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10:特級呪物召喚盗難事件

境界警察局が対応する異世界召喚案件は、何も人物だけが対称というわけではない。

種類問わず、様々な『物品』も対称である。

過去、「危機を回避するために異世界から伝説級の武具を」という名目で様々な物品も召喚によって盗難されてきた事例が多く、中には国宝級の品々も奪われたことがあった。その度に境界警察局の介入によって奪還してきているのだ。とはいえ物によっては些細すぎて通報されない場合も多く、実際の盗難件数は通報件数よりもかなり多いであろうと言われている。



今回、雄二とメリスとエルメナの3人が通報を受けて駆けつけたのは某県山間部の小さな村。そのさらに奥地にある神社から、であった。

過疎地の村ということもあって神主が一人で運営してきていたこの神社には、戦国時代に1本の『刀』が奉納され、それを代々受け継ぎ祀り上げ続けてきたという。

その刀は無銘ではあるものの、制作者である刀工の名が『村正』であるというのが問題だった。そう、数ある「妖刀村正」のうちの一振りであり、この刀もまた特級呪物に値する妖刀であった。ゆえに神社で祀り上げることによって呪詛を鎮めてきたのだが…。


「わざわざ遠方まで、ご苦労さまです。」

神主の老人が雄二達に礼を述べる。

「こちらこそ通報ありがとうございます。早速ですが…。」

雄二が礼を言い、事情聴取を始める。

「えぇ、この神社で奉り続けておりました刀が、見たこともない光に包まれて消えてしまいまして…。」

神主曰く、いつものように神事を始めようと刀のもとへ向かったところ、刀の下に突如眩く光る円陣が現れ、そこに吸い込まれるように刀が台座ごと消えてしまったというのだ。

地元の伝承に詳しい者などに現場を見てもらったものの、何もわからなかったらしい。

「それで我々に通報したと…。」

話を聞いた雄二が確認すると神主は頷く。

「……刀が消えた場所に何か残っているかもしれません。念のため見てみましょう。」

雄二達は、周囲を注意深く見回しながら現場へ歩み寄る。

刀が消えた場所、つまり祭壇を目視確認するが遠目からでは特に何もわからなかった。

そのため境界警察局の専用分析機器を使って分析をすることになった。

場所が神社ということもあり、事前に儀式を行って許可を得てから機器の設置が開始された。

エルメナの指示の元、メリスが茨の蔓で複数のコンピュータ機器やケーブルなどを運搬して配置し、雄二が組み立ててゆく。そしてエルメナが機器を起動し、祭壇とその周囲を分析し始める。

「さ〜てさてさて…今回はどんな世界が狙ったんでしょうかねぇ〜?」

メガネを光らせニヤつきながらエルメナは分析を進めてゆく。その中でメインツールである『ポータルレンズ』を起動する。バラバラのフレームが宙に浮いて次々組み上がっていき、やがて大きな円の形を形成する。その円こそがポータルレンズの本体であり、やがて円の内側の空間が水の波紋のように歪み始める。

「おおぉ…。」

神主がポータルレンズを見て感嘆の声を上げる。

「メリス〜、雄二〜、祭壇周辺の痕跡はどうですぅ〜?」

画面を見続けながらエルメナが指示を出す。

雄二とメリスは痕跡を調べるため祭壇に近づいた。

「…若干ですが、床に陣の跡と思しき焦げ跡がありますね。」

メリスが痕跡を発見し報告。それを耳聡く聞きつけたエルメナが機器を操作。ポータルレンズの向きを変えてメリスの発見した焦げ跡を分析する。

「はいはいこれですね〜…ふむふむなるほど………」

焦げ跡を分析してゆく毎にポータルレンズのフレームが規則的に光り輝き、レンズ内側の空間の歪みも鳴動する。

「よくあることではありますけど、また未確認の異世界ですねぇ。ですが術式パターンはよくある召喚術式、それも物品をターゲットにした引き込み式の術式ですねぇ。これなら特定は楽勝ですよ。」

フフンと鼻で笑いながらエルメナはポータルレンズの操作を続ける。レンズ内側の歪みが更に激しく動き、やがてうっすらと何かが映り込み始めた。

「これは…?」

「一体どうなってるんだ…?」

メリスと雄二がその光景を見て顔をしかめる。


映り込んだその光景。

そこはどこかの神殿と思しき厳かな建物内のようなのだが、おびただしい量の血で赤く染められていたのだ。ポータルレンズを動かして周囲に視線を向けてみると、魔術師や神官と思しき服装の男女が数名、血の海に沈んでいた。

