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4.脳みそマジカルバナナかよ

PVが少しずつ増えていてうれしいです。

ありがとうございます。

「ほら、行くよ」


 エイルは僕に背を向けてさっさと歩きだしてしまった。襲撃者がどこから狙っているかわからないというのに、ずんずん進む。

 防御魔法を展開することはできない。座標を固定してから発動するからだ。そのうえ、魔力の消費が激しいため、常時展開するのは難しい。


「うーむ……」

「ちなみにさ、あれは何の魔物だと思う?」


 歩きながら聞いてきた。魔法を操るということは、悪魔系だろうか。ゴーレム系も魔法を扱うことがあるが、山中を闊歩しているとは考えづらい。


「悪魔系?」

「……どうして?」

「魔法使ってたから」

「うーん。浅い。実に浅い。攻撃する目的を考えるべきじゃないかな」


 攻撃する目的。敵を排除するため、とか。

 僕らは奇襲を仕掛けられた。

 なぜ奇襲という手段をとったのだろう。

 正面戦闘を避けるべき相手に攻撃を仕掛けるなら、まず間違いなく奇襲を選ぶ。しかし、魔物が格上の相手に攻撃を仕掛けるという状況なんてあるのか。

 魔物は賢い生き物だ。負ける戦いを挑むような愚かな行動はしないだろう。

 獲物の魔力量を見極めることができるはず。僕はまだしも、とてつもない魔力量のエイルに戦いを挑むなんてことを……。

 あ。まてよ。

 あのとき、奇襲を受けたのは僕だ。エイルじゃない。


「弱いほうを先に殺すため、とか」

「うんうん。で?」

「え、で?……ああ、何の魔物か、ね」


 いや、弱いほうから先に殺すっていうのは当たり前じゃないか?

 何のヒントにもならないんだが……。


「でもさ、気付かれないうちに殺すなら、強いほうを優先するべきじゃない?」

「たしかに……」

 

 奇襲に成功して弱いほうを殺せたとして、価値は低い。どれだけ大きく相手の戦力をそぐことが出来たかで、奇襲の価値が決まると言っても過言ではない。

 

「自分の存在がバレてもよかった……?」

「そうだねぇ」


 いつもそうだ。エイルは僕が自分で答えにたどり着くのを待っている。ヒントは与えるが、答えは言わない。

 少し上機嫌な様子で歩くエイルは続けて言った。

 

「まだちょっと難しいかぁ」


 落胆した様子ではない。まるで僕の未熟なところを見つけて喜んでいるようだ。


「なんでそんなうれしそうなんだよ」

「ん?なーんも」


 次の瞬間、今度は右後ろで魔力の高まりを感じ、叫ぶ。


「エイル!」


 それと同時に地に伏せ、地面を操って土壁を形成した。直後強い衝撃を感じ、身を小さくして耐える。

 エイルは僕の土壁から顔を出し、攻撃してきた術師がいるであろう方向へ何かを投げた。投げられたものは光の尾を引きながら高速で直進していったかと思うと途中でぐいっと左へ方向を変えた。

 それが見えなくなってから、エイルは立ち上がった。


「うん、よし」


 何やら満足げな表情だ。


「さて、進むよ」


 結局何の魔物なのかわからないままだ。エイルはすでに分かっている様子だけど……。

 

 その後、30分ほど歩いた。進んだ先にあったのは岩壁。すなわち行き止まりだった。


「ちょっと。行き止まりじゃんか」

「いいや」


 エイルは首を振った。見回してみても、壁以外には何もない。

 いったい何がしたくてここまで来たのか。あれ以降襲撃が無いのも気味が悪い。エイルが投擲した”何か”が影響しているのだろうか。

 そのとき、突如として魔力の高まりを感じ、体がこわばった。さっきの襲撃とは比べ物にならない。すさまじい殺意のこもった魔力の波動。

 魔力の主は、前にいた。正確には、岩壁の上。見上げた先に、奴はいた。

 四足獣型の魔物だ。いわゆる、魔獣。

 魔獣は岩壁を飛び降り、僕らの目の前に降り立った。

 でかい。そして、怖い。

 グルルルルと唸るその口から、大粒のよだれが滴った。鋭利な爪に引き裂かれれば、軽傷では済まないだろう。よくて重傷、最悪……。

 ぶるっと体が震えた。

 魔獣狩りをしていた頃は、こんな恐怖を感じたことが無かった。何度けがをしてもエイルに治癒され、戦わされた。自分は死なない、という謎の自信があったように思う。

 なのに今はどうだ。対峙しただけで冷や汗が噴き出してくる。

 エイルが隣にいるという条件は変わらないはずなのに、なぜこんなにも怖い。

 

「……無理だ……」


 今の僕には勝てっこない。ここはエイルに任せよう。


「ふむ」


 エイルは落ち着いていた。自分のあごを撫でながら、魔獣と僕を交互に見る。

 魔獣はすでに腰を低く構えて臨戦態勢だ。

 

「んー……わかった。じゃあ見ていて」


 見ると、いつの間にかエイルの右手には薄氷色の短剣が握られている。

 彼が地面を蹴った瞬間、すさまじい風が僕に襲い掛かった。

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