↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost19 人形の紐は誰の手に  作者: JHST
第四章 彼の戦場
PR
39/77

⑩人形の紐は誰の手に

「面白い展開になったじゃないか。でも、私はどちらにも味方しないよ? 私は個人ではなく、王国騎士団そのものに忠誠を誓っているからね………こいつもいつも通り、どっちにもつかない」

 マイヤーが目を輝かせながら笑みを浮かべ、デルとイーチャウの二人を見つめる。こいつ扱いされた騎士団『翼』の団長も、静かに首を縦に動かしただけだった。


「………バイオレット殿はどう考える?」

 苛立ちを抑えようと、顔に手を当てるイーチャウが、最後の一人を指名する。

 新任でありながら、騎士団『盾』の団長だったタイサを陥れて追放し、かつイーチャウの息のかかった人間である彼女に全てが委ねられた。

 思わず立ち上がっていたデルも、沈黙を続けていた彼女を凝視する。


 バイオレットが手を上げれば全てが終わる。


 そして彼女は無言のまま腕を高く掲げた。


「そう。それでいい」

 イーチャウは額の汗を拭い、大きく息を吐いて勝者の顔に戻った。

 

 力が及ばなかった。

 自分の中にある正義は、世の中を穿つ雫の一滴には至らなかった。デルは無念の中、静かに視線を落とし、テーブルの下で拳を握り締める。 

 最大の脅威が諦めた姿を見たイーチャウは安堵し、敗者から視線を外した。

「では、デル殿の弾劾発議は不成立に。王女殿下への責任追及は過半数で通過する事に―――」


「待ってください」


 イーチャウの言葉が再度遮られる。

 言葉を放ったのは他でもない、手を上げたままのバイオレットだった。


「………何かな、バイオレット殿」

 早く決議を取りたかっただけに、イーチャウは明らかに不愉快な表情になる。

「私が手を上げたのは、王女殿下への責任追及に賛成する為ではありません」

 そしてバイオレットはデルの顔を見た。

「………私はデル団長の弾劾決議に賛同を示します」

「バイオレット! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 思わずイーチャウが我を忘れて立ち上がり、彼女を指さして激しく声を上げていた。


「バイオレット………君は一体」

 突然の福音にデルは目を大きくして驚き、彼女を見つめる。

 彼女は姿勢を崩さずに淡々と、しかし力強く声を張り上げた。

「茶番はもう沢山です。王女殿下やタイサ団長………いえ、隊長だけでなく、正しくあろうと意思を貫く人達を偽り、騙す事には、これ以上耐えられません」

 バイオレットは座ったままイーチャウを睨みつけた。

「我が家に対しての個人的なご厚意には感謝致しますが、私は隊長からお預りした騎士団『盾』の団長として、その責務を果たさせていただきます」

 バイオレットの言葉に、イーチャウは息を吸うように何度も声にならない高い音を上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。