「ここが召喚先、ですけど…。」

エルメナが眉間にシワを寄せながら言う。

「ひどい…。」

「なんでまたこんなことに…?」

その光景を見てメリスと雄二はショックを受ける。

しかし神主がその光景を見て、

「おぉ……、なんということだ……なんということを……」

と呟いていた。

それを聞き取ったエルメナが質問する。

「神主さん、なにかご存知で?」

その質問に神主は沈痛な表情になりながら答える。

「境界警察局の皆さん、ここに祀られていた刀が『村正』のうちの一振りであるというのはもうご存知ですね?」

「えぇ、通報時の話で一応…。」

まだなにかあるのか?と訝しみながら雄二は答える。そして神主は続けた。

「ここに祀られていた『村正』は、戦国の当時この辺りを統治していた小さな武家で使われていた無銘の一振りだったと伝えられています。しかし敵軍に包囲されて兵糧攻めにあい、飢えに屈した一人の家臣がこの刀を手に民や同輩、女子供も区別なく斬り殺して血肉を喰らい生き延びたのだそうです。やがて城が陥落し敵軍が突入した頃にはその家臣だった男は自身の主すら斬り殺し喰らっていて、その姿はもはや鬼そのものだったと…。」

「鬼…ですか…。」

アンデッドであるメリスは複雑な表情になる。

「その後その家臣は敵軍に討ち取られたとのことですが、その時敵側も多くの犠牲を払ったと…そうして回収された刀が当時まだ大きな神社だったここに鎮魂のために奉納された、ということです…。」

想像以上に悲惨な逸話を聞くこととなった一同。

聞き終えたメリスが発言する。

「その時に多くの血を啜り、鬼となった男の怨念がこもっているのか…はたまた斬り殺された犠牲者の怨念が刀に大量にこもったのか、あるいは兵糧攻めで城に満ち満ちていた『飢餓感』が刀に染み付いたのか…。」

その意見に神主が驚く。

「流石でございます…どれが真実かは今となってはわかりませんが、その刀が呪物であることは私も神主として努めてひしひしと感じていました。その刀がまさかこんな形で盗まれるとは…。」

「神主……さん……。」

落ち込む神主にかける言葉が見つからない一同。

ややあってエルメナが言う。

「まぁ、この刀が呪物だというのはもうわかってるんですし……とにかくこの刀を何とか奪還しましょう。」

そう言ってポータルレンズを操作し、レンズを固定状態にした。

「さて、これで突入準備は整いました。さ〜雄二〜!スーツの装着ですよ〜!」



メリスと雄二は一旦大型車両に戻り、パワードスーツ「イージスMark=Ⅱ」装着を開始する。

首元から手首足首までを覆うほどのピッタリ張り付くインナースーツに着替えた雄二が車両内の装着用ポジションに立つ。

次にメリスが茨の蔓を伸ばし、そこから滴る『メリスの血』で雄二のインナースーツに呪文を書き込んでゆく。呪文は複数の茨で効率よく書かれてゆく。

書き終わったあと、メリスの操作で周囲の機器が動き出し、パワードスーツ本体が雄二の体に装着されてゆく。まるで複数のパーツを圧着させるかのように。

足、胴、腕とスーツが装着されたあと、右手にアームキャノンが装着。続いて装着済みの胴の中央にエネルギーリアクターが組み込まれる。最後にヘルメットが装着され、バイザーがギラリと光り出した。

「装着、完了。」

その後、専用ケースに格納されていたD(ディメンショナル)バンカーが引き出される。バンカー本体にはアームキャノンがちょうどぴったりはまる差込口があり、雄二はそこにアームキャノンを差し込んでDバンカーを起動する。

そうして準備完了した雄二が境界警察局用大型車両のリヤゲートを開け、外へと降り立つのだ。



「それじゃあお願いしますよ〜!」

ポータルレンズを固定中のエルメナが雄二に指示。

「任せろ。」

答えた雄二がポータルレンズで発生している空間の歪みにDバンカーを構える。

ビームをチャージするのと同じ要領でエネルギーを溜め、Dバンカーに放出。これでDバンカーの芯が空間の歪みに勢いよく打ち込まれる。轟音とともに空間にひび割れが発生。続けてチャージし芯を再度打ち込み、ヒビをさらに広げる。

そして三度目のバンカー打ち込みで…



ガシャーーーーーーーーーン!!



