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再構築されし世界。そして決着へ

ポッケル=グリムナインの繰り出した奥義、「メガネ斬」の一撃は、対象の弱点を即座に捉える眼力と剣技を融合させた、まさしく“見抜く”が“断つ”へと直結する技だった。


「……いいのか? もう剣、その一本しか残ってないみたいだけど」


眼鏡のブリッジを軽く押し上げるポッケル。笑みはある種の余裕を漂わせていたが、その動き一つ一つに無駄がない。動きが見えない、というより「未来を読まれている」感覚すらある。


オシャルは、手に携えた剣の刀身を改めて直視する。


——古代魔装剣リグルス。


あの日、山で偶然手に入れた、しかしまだ本当の意味で使いこなしたことのない剣。

でもこの窮地に立って、剣から声が聞こえてくる気がする


「……悪いな、ポッケル。俺、負ける気がしねぇんだわ」


「えぇ〜? フラグっぽいセリフ言って、もしかして本気出す感じ?」


「そういうことだ」


オシャルの足元から風が巻き起こる。リグルスの刀身が淡く蒼白い光を放ち、空気の密度すら変化するのを観客たちも感じ取る。


《——解放条件、戦意危険域。適合者、オシャル=リヴァンス。リグルス、再構築能力を開示——》


「なっ……!?」


ポッケルの表情が一瞬、硬直した。


それは戦士の本能が「未知」を察知したときの警戒だ。

そうか、リグルスってもしかして。


「リグルスの本当の力……今、この場での“概念”を、書き換える力だ」


「概念……だと?」


オシャルは目を閉じる。深く息を吐き、意識を集中させる。


「俺が定義する。お前のメガネは“視力強化レンズ”なんかじゃない——“視力を弱くするレンズ”だ!」


「な、何を言って……!?」


突如、ポッケルの目が霞む。明瞭だった輪郭が滲み、視界の焦点が合わなくなる。


「な、なにこれ!? 俺の視力がっ……ッ!? え、待って、急に0.02くらいになった感じあるよ!? メガネ! 俺のメガネがバグった!? えっ……これ老眼?」


焦りと混乱の中で、さらにオシャルの声が追い討ちをかける。


「そして、お前が受けたレーシック手術——あれも“視力弱体化処置”として定義し直す!」


「やめてえええええええ!!??」


場違いな絶叫が闘技場にこだまする。


「そのメガネと手術の全てが、今この瞬間から“視界を不自由にする行為”に変わったんだよ!!」


ポッケルの瞳が完全に焦点を失い、足元がふらつく。


「もう何も見えないぃぃぃっっ!! 誰か白杖ちょうだいぃぃぃっ!! ねえこれバグ!? 俺がチート使ってたんじゃなくてバグだったのぉ!?」


観客の誰もが絶句していた。強すぎる視力を誇り、ランキング上位へと駆け上がったポッケルが、まさかの“概念書き換え”で弱体化されるなど、誰が予想しただろうか。


「……終わりだ、ポッケル=グリムナイン」


リグルスが輝き、風がうねる。


「《天翔裂破・黎明ノ陣》ッ!!」


真空を裂くような斬撃が、ポッケルの腹部を一直線に切り裂いた——ように見えた瞬間、風圧が彼を吹き飛ばし、闘技場の外枠に叩きつけた。


「がっ……は、はぁぁ……ふ、服が……破れた……! 俺の勝負眼鏡が……真っ二つにぃ……!」


四散した眼鏡の破片とともに、ポッケルは静かに倒れる。


——勝負あり。


場内は静寂に包まれ、やがて一人、二人と拍手が沸き起こる。


「勝者——オシャル=リヴァンス!!」


アナウンスが響いた瞬間、闘技場は嵐のような歓声に包まれた。


エムルが駆け寄る。


「オシャルっ! 無事!? 剣が光ってたけど、また変な力使ったっしょ!」


「……うん。なんか、すごかった。けど……俺もまだよくわかってねぇ。リグルスの力って、たぶん、ただの武器じゃない」


ゼイドやエルシアも観客席から立ち上がる。


「……見事だったわ。その剣、本当にただの剣じゃないわね」


そして、地に倒れるポッケル=グリムナインは、ガタガタと震えながらこう呟いていた。


「ぼ、僕の……僕のレーシック……否定された……。尊厳、消滅した……」


そうして、戦いは終わった。


けれど、本当の物語はまだ、これからだった——。


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