③その先へ
「既に、金竜騎士団まで………」
バイオレットが息を飲む。
団長のイーチャウを中心とした、貴族のみで構成された『色付き』の騎士団である。
デルが一歩前に出た。
「気を付けろ。鼻もちならない貴族だからと油断したら殺されるぞ。ここにいる奴等は、性格こそイーチャウと同類だが、実力が見合った上での貴族だ」
コネや家柄で入ったとしても、実力が伴った上でその地位にいる。決して口だけの存在ではないと彼の表情が険しいまま固定される。
黄金の騎士達が無言で武器を構えた。
「………貴族にしてはもう少し気品溢れる口上を期待していたんだがな」
先頭にいた金竜騎士団の騎士が、白銀の槍を下から上へと無駄なく突き上げる。
だがデルとの間にバイオレットが入り込む。彼女は腰まで上がっていた一撃を左の盾で受け止め、天井へと反らした。
「デル団長は先に行ってください」
「はぁ!?」
彼女の突拍子もない二度目の提案に、デルが声を上げる。
「馬鹿か! 相手は腐っても上位騎士だぞ!? ついこの前まで下位だったお前が、まともな装備もなく戦えるか!」
「ですが守りにだけに集中すれば、私でも時間を稼ぐ事くらいできます!」
バイオレットは率先して自分を危険に晒している。デルは彼女が自分のした行為の清算をしようとしているのだと、その行動を理解する。
だが彼女にとって苦戦は免れない、それどころか、ここを任せれば殺される可能性の方が高い。
それでもデル達が最短で目的を達成するには、彼女の案が一番でもあった。この先何が待っているか分からない以上、立場を逆にする訳にもいかない。
「………階段だ」
力が籠るデルの言葉に、バイオレットは首を傾げた。
「階段の上で戦え。広間よりも狭い分、一度に攻撃される数と範囲を制限できる。何よりも裏に回りこまれないから、有利に立ち回れるはずだ」
高低差から剣で攻撃しづらい短所はあるが、守りに徹するならば、そこは問題でなくなるとデルが師事する。
「後を頼む」
「はい。任されました」
バイオレットは小さく頷いてみせた。
デルは彼女の肩を軽く叩くと、そのまま中央階段を目指した。金竜騎士団の騎士達がデルに顔を向け、その行く手を阻もうと一歩を踏み始める。
だがデルを追いかける彼らの視線の先は、間に割って入るバイオレットの姿があった。
バイオレットは両手の盾をぶつけて大きな音を響かせる。
「ここから先へは行かせません!」




