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伝説の剣との出会い

オシャル、おまえは……剣の才能が、ないんだよ」


村の武具師ガランの言葉が、耳の奥でいつまでも反響していた。


――そんなこと、分かってる。


子どもの頃から剣に憧れて、毎日素振りを欠かさなかった。だけど、誰よりも努力しているはずのオシャルには、「剣気」すら発現しなかった。


「なんで、俺だけ……」


この世界において、剣士は“剣気”と呼ばれる魔力の波動を剣にまとわせて戦うのが基本。剣気の強さが、そのまま実力になる。


オシャルには、それが一度たりとも宿ったことがない。


剣を握って十年。十五歳になった今も、彼は村の“落ちこぼれ”と見なされていた。



辺境の村・トラヴァス。


人より獣のほうが多いこの片田舎で、オシャルは今日も山へ向かっていた。もちろん、剣を背負って。


「……せめて、何か一つでも、俺にしかできないことがあれば」


そんな想いを胸に、奥へ奥へと進むうちに、見慣れない崖へと出た。


霧が深く、木々が鬱蒼と生い茂っている――だが、その中央に“穴”のような場所があった。崩れた地面の下、ぽっかりと開いたその空間に、何かが……光っていた。


「剣、か……?」


崖を降りるように慎重に足を進め、光る物体へと近づく。


それは――剣だった。


ただの剣ではない。漆黒の刀身に、紋様のような金の筋が走っている。柄には古代語のような文字が刻まれていた。


「すげぇ……なんだ、これ」


オシャルが無意識に手を伸ばすと、その瞬間、剣が“震えた”。


ギィィィィィン――!


頭に直接響くような音と共に、脳裏に言葉が流れ込んできた。


《契約者を確認。古代魔装剣リグルス、起動開始》


「……!?」


《適合率99.7%。剣気適性――解放》


次の瞬間、オシャルの身体を“熱”が走った。


今まで感じたことのない感覚。力が、身体の奥底からあふれてくる。


「これが……剣気……!?」


見えないはずの空気が揺らいだ。剣を構えると、刀身に淡い紺色の光が宿る。


目の前の岩を――試しに、一振り。


バキィッ!


乾いた音を立てて、直径1メートルはあろうかという岩が真っ二つに割れた。


「……う、うそだろ……!?」


数秒前まで、“剣気ゼロ”と呼ばれていた少年が、今や“伝説級の剣”と契約し、目を疑うほどの威力を見せていた。



村へ戻る道すがら、オシャルは何度も剣を構え、構えを試した。


力が湧き上がるたびに、今まで味わったことのない興奮が全身を駆け抜ける。


(これなら、俺だって……)


「村を出て、強くなる。今度こそ、“誰にも負けない剣士”になる!」


そう、少年は決めた。


この日、辺境の村の“無能剣士”オシャルが――

世界を変える“英雄”への第一歩を踏み出したのである。

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