表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第4話 豪華すぎる神殿と、成金神官長の秘密

「カレンさん、ここってベルサイユ宮殿だったんだね!」


「あら、真希ちゃん、ベルサイユ宮殿行ったことないじゃない?」


「モノの例えだよ。宮殿なんてテレビとか映画とかでしか見たことないし」


「確かに、そんな例えがしたくなるくらい豪華絢爛ね。

私の一張羅のドレスが似合いそうよ」


「あの中世ヨーロッパ的なドレス? あれどこで着るの?」


「もちろん、お店のイベントよ! 着飾った私って評判なんだから」


「カレンさんは、ドレスじゃなくても美人さんだよ。

私の自慢のカレンさんだもん」


私の言葉に、カレンさんが頭を撫でてくれた。

嬉しくて、ついつい笑顔になる。


「豪華なんだけど、なんだか品がないよね?」


「あら、真希ちゃんもそう思う?」


「だって見るからに金色の壺とか、装飾多めな額縁に、絵だって統一感ゼロだよ。

こういうのって成金趣味って言うの?

なんだか、この区画の主の人となりがわかってきそうだよ」


カレンさんが、「全くだわ」と言いたげな顔をしている。

あの暗くジメジメした北側とは比べものにならないくらい、

豪華な西の区画にため息が溢れた。



「おや? どちら様かな?」


背後から男性の声がした。

あぁ、出た。主様登場ですか。

さぁ、どう切り出そうかな。


ちょっと身構えた私の肩を、カレンさんがポンポンと叩いた。

――ほら、大丈夫。肩の力抜いて、って言ってるみたいに。


作り笑顔を浮かべて振り返る私。カレンさんも同時に振り返った。


「こんにちは、ここでお世話になってます。山中真希です。

ちょっとだけ探検のつもりで歩いていたら、迷いました」


「おやおや、それは大変ですな。よかったら、この私が案内して差し上げましょうか?」


獲物を見つけた時のような、薄気味悪い笑み。

なんだろう……誰かに似てる気がする。


白い生地に銀糸の刺繍がびっしり。

指には金の指輪、首には見せつけるような金のネックレス。

神官って、質素倹約じゃないの?