空間が砕かれ、異世界へと門が繋がった。

即座にエルメナが機器を操作し、割れた空間をポータルレンズのフレームに固定化させる。そうすることで門を固定し、双方向から通れるようにするのだ。

「よし、突入するぞ!」

雄二はDバンカーからアームキャノンを抜き、門へ突入した。

「はい!エル、神主さんをお願いしますよ!」

続けてメリスも門へと突入していった。

「はいは〜い、任せてくださいな〜!」

エルメナはそう言って二人を見送るのであった。








血の海となった神殿の中に降り立った雄二とメリス。

即座に雄二とメリスは周囲を警戒するも、人の気配はなかった。

「静かですね……。」

メリスが呟く。神殿内はほとんど血に染まっており、床には血が染み渡っていた。

その死体や血をヘルメットバイザーで調べる雄二。

「………まだ血が新しい。死体も腐敗が進んでない。」

「まだ殺されて間もない、ということですね?」

「だな。恐らく地球側では時間が経過しててもこちらではまだ時間経過が少ないパターンの可能性が高いな。」

「だとすれば、まだ刀は近くに……!?」


床の血の跡のお陰で、刀を振るったと思しき下手人の足取りは簡単に掴めた。その後を辿って雄二とメリスは走った。


やがて正門と思しき大扉にたどり着いた。既に開け放たれていた扉を通ると、その先にも血の海が広がっていた。

「これはひどい。」

「早く止めないと…!」

顔をしかめる雄二とメリス。


周囲をスキャンしつつ、血の海の中を慎重に歩を進める二人。

どの死体も鋭利な刃物で幾重にも両断されており、盗難された妖刀で斬られていることを容易に想像させる。

死体は主に神殿関係者と思しき者達ばかりで、次いで兵士が多い。


「…ゴボッ…」


一瞬、死体の中から声が聞こえた。

即座に雄二とメリスは構える。

「生存者か!?」

雄二は声の元へと駆け寄った。

そこにいたのは、兵士と思われる鎧姿の若い男だった。脇腹を何か鋭いものに抉られた様子で、まだ息があるのはどうやらその男のみのようだ。

「おい!大丈夫か!?」

血にまみれた若い男の肩を叩く雄二。すると、男は小さく口を開いて呟いた。

「勇者様………どう……して………」

その言葉を最期に、男は絶命した。

この言葉を聞き、メリスは顔をまたしかめた。

「これは、大まかなシナリオが見えてしまったかもしれませんね…。」

「奇遇だな、俺もだ。」


恐らく、勇者に与えるべき最高の武器を異界より呼び出さんとして神殿で召喚の儀式を行ったのだろう。それで呼び出されてしまったのがあの妖刀。そして妖刀を手にしてしまった結果勇者が取り憑かれてしまい、暴れ出した…といったところだろう。


恐らく召喚に携わった神官やその他の関係者の誰も、こうなることを予想してなかったのだろう。だからこそこのような惨劇が起きてしまったに違いない。

「全く……不徳もいいところだな……。」

雄二は吐き捨てるように言ってからメリスに指示する。

「……行くぞ!」

それを聞いたメリスは無言で頷き、一緒に走り出した。


神殿の敷地を抜けた先。最悪なことにそこは市街地であった。

市街地に出たところで、散発的に悲鳴が聞こえ始めた。

「近いな……急ぐぞ!」

雄二はそう言って走り出した。メリスもまた頷き、それに続く。

駆ける二人。街中の至る所で建物が切り倒されてゆくのが目に入る。その断面はあの妖刀を用いたということが容易にわかるほど滑らかであった。

そして、二人の前に勇者と思わしき人影が見えた、のだが……


「フー………フー………!!」

立派で豪奢な鎧に身を包んだ女の勇者。本当ならそのブラウンカラーの長髪が美しくたなびくはずだったのだろうが、その髪も、鎧も、顔も…血で真っ赤に染まっていた。本当なら誰もが振り向くであろう美しい顔も、まさに『般若が取り憑いた』とでも言うべき形相になってしまっていた。そして右手に、あの妖刀が握り締められていた。

