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Lost19 人形の紐は誰の手に  作者: JHST
第七章 黒幕
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⑤細腕の一撃

 撃ち出す事二つ名の如く、七連撃。だが、その全てがクライルの障壁の前で威力を減衰させ、悉くデルの剣は何もない空間で動きを止められていた。

「マスター、二十枚の障壁を失いました」

「―――だ、そうですよ?」

「くっ!」

 クライルは未だ一歩も動いていない。悔しさと焦りを抑えつつ、デルは一度後ろへと飛ぶ。


 飛び下がるデルの足元からイリーナが低空でクライルに飛び込み、借り物の長剣を両手で握ると、それを背中に張り付けるように反り上げ、大きく振りかぶった。

「せぇぇのぉっ!」

 イリーナが一気に長剣を振り下ろす。自分の身長に近い剣が円に近い弧を描き、クライルの障壁をまとめて粉砕する。余りの衝撃の大きさは空気を振動させ、地面の埃や塵、石片が二人を中心に一気に舞い上がった。


「予想以上の一撃です。障壁を全て破壊されたのは初めてですよ」

 全ての守りを突破されたにも関わらず、イリーナの剣は地面に届いていなかった。

「………う、うそ」

 イリーナが唖然として自分の剣の先を見つめる。

 重装オークを両断出来る彼女の長剣は、魔法使いの細腕の先についている細い手の平に収まっていた。


「イリーナの一撃を素手で受け止めるなんて………」

 フォースィが息を飲む。

 クライルは右膝を上げてイリーナの手首を打ち込み、剣を持つ手を強制的に開かせると、絨毯の上に長剣が落下する。

「エクセル、一番から二番を解放」

「了解です。マスター」

 クライルの声に合わせ、彼の両手の空間が僅かに歪む。

「イリーナ、離れなさい!」

 フォースィが叫び、咄嗟に詠唱に入る。

 イリーナは踵で床を蹴って離れようとするが、既にクライルは彼女の横に追いついていた。


「お願いですから、死なないで下さいね」

 彼女の耳元でそう呟くと、クライルは右手を振り上げてイリーナを床に叩きつける。イリーナは彼の拳が当たる前に何かにぶつかったのか、体を床に押し込まれ、複数のガラスが割れる音と共に体を床に弾ませた。

「子供は軽くてよく浮き上がる」

「ハイプロテクション!」「間にいませんよ」

 フォースィが咄嗟にイリーナに障壁を展開させるが、彼の握られた左手が障壁ごと直線上に撃ち抜く。

 先程と同様に、クライルの左手では高い音と共に空間が砕け、そのままイリーナの横腹に拳が深く沈んだ。

 イリーナはバイオレットが隠されている石柱に背中を叩きつけられ、そのまま力なく落下。呻き声を数度吐くと、ゆっくりと気を失った。


「終わりです」

「馬鹿野郎、まだだ」

 デルがクライルの背後に回っていた。

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