すでに見かけが悪者感満載なんだけど。



「さっきは北側で迷いました。

あそこ、今にも幽霊が出そうなくらい暗くてジメジメしてて、嫌な感じの場所でした」


わざと肩をすくめて怖がってみせると、男の口角が上がった。


うわぁ、気持ち悪い。

この感じ、やっぱり誰かと被るんだよね。


「それはそれは。不快な思いをさせましたな。

ここは明るくて快適ですぞ。よかったら私と一緒に昼食でも?」


伸ばした男の手が、私の肩に届きそうになった瞬間――

背中を包む温かい腕。

あぁ、もう大丈夫。

不安が一気に消えてなくなった。


「うちの娘に、触れないでいただきたい」


堂々として、威圧感たっぷりの声。

おおっ、ヨシオさん降臨。

思わず「かっこいい!」って言いたくなった。



「はて、あなた様には初めてお会いしますかな?」


頓珍漢な返答。

あぁ、そうか。初日はウィッグとメイクしてたもんね。

ジャージ&ちょんまげの私もいたし、そりゃ気づかないよね。


ふっとカレンさんが口角を上げ、神殿長を見下ろした。


「あら、神殿長さん。初日にお会いしたじゃない?」


一気に声のトーンと口調を変えるカレンさん。

その姿に、神殿長は目を見開いた。

明らかに動揺している。……ふん、ざまぁ。



「ねぇカレンさん、神殿の長って王子様より偉いんだね。

私たちの世界とは常識が違うんだね」


「いやいや、お嬢さん、何を言うのかね。

ここの国も王族が一番地位が高いよ」


「えっ? でもさっき会った王子様は、北側のカビ臭い暗い部屋にいたよ。

ね? カレンさん?」


「そうだったわねぇ」


わざとらしいやり取りに、神殿長のこめかみがピクピクしてる。

……あ、怒りマーク出た。


「おやおや、あそこは王子様のご希望ですぞ。静かな所とおっしゃいましたし」


うわ、白々しい。

そんな部屋、自分から選ぶわけないじゃん。


「そうなんですね? それじゃあ、王族の方が部屋を移りたいって言えば、その通りになるの?」


「もちろんですとも」


「っだって! 聞こえた? ユーエンさん!」


神殿長の背後に声を飛ばすと、彼がギョッと振り返った。


「ええ、聞こえました。では神殿長、ノエルの部屋をカレンさんたちの隣へ」


堂々とした口調に、神殿長の顔が引き攣る。

あぁ、悔しそう。もっと見せてその顔。


「それじゃ、ノエルの坊やを連れてこなくちゃ!

私がしっかり看病するから、安心してね」


カレンさんのウインクが神殿長に刺さった。



「……いや、王族の安全を考えると、警備のしっかりした区画の方が……」


「警備も何も、あそこ、人っこひとりいなかったけど」


私の一言に、神殿長が睨んだ。

スッとカレンさんが私の前に出て、その視線を遮る。

そして――手をかざす。


その手のひらに、赤い光が生まれた瞬間、空気が震えた。


「この私より強い人って、いるのかしら?」


火球がぼうっと揺らめく。

神殿長の顔がみるみる青ざめていく。


「っそ、そうですな……あなた様は賢者様以来の魔法使い……。

……あ、あなた様の側が一番安心ですな」


恐怖と悔しさを隠せないその顔。

うん、見覚えある。……やっぱり誰かに似てるな。



去っていく神殿長を見送って、カレンさんの腕を突いた。


「ねぇカレンさん、あの人って誰かに似てるよね?」


「そう? あんな小物感たっぷりの男なら、印象に残るはずだけどね。

それより、私の可愛い真希ちゃんをあんな目で見るなんて……。

あいつの胸ぐら掴みそうだったわ」


逞しい二の腕を見せつけるポーズと、優雅な口調のミスマッチ。

思わず吹き出してしまった。



「そういえばユーエンさん、神殿の財源って市民のお布施で合ってる?」


カレンさんとの笑いが落ち着いたところで、真面目な質問を投げた。

ユーエンさんの顔がピクリと動く。


「はい、基本はそうだと思います。国からの援助もいくらか……。

それがどうかしました?」


「ほら、あの神殿長さん。身につけてる物も、他の神官たちと比べて豪華すぎるでしょ?

おかしいと思わない?」


「確かに……。お布施や援助だけでは、この豪華さは説明できませんね」


カレンさんが「よくできました」と言わんばかりに頭を撫でてくれる。



「それじゃぁ、今夜は秘密を暴きに行こうよ!」


軽いノリで言うと、カレンさんが「それも面白そうね」と返した。


真っ暗な廊下。

無音に近い空気が、少しだけ不安を呼び起こす。

小さな灯りを隠すように持ち、足音を忍ばせる私とカレンさん。

そして、なぜかユーエンさんまで同行していた。


「ユーエンさん、ここの部屋が神殿長の執務室で合ってる?」


「はい」


ゆっくりと扉を開ける。

中はやっぱり、物が多い。きっと装飾品だらけなんだろう。


「真希ちゃん、何から探すの?」


「もちろん、隠し帳簿でしょ?」


「だよね」


手分けして部屋を探ると、拍子抜けするほど簡単に見つかった。

鍵もなし、隠し扉もすぐバレる。セキュリティゼロ。


「ねぇ、なんでこんなに手応えないの?

秘密ってもっと厳重に保管しない?」


帳簿をヒラヒラさせると、カレンさんが苦笑した。


「きっとここでは最高権力者だから、誰も逆らわないと思ってるのよ」



「カレンさん、真希さん? ここに何か隠してあります」


ユーエンさんが聖書のような大きな書物を手にしていた。

開いてみると、中はくり抜かれていて、手紙の束が入っている。


三人で手紙を開き、目を通す。

一枚、また一枚。

そして全員が、息を呑んだ。


そこに書かれていたのは、とある人物の名前。

――これは、荒れるなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