「あれが……勇者なんですか……?」

メリスは驚愕する。

「最悪なパターンがドンピシャだったな……。」

雄二も呆れながら応えた。

「ハラァ………ヘッタァ………モットクイテェ………!」

目の前の女の勇者は、血にまみれながらそう呟く。

そして妖刀の柄を握る手にも力が入る。

それを見たメリスは『何か』を察して思わず叫んだ。

「雄二!」


咄嗟に雄二はビームチャージした状態のアームキャノンを思いっきり上に振り上げた。

そうした事によって、いつの間にか踏み込んできていた勇者による妖刀の一閃をタイミングよく弾き返すことに成功したのだ。


「すまないメリス、助かった!」

パワードスーツの中でドッと冷や汗をかいた雄二がメリスに礼を言う。

「いえ、こちらこそありがとうございます。」

それに対してメリスは雄二に礼を言った。

雄二のビームチャージによる防御がなければ、今頃メリス諸共あの妖刀によって斬られていたに違いないからだ。

そんなやりとりをしている二人に対し、勇者は再度斬りかかろうと間合いをじりじりと詰めて来ていた。そして二人の意識が自分から逸れたのを瞬時に悟り、即座に攻撃に転じた。それもまた絶妙なタイミングで。

一気に間合いを詰めつつ妖刀を左から右へ一閃させる。雄二はもう一度チャージビームのエネルギーを使って斬撃を防御する。

『ガキィィイン』という激しい金属音が響き、再度二人の距離が開いた。同時にチャージしていたビームエネルギーも防御で消費してしまい霧散してしまう。

「大丈夫ですか雄二!?」

メリスは雄二の身を案ずる。ビームチャージ中はどうしても隙が出来てしまう為、奴にとって格好の攻撃チャンスになってしまうからだろう。

「大丈夫だ、問題ない!」

雄二はそう返答した。そしてもう一度チャージを開始する。

そんな二人のやり取りを見て、女の勇者がまた呟いた。

「……フタツデ……フタツデ……イイナァ……!」

そして妖刀を二人に向けて構え直した。

そんな相手に対してメリスも身構える。

「あいにく、この世界やあなた方の事情など知りませんが…あなたの手にしている妖刀は我々境界警察局が奪還します!」

力強い語気とともにそう宣言したメリスを見て、雄二が口を開いた。

「メリス!俺が奴の隙を作る!お前が刀を奪え!!」

「わかりました!」

すぐさま了承して身構えるメリス。

そんな二人を見つつ、女は妖刀を小刻みに震わせつつ、刃から滴る血を払い落とす。

「ハラヘッタナァ……チョウダイ!フタツ……チョウダイ!!」

そう言って女勇者は雄二達に突進する。

その鋭く重い袈裟斬りを雄二は両腕を交差させガードする。ビームチャージのエネルギーが防御に回されて霧散し、それでも足りずにパワードスーツ本体のシールド用エネルギーが一気に消費される。それでも何とか攻撃をいなした雄二は、すぐにビームチャージを再開した。

「……ちぃ!!」

再び隙を作ろうと構えるも……

「ウダァァァァァ!!!!」

勇者が妖刀を構えながら咆哮した。そのまま雄二に再び斬りかかってゆく女の勇者。

だがもうチャージを完了している雄二。すかさず女勇者に向けて、フルチャージの『ショックビーム』を発射した。

バヂバヂバチバヂ!!

「ガアアアアアアアア!!!!!」

発射された電磁エネルギービームが女勇者にヒット。一応妖刀で防御しようとしたようだが、結局金属製である刀が電磁エネルギーを防げるわけもなく、直撃した女勇者は全身を痺れさせながら後方に数メートル吹き飛ばされた。

「メリス!」

隙を作った雄二がメリスに合図する。

「はい!」

この機を逃さず、メリスは女勇者に向かって駆け出した。メリスが突っ込んで来たのを見た女勇者は、痺れる体を無理やり起こして妖刀を構えた。

「ハラ……ヘッタ……クッテヤルゥウ!」

そう叫びながら刀を水平に振るおうとする。しかし痺れで剣閃は大幅に鈍っている。それを躱せないほどのメリスではない。刀は空しく振りぬかれた。メリスは女勇者の懐に潜り込んでいた。

「ここまでです!」

メリスが叫んで妖刀を握っていた女の勇者の右腕を掴んだ。そしてそのままねじり上げ、妖刀を奪い取ろうとする。

しかし…。

「なっ!?こ、これは…!?」


女勇者の右手は、妖刀の柄と完全にくっついてしまっていたのだ。

まるで融合しているかのように。


「まさかこれも妖刀の…!?」

驚愕し、一瞬隙が生まれてしまったメリス。

「クワ……セ……ロォオ!!」

そんなメリスに、痺れから解放された勇者が空いた左腕を振りかぶっていた。

ドガッ!!

