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交わる刃

ギルド主催・武技大会――


激戦の続くトーナメント。

ベスト4を決める戦いの舞台に、オシャルは静かに歩を進めていた。


対戦相手は、剣士ランキング12位――《双閃のキリカ》。


黒髪ツインテールの女剣士。

鋭く細い瞳の奥に、どこか棘のような焦燥が見え隠れする。


「よう、星風の。あんた、なかなか面白かったじゃん。ちょっとは楽しめそうね」


キリカは左腰と右背にそれぞれ細身の太刀を携えていた。


「双剣か……厄介な相手だな」


オシャルは剣を抜き、構えを低く取る。


「悪いけど、俺もこの大会に懸けてるんだ」


「へえ。じゃあ、本気でいくよ。――《双影ノ陣》!」


開始と同時、キリカの影が二つに分かれる。


(……速い)


一閃。


右から来たと思った太刀が、突然左から斬りかかってきた。


「《影斬・一の型》!」


ガンッ!


かろうじて受けたオシャルだったが、反動で大きく後退する。


「影を利用した軌道操作……見切りづらいな」


「でも、今のはまだジャブよ」


キリカは地を蹴った。


「《双影・三連斬》!」


ザン、ザン、ザンッ!


右、左、背後――幻のように太刀筋が重なってくる。


だが――


「見切った」


バシュッ!


風の奔流と共に、オシャルが一歩踏み出す。


「《風牙・断》!」


疾風のような斬撃が、キリカの間合いを切り裂いた。


「なっ――!?」


キリカの双剣が跳ね飛ばされ、彼女は地面に膝をつく。


「しまった……」


「……ありがとう。強かった」


「……チッ、優しさがムカつくわね。負け惜しみだけど」


観客席からは大きな拍手と歓声が沸き上がる。


勝者――オシャル。


準決勝進出。


順調に勝ち進むオシャル。

だが、そこに待っていたのは思わぬ名前だった。


「続いて準決勝第二試合、オシャル 対……ゼイド」


「――は?」


エムルが叫んだ。


「ちょっと待って!? え、ゼイド出てたの!?」


「……黙ってて、悪かった」


ゼイドは静かに立ち上がり、剣を背に歩いてくる。


「……まじか。何で言ってくれなかったんだよ」


「……今のオマエと、どれだけ差があるか。確かめたかった」


オシャルとゼイドが、無言で向かい合う。


幼い頃から剣を振るってきた二人。

今、戦う理由はない。だが、それでも剣士として――


「本気で来いよ、ゼイド」


「当たり前だ」



場内が静まり返る中、試合開始の鐘が鳴る。


「《風牙・閃》!」


オシャルが先に仕掛けた。速さを活かし、距離を詰めて一撃を狙う。


しかし――


「……甘い」


ゼイドの剣が動いた。


「《重斬・絶》」


ズガァァッ!!


重みを持った斬撃が、風を断ち、オシャルの踏み込みを弾き飛ばす。


「――くっ!」


(これが……本気のゼイドか)


その剣は、一切の無駄がなかった。

鋭く、重く、正確で……まるで山を切り裂くかのような一撃。


「行くぞ、オシャル」


「上等……!」


風と剣が、激突する――!


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