②真実を知る者達
「ギュード………こいつぁ、一大事という表現でも済まないと感じるのは、俺の思い過ごしだと思うか?」
「いや、その感性は正しいと思うね」
窓際の壁に寄りかかっていたギュードは、組んだ手を左右に開いた。
「下手をすれば、王国は滅ぶかもな」
ギュードもオーナーも、彼らの話を信じた。信じるに足る情報を二人は既に持っていた。それは、タイサがアリアスの街で魔王軍と名乗る蛮族達と戦っていた情報であり、それが彼らの言葉によって裏付けされたのだ。
「戦争………か」
ギュードはクライルの言葉を思い出すように呟いた。
その小さな声にオーナーが首を傾げる。何でもない。ギュードが手を振って誤魔化すと、彼はゆったりとオーナーの傍まで近付く。
「オーナー。あんたの権限でどこまで冒険者や他のギルドに声をかけられる?」
「権限って………ギュード、お前………何を考えている?」
ギュードは冒険者達にも聞いてもらう大きさで、今後起きうる事を予想し始めた。
「万が一、東部方面に向かった王国騎士団が負けた場合、王国にはまとまった戦力が一時的にしろ、なくなっちまう。そうなれば、蛮族を抑えられるのは俺達冒険者ギルドしかいない、そうだろう? その準備って訳さ」
そんな未来に、オーナーは馬鹿なと口を開けたが、声に出す前に思考が完結し、冷や汗を流し始めながら口の大きさを元に戻す。
「………難しいな。お前から聞いたアリアスの一件でさえ、王国騎士団から箝口令をアリアスの住民やギルドにかけてきやがった。王国がこの事実を知って、公表するまでは殆ど動けねぇぞ」
アリアスの街が蛮族達によって襲われた事は、王国騎士団が事実を認めつつも、重要な部分は隠されたまま公表されていた。
曰く、王国騎士団から巡回警備を命じられて派遣された騎士達が、アリアスの街周辺で増加した蛮族達の襲撃を懸念し、住民達を街から避難させる決定を下した。本来であれば、他方に援軍を要請すべき所を、現場の騎士が自分達だけで解決しようと判断を誤り、新任の騎士だけでなく結果として住民や街に少なからず被害を出してしたというのが、公表された事実である。
この事に王国騎士団は現場の指揮官に瑕疵があるとして事情を調査、裁判を通じて現場の騎士達を法の名において処分したと発表している。
さらに、王国騎士団はアリアスの住民達が既に街に戻って復旧作業に取り掛かっている事、王国が街の復興に全面的な協力をする事を付け加えている。その上で、国民には蛮族相手に住民達を避難させたという情報に関して必要以上に恐れず、またそれを流布し、市井を混乱させる行為について禁ずる旨を発している。




