奥から係の声が響いた。


「あっ、もうそんな時間。行きましょう」

アンナが立ち上がり、四人の聖女が慌ててついていく。


 食堂には焼きたてのパンとスープの香り。

アンナたちは上座に案内され、椅子に腰を下ろす。


「では――ご一緒に。いただきます」

「いただきます!」


 食器の音だけが、静かな朝を満たした。


 食事を終えると、係の声が響く。

「本日、会場へ向かわれる方はご準備をお願いします」


「そろそろね」

アンナは軽く息をつき、部屋へ戻った。


 支度を終え、テラスに集まる五人。

「今日も清々しい朝ですね。さあ、行きましょうか?」

「はいっ!」

三聖女が顔を見合わせ、大きくうなずいた。


 馬車の前ではクロノ司祭とケルンが待っている。

「おはようございます!」

元気な声が響く。


「皆さんお早いですね。昨夜はよく眠れましたか?」

「もちろんです!」

「さあ、こちらへどうぞ」


 ケルンが丁寧に手を添え、一人ずつ乗り込ませる。

最後にアンナが乗る前、クロノ司祭が小声で告げた。


「今日は、欠席される聖女様が出始めています」

「やはり……そうですか」

アンナの表情がわずかに曇る。

(力が枯れてきているのね……)


「ただ、キラ聖女とベアトリス聖女は問題なく参加です」

「さすが優勝候補ね」

アンナは小さく微笑んで、馬車に乗り込んだ。


 御者が声を上げる。

「出発いたします!」


 車輪がゆっくり動き出し、石畳を叩く。

窓の外では、見送りの人々が手を振っていた。

アンナも笑顔で手を振り返す。


(――行こう。今日もできる限りのことを)


 馬車の中では、いつものように明るい会話がはずむ。


「昨日はほんとすごかったよね!」

「うん! あんなに早く治るなんて信じられない!」

「アンナ様の導きがあったからですよ」

「え、えぇ、みんなのおかげです」

アンナは少し照れながら笑った。


 会場に到着すると、聖女たちは控え室へ。

「今日は軽い症状の患者は終わってますから、もう少し難しい方を担当します」

アンナが説明する。


「大丈夫ですよ、昨日より上手くやれそうな気がします!」

「そうね、ちょっと自信ついたかも!」

「でも、油断は禁物よ」

三人の声が重なり、空気が引き締まる。


 扉の前に立ち、アンナが言った。

「では行きましょう」

四人は同時に「はい!」と声をそろえた。


 治療室を開けると、すでにほかの聖女や医師たちが集まっていた。

「遅いですわね」

冷たい声が飛ぶ。キラ聖女だった。


「待ちくたびれましたわ」

腕を組み、じろりとこちらを見ている。


「お待たせして申し訳ありません」

アンナは柔らかく微笑んで頭を下げた。


 その様子を見ていた医師が前に出る。

「それでは、二日目の説明をいたします」

「ご覧の通り、本日は人数が減っております」

「昨日の軽症患者を終えられなかった方、また体調を崩された方は参加されていません」

「ここにおられる方々は、より重い症状を担当していただきます」

「では、本日もよろしくお願いします」


 ざわめきが静まり、一同が頷く。


「参りましょう」

アンナが短く言い、四人が続いた。


 病室へ向かう途中、ベアトリス聖女がアンナのそばに歩み寄る。

「聖女アンナ……あなたが“本命”の一人だったのね」

「え?」

「まさか、あんなことができるなんて。でも――」

ベアトリスは笑った。だがその笑みは挑戦の色を帯びている。

「わたしには、王妃様から直々に伝授された方法があります。負けるわけにはいきませんわ」


 そう言い残して踵を返す。

アンナはその背中を見送り、困ったように首をかしげた。

(なにか……違う。そうじゃないのに)


ベアトリスの回想


 昨日のこと。

ベアトリスは王妃の教えどおり、軽症の患者から治療を始めた。

その判断は正しく、すべてが順調。

キラ聖女も同じ速度で治療を進め、互いに意識し合う。


(今日の相手はキラ聖女で決まりね)


 そう思っていた矢先――。

夜、宿舎に飛び込んできた報せに息を呑む。


「東地区の聖女たちが、重傷者を治療して倒れたが、翌日には復帰」

「しかも治療速度が異常に速い」

「さらには――旅の途中で魔物を討伐した、とのことです!」


「……魔物、討伐?」

ベアトリスの目が見開かれる。


(そんなはず……ありえない。倒れたのに翌日治療? 冗談でしょう?)


 さらに追い打ちをかけるように、噂が届く。

「アンナ聖女――弓の聖女アルテミスの再来」


(……アルテミスの再来?)

その瞬間、ベアトリスの中に、得体の知れない不安が芽生えた。


 静かに立つアンナの姿。柔らかな微笑み。

(本物の聖女があらわれたの?)


 北部公国の誇りを背負う彼女の胸に、影が落ちていった。

第二日目、アンナとベアトリスの間に芽生えた静かな対立。

その裏で、各地区の思惑と緊張が少しずつ姿を現していく。

次回――

東の聖女たちが再び“奇跡”を起こすとき、王城の空気が変わり始める。

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