第90話 強奪
「あと話ができそうなのはお前だけです。 二人みたく戦闘不能にされたくなかったら質問に答えるです」
フエンの質問内容は、いかにして現在の肉体能力を得たのか。
問いに拒絶を示したゴレグとマリビは、容赦なく行動不能の憂き目に遭った。 彼らの獲得した肉体強度を以てしても、カチュアの雷魔法には叶わなかったわけだ。 フエンの危険性についても彼らは十分に理解しているため、こう高圧的に出られては動くことができない。
「あー……お前らスマン。 俺は痛いのは嫌なんで従順になるぜ」
ファバイには、痺れに苦しむ二人からの怨嗟の視線が寄せられた。 しかし彼らは仲良しこよしの集団ではないため、ファバイは簡単に裏切った。
「お前、怪しいのです」
「おいおい、勘弁してくれ。 その女の攻撃を回避できない時点で、逃げ出すメリットはねぇっての。 どうせ撃ち落とされるのがオチだ」
「なら、さっさと説明するです。 お前たちがどうして魔法使いに勝てると思ってたかを。 話したらコキ使ってやるです」
「解放じゃねぇのかよ。 やってらんねーな」
「黙るです。 弱者に選択肢なんて無いです」
「あーあー、分かったよ……」
そうしてファバイは経緯を語る。 とあるタイミング──化け物が湧き始めたあたりから、全身に漲る何かを感じたことを。
フエンとカチュアは現場に居なかった。 そのため、得られた情報だけで目的の結果を組み立てることは不可能だった。
「よく分からんですけど、仮初の力を全力で信頼できるお前たちの頭の弱さは理解したです」
「ひっでぇなぁ。 力がありゃあ使うだろうよ。 お前ら魔法使いと変わんねぇっての」
「どの時代も、そのような愚を犯す者