表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/47

真名解放

白闇槍によって封じられたリグルスの能力――。

滅四鬼人の猛攻を前に、オシャルたちはついに膝をついた。


「はぁ、はぁ……っ! クソ、また……何もできないのかよ!」


拳を握りしめ、オシャル=リヴァンスは震える。

仲間たちは倒れ、十剣は敗れ、滅四鬼人はなおも完璧な構えでこちらを見下ろしている。


「絶望したか? 小童ども」

仮面の男、アクセレイ=ゲオの声が響く。


「古代魔装剣、やはり神の傑作物だったな。だが白闇槍には通じん。ここで終わりだ」


──違う。まだ、終わらせない。

胸の奥で何かが囁く。


《問いかけます。あなたは、それでも“剣士”で在りたいと望みますか?》


脳内に直接響いた声に、オシャルは目を見開いた。


「おまえ……リグルス……?」


《私はリグルス。だが今の私は“名を失った剣”。あなたが呼ぶならば……》


オシャルはゆっくりと立ち上がる。

満身創痍の体を奮い立たせ、ひび割れた剣の柄を握り締める。


「行こう、リグルス。俺が呼ぶ……お前の“真名”を!」


雷鳴のように――光が奔る。


《了解。概念書き換え、起動――真名は、“リアルエディット”。》


──世界が、揺らいだ。


「なっ……!?」


レイ=ゾッドの目がわずかに見開かれた。

空間が塗り替えられていく。白と黒の狭間で、現実そのものが上書きされていく。


オシャルの足元に広がった光の陣から、一振りの剣が形作られた。

それは、ただの武器ではない。“概念そのもの”を編集する、理を越えた存在。


「おいレイ、あれ……ヤバいだろ」

ライ=ギグスの顔から笑みが消える。


「ふざけるな……なんだこの力……っ!」

アル=ステグマが振るった毒刃が、オシャルに届く前に霧散する。


「たった一撃で……こっちの魔術構成式、全部バグった!? ウソでしょっ!?」

リム=トークンの瞳が揺れる。


「これが……リグルスの“真の力”……!」


オシャルが踏み出すごとに、空気が書き換えられていく。

重力が変わり、時間の流れが歪み、因果すら塗り替わる。


「これで終わらせる……!」


オシャルの一太刀が、レイ=ゾッドの剣と交錯する――


ガギィィン!!


音が鳴ると同時に、世界の一部が反転する。

レイの時間操作の能力が無効化され、その剣速が初めて止まった。


「お前……まさか俺の《時流剣》を、無効化しただと……?」


「概念を書き換えた。“時間を操る剣”じゃなくて、“ただの鉄の棒”にな」


オシャルの剣が、閃光のように振り下ろされ――


ズバァアアァンッ!!


レイが後方へ弾き飛ばされ、岩を砕きながら地に沈む。


「レイが……!? まさか、そんなッ……!」


十秒。わずか十秒の“真名解放”。

その中で、滅四鬼人の頂点をも打ち破った。


「このまま、一気にいく……!」


だが――


「それ以上は、やらせんよ」


アクセレイの白闇槍が一閃。

リグルスの輝きが、またも闇に呑まれる。


《概念力、強制停止……リアルエディット、機能ロック》


「くそっ、また……!」


「なるほど。少し面白くなってきたな、だが根本の力が変わったわけではあるまい。あくまでアップデートの範疇だ」


アクセレイが仮面の奥で、笑った気がした。


「これでお前たちは“終章”だ。準備はいいか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