遺跡突入!剣と魔法と、ときどき爆発音
ナイール遺跡――。
古代文明が残したと言われる地下迷宮。無数の階層、仕掛けられた魔法トラップ、そして“何か”の気配が漂う場所。
「なあ、本当に入るのか? ここ……。なんかもう“ラスボス感”あるぞ……」
「大丈夫だよオシャル。だって私たち、四人もいるもん!」
「人数だけで安心すんなドジ魔法使い!」
「ひ、ひどい!」
入口の前で早くも賑やかな四人組。
そんな空気を吹き飛ばすように、ゼイドが無言で扉を押し開ける。
ギギィィ――…
遺跡の奥から、重く冷たい風が吹きつけた。
⸻
◆◇◆
遺跡内は暗く、魔力が漂っていた。
エルシアが小さな光球を手のひらに浮かべる。
「“精霊灯”。……これで見えるわ」
「うわ、便利。私の火球と違って爆発しないんだね!」
「火球は照明じゃなく兵器だろ……」
そんなやり取りをしながらも、四人は慎重に進んでいく。
──ガシャン!
突如、床が沈む音。
「っと、やべっ! トラップだ、伏せろ!」
オシャルの叫びと同時に、天井から無数の矢が降り注いだ。
だが――
「“結界・蒼壁”!」
ゼイドの魔法障壁が瞬時に展開し、全ての矢を受け止める。
「おお~、さすがゼイド! 頼りになる~!」
「……当然のことをしたまでだ」
「いや、もうちょっと照れたりとか……ね?」
「無理だ」
⸻
さらに奥へ進むと、巨大な石扉が現れる。
その中央には、奇妙な文字と剣の意匠。
「古代文字か。『血を受けし者のみ、剣を引き継ぐ資格を持つ』って書いてあるな」
「これ……オシャル、お前じゃないのか?」
ゼイドがオシャルを見る。
「父さん……“黒鉄の刃”が最後に入った遺跡なら、俺に関係があるかもしれない」
オシャルが扉に手をかざすと、微かに光が集まり――
ゴゴゴゴ……と、石扉がゆっくりと開いていった。
「え、まさか本当に資格持ち!?」
「主人公力高すぎだろ、お前……!」
「いや、俺だってびっくりしてんだよ……」
⸻
◆◇◆
扉の奥。そこには――朽ち果てた石像と、剣が一本だけ突き立てられていた。
「これは……」
「“黒鉄の剣”のレプリカ……? でも、何かが違う」
オシャルがゆっくりと手を伸ばす。
だが――
バチンッ!
剣を掴もうとした瞬間、魔力の衝撃が走る。
「ぐっ……ッ!」
「オシャル!!」
「くっ、結界を張る!」
「私も魔力送るわ!」
ゼイドとエルシアが即座に反応。
エムルも、真剣な表情で駆け寄った。
「バカ……なんで一人で抱え込むのよ……っ!」
「……大丈夫。これくらいの痛み、慣れてる」
一瞬、オシャルの中に“過去の記憶”がよぎる。
剣の師匠、そして父の背中。
(まだ……追いつけてねえ)
だが、その瞬間。
――“剣”が、オシャルに反応した。
「資格……認証。継承を許可します」
無機質な声と共に、剣が宙に浮き、オシャルの手に収まった。
同時に、石像が動き出した。
「自動防衛機構、作動。継承の最終試練を開始します」
「わああああああ!? なんか出たああああ!!」
⸻
巨大な石像が腕を振り下ろす!
「来いよ……こっちは仲間がいる!」
オシャルが構えた新しい剣が、闇の中で蒼く光る――