メリスの右こめかみから血が流れる。

女勇者の握り締められた左拳が的確にメリスの側頭部を殴り飛ばしたのだ。

「メリス!!」

叫ぶ雄二。だが既にメリスは声も出せず、痛みで意識が飛びそうになってしまう。

そして続けざまに女勇者が妖刀を振るう。

その斬撃は、今度は彼女の胴を斬り裂いた。

「かはっ!!」

斬撃はメリスの胴体を袈裟斬りにした。鮮血が吹き出す。

「ギャハ……グッハハハァアア!!」

それを見て狂喜し笑う女勇者。彼女の意識は既に人間のそれからはずれてしまっているようだった。目の前の女を獲物としか見ていない、悍しい存在となっていたのだ。

そしてそのまま、止めを刺そうと妖刀を振り上げる。


「やめ……ろっ!!」


なんとか右腕のショックビーム発射は間に合った。チャージしたエネルギーを一気に使って、雄二は再度『ショックビーム』を女勇者に向けて放った。

バヂン!! そんな音と共に、女勇者の全身が再び痺れたように硬直した。そしてそのまま女勇者は地面に倒れ伏す。

「……!?」

倒れつつ、信じられないといった表情で自分の体に視線を向ける女勇者。

全身に力を入れようするが、全く力が入らない。

「メリスっ!!!」

体を斬り裂かれたメリスの下へ雄二は駆け寄る。

だがメリスは、倒れ伏してはいなかった。斬り裂かれた体の傷口から大量の茨が生え、倒れようとしていたメリスの体を無数の茨が支えて繋ぎ止めていたのだ。

「いたたたた………すみません雄二…。」

申し訳ない顔をしながら謝罪するメリス。その間も茨がメリスの斬り裂かれた体を縫い合わせてゆく。

「心配させやがって…!」

茨で支えられていたメリスを雄二が抱きかかえる。

「油断しました……。まさか刀が直に手に癒着してただなんて…もっと気をつけるべきでした……。」

そう反省するメリスに、雄二は言葉を投げかける。

「いや、よくやったさメリス。お前が隙を作らなければ、やられていたのは俺達だった。」

雄二はそう言ってメリスを励ました。その言葉に照れたような顔をするメリス。

そしてすぐに表情を引き締めてメリスは続けた。

「雄二、あなたはあの妖刀には絶対触れないでください。彼女と同様に取り憑かれて寄生されてしまいます。」

「…わかった。」

メリスの様子に思わず頷く雄二。

そして体を縫い終えたメリスが倒れ伏す女勇者のもとに歩み寄る。

そして、右手とくっついたままの妖刀『村正』に無数の茨を巻き付け始めた。

「ガアアアアアアアア!!!!!」

刀が縛られ、抵抗しだす女勇者。しかしまだショックビームの効果で痺れてうまく動けない。

やがて妖刀が大量の茨で完全に包まれた。その様はまるで大きな繭のようだ。これで呪いごと刀を封じ込めるのだ。

次にメリスは、懐から一丁の拳銃を抜く。

「珍しいなメリス、それを使うのか。」

その様子を見て雄二が呟く。メリスも答える。

「今、茨の力を封じ込めに割いてますからね…。」

そう言ってメリスは拳銃を構える。

女勇者の、右腕を狙って。


「申し訳ありませんが、妖刀奪還のためです。どうかご了承を。」


メリスは、愛銃である「コルト・デルタエリート・アダマンタイトビルド『シェード』」の引き金を引いた。

撃ち出された強装弾が女勇者の右腕を破壊し、刀と癒着した右手を完全に切り離したのだった。






あれから、数週間が経過した。

奪還された刀はメリスの茨の一部を巻き付けた状態で再封印することで無事に神社に再奉納された。神主により現在も厳重に管理されている。

門は境界門管理所に移設され、境界警察局介入のもと異世界側で事後処理が行われた。特に妖刀に取り憑かれ暴走した挙げ句多くの人々を殺め、右腕を失うこととなった女勇者の処遇で異世界側でかなり揉めてしまうこととなった。肝心の召喚容疑者は暴走した女勇者によって既に斬り殺されていたため被疑者死亡で書類送検となった。


