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1.旭高ゲーム部

キーンコーンカーンコーン

授業開始のベルが鳴る。

今日も気だるい一日の始まりだ。


ただ、無色透明でキンキンと耳奥にかすめ消える街中で遭遇した、


たった一つのアクシデント〈僥倖〉を除いては。

そう、登校中に目にした

【Happy Monster発売開始!】の張り紙だ。


日々の喧騒に紛れて、

オレはこんな大切な日を忘れていた。

今日はオレの『大嫌いな』あのゲームの発売日だ。


ハッピーモンスターとは、ストーリーを進めモンスターを育成して戦わせたり、

着せ替えなどで美醜を競わせたりする

ゲームなのだが、


へそ曲がりなオレは、

普通なら嫌う人はまずいないであろうこのゲームを、

みんなの人気者のゲームというだけで、

否定し叩きたくなる。


我ながら、なんと性格の悪いことだろうか。


今日は(いつもだが、特に今日はという意味で)授業なんかよりもゲームのことが気になって仕方が無い。


今日は部活も休んですぐに帰って、早くゲームをプレイし、酷評してやろう。

そのことばかりが頭の中を駆け巡っていた。


授業は正直もうどうでもよかった 早く家へ帰りゲームの起動をしてみたい気持ちで

一杯だった。もちろん授業は聞かずに黒板を眺めているだけで、


ノートには落書きで、頭は加虐心で埋め尽くされていた。

「おい、西田!また落書きかお前」

先生の声など耳に入らない程に期待感に満ちていた。


『は、はい!』

『ちょうどいい、187p4行目で、【私はひどく高揚していた。】とあるが、なぜか。答えてくれ』

『え、あ、はい。それは…』


昼休み、友人の健太とゲームの話をする。


『マジww?相変わらず裏では性格わりーな(笑)普段は優等生のくせによ』


『ふん、まあね。この性格が親にでもばれたら、凶悪犯罪者予備軍とかグレたとか大騒ぎだろうぜ』


オレのへそ曲がりな加害欲求は、両親が教師で、

常に品行方正たれという家庭環境によるものが大きい。と自己分析している。


小さいころからいい子いい子で監視されて育てられりゃ、誰だってグレたくもなる。

オレにとってのグレるが、ハピモンをネットで叩くことなのだ。


『わ、わ、聡介くんもハピモン、してるの?』


聡介とは俺の名で、話しかけてきたこいつはたしか、、、

立花だったかな?無口な陰キャだから

記憶に残らない。


『まあね、立花さんも好きなの?』

『わ、わたしだけじゃないよ、

ゲーム部の皆も大好き。。。』


『ハピモン好きなら、ゲーム部に来なよ!』


普段の影の薄い姿からは想像もできんないような

大胆な勧誘にビックリする。


『え、いや俺は陸上部に、、、』

『ダメ、、、ですか?』


泣きそうになっている彼女を前に良心と、健太の目線が痛くなる。


『わ、わかった!今日は部活休む予定だったし、

覗きに行くよ!』


『本当ですか!ありがとうございます!』

ぺこぺこと頭を下げているが、

ついには周囲の注目の的になってしまった。


『なになに、告白~?』

クラスの女子たちが遠巻きにうわさ話をしている。

『ち、ちげーよ!』

クスクスと立花も笑う。


『じゃあHRの終わる15:30に迎えに来ますね』

にっこりと笑い去って行く。

『シメシメ上手くいったぞ~』


裏で暗躍するのは立花含めた

ゲーム部の人たちだった。

『純粋無垢な立花さんならイケると思ってたんだ~。西田くん、間違いなくあの『アンチ・ハピラー神よ』


語るのは部長の根岸。ネット掲示板で圧倒的知識と

実力を誇るハピモンアンチ


『アンチ・ハピラー神』が西田聡介だと見抜いていたのだ。


『彼を捕まえて、宝山地区のハピモン大会で優勝するわよ!』『おー!』


小声で一致団結するゲーム部の面々だった。


『ゲーム部か、、』


こんな自分を誘いに来てくれるなんて

少しうれしかった。

素直になってみようと思う反面、

アンチ活動が趣味なんて知れたら一体どうなるんだ!オレ!と焦っていた。


せっかく(地味子とは言え)女の子に誘われたんだぞ!カッコいいとこ魅せれねーじゃん!


嘆いてはみせるが、内心はパチパチとはじける

ポップコーンのように軽快なものだった。

日々のつまらない景色から一風変わった、

バレないようにの駆け引きの世界へ!ビバ苦境!


聡介の変わった性格が功を奏して、

イヤイヤ部室に行くどころかノリノリで

放課後を待っていた。


その時が来て立花が迎えに来ると

彼女は妙にソワソワしていた。


まさか本当に告白されるのでは?と不安になるが、

その心配は杞憂だったようで、

すぐにゲーム部の部室へ連れていかれた。


『ようこそ!ゲーム部へ!』

部長の根岸さんだ。立花さんが続ける。


『あ、あの!わ、私……ハピモン大好きで……

でも、そんなに強くなくて。。。』


『勝つだけがハピモンじゃないさ、

ハピモン・コレクション。略してハピコレもあるし』


ハピコレとは、お気に入りのハピモンに

コスプレのような多種多様な衣装


(ゲーム内で作成する)を着せて

、審査員にジャッジしてもらうゲームだ。


オンラインなら同世代の女の子に

ジャッジしてもらえるので、


上位層がひしめくとは言え楽しむ分には

問題ないはず。


『い、いえ、、その、、SSランクまではいけるんですけど、SSSランクが難しくて。。。』


え、そんな高度な話なの?てっきり

Cランクくらいでマッタリ楽しみたいのか

と思ってたのに、


最高ランクのSSS。

マジか―そっち系の人でしたか。


ここまでくると審査員との相性も絡んで

運の要素が出てくる。


オレだって毎回は取れないぞ・・・


虚を突かれたような表情をして一瞬固まるが、持ち前の実技でやってみようか。


早速手持ちを見る、ひとしきりの重要装備は揃ってるみたいだな・・・


ハピコレは主に女性が利用することから、(ハピモンを完膚なきまでに叩くために)


磨き上げた技能としても女性向けだっては無視できない。必要な知識は揃っていた。


『ひとまずはこれで行ってみるよ』『おおー』さすが西田くんね、ハズさない。

やはり将来有望といった感じかしら。根岸がほめそやす。


『いやーそんなことないっすよー』明らかに頬が緩んでいることに気付いていないのは

聡介ただ一人だけだった。


ぐふふ、まさかオレのアンチ活動で(違う)こんなに褒められる日が来るとは、、、

部長の根岸さんも弓道部系の清楚な感じだしサイコー。


聡介のその惚け切ったスタイルにドン引きするのを隠しもしないゲーム部の面々だった。


いやそんなことより実践だ、結果は、、?『SSSランクおめでとう!?』よしキタ!

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