そして雄二とメリスは臨時で休暇を言い渡されていた。

茨で縫い合わせたとはいえメリスは体を斬られて重傷。

その回復のため雄二が付きっきりにならなければならない。

またパワードスーツも妖刀の攻撃でかなり消耗したのでエルメナがメンテナンスにかかりきりとなる。

ということでエルメナは工房に籠もり切りとなってしまい、雄二とメリスも自室で療養となった。


「なぁ、メリス。」

治療のためにお互い裸で抱き合ってベッドに横になっている雄二とメリス。

腕の中にいるメリスに雄二は問うた。

「…なんですか?」

雄二から生命エネルギーを吸収し傷を癒やしているメリスが返事をする。

「…お前、茨を通じてあの刀から何か感じたんじゃないのか?」

その問いに、メリスは少し暗い顔になりながら答えた。

「感じました……とても大きな怨念を。それも、ただ恨んだり憎んだりする類の憎悪ではなく……。飢えが…どこまでも底が見えない、決して満たされることのない飢餓感が感じられました。」

そう言って暗い表情のままメリスは続けた。

「飢餓に囚われた者はどこまでも貪欲に他者を喰らい続けます。たとえそれを喰らったとしても満たされることのない空腹感に苛まれます。」

まるでその心の飢えと渇望を知っているかのように言うメリス。

「メリス……。」

そんな彼女を、雄二は抱きしめた。

「……雄二……。ありがとう。」

そう言ってメリスも雄二を抱き返す。二人はそのまま眠りについた。





あれからさらに数日後、例の神社に再び訪れた境界警察局の3人。

今この神社には、新しく巫女として一人の女性が就任している。

その女性こそ、あの妖刀に取り憑かれた『元』女勇者である。

あのあと、元いた世界では妖刀に取り憑かれたとはいえ多くの人々を殺めてしまったうえ右腕を失ってしまったことから勇者として戦うことも出来なくなってしまったと見なされた事、そして異世界との門が繋がってしまっていたことが重なった結果、元いた世界側の国の判決で流刑となり、その流刑地として異世界である地球世界が指定されたのだ。そしてこの世界は情報だけ登録した後に閉門となり、交流は行わないことで決着となった。

そうしてこの地球に流刑となった女勇者は、名前を捨ててこの神社に巫女として受け入れられたというわけである。

「ようこそいらっしゃいました。」

神主が応対する。

「ありがとうございます。」

「あれからいかがですか?」

雄二とメリスが神主に聞く。

「えぇ、彼女なら頑張ってますよ。最初は思い詰めてたりもしましたが今は穏やかなものです。」

そう言って神主は視線を移す。

女勇者は今、巫女服姿で境内を掃除しているところであった。失った右腕には地球製の義手がつけられており、箒を持つ左手を補佐している。義手の質はお世辞にも良いものとは言えないが、これは彼女本人がそう望んだものだそうだ。


掃除を終えた元女勇者、もとい巫女が雄二とメリスのもとにやってくる。

あの時の取り憑かれた般若の形相はもう面影もない。とても穏やかな表情の美しい巫女であった。

「あの、境界警察局様…この度は私を呪縛から開放してくださり、ありがとうございました。そして…呪縛に囚われていたとはいえあなた方を傷つけてしまい、本当に申し訳ありませんでした。」

そう言って深々と頭を下げる巫女。

「いえ、こちらこそ同意なしに腕を千切ってしまいましたし…。」

メリスは恐縮する。

「この腕は私の罪の証です。どうかお気になさらず。」

巫女は右腕の義手を撫でながら続ける。

「そして、私はあの呪いの剣に触れたことによってその怨念を知りました。その怨念をこうして鎮め続けることが、私の償いだと思っております。」

巫女はそう言って刀が祀られている祭壇を見やる。

刀はあの時のような禍々しさはなく、切り分けられたメリスの茨を巻かれた状態で静かに佇んでいた。

「そうですか。何かありましたら遠慮なく我々に相談してくださいね。」

メリスは巫女に優しく言う。

巫女はその言葉に儚げな笑顔で返した。


「はい、ありがとうございます。」

本小説は、2割ほどをAIツール「AIのべりすと」様に手助けしてもらいながら作成しております。




https://ai-novel.com/index.php




勢いで描いたようなものですが、もし興味ありましたらブクマしてくれると意欲が沸きますのでよろしくお願いします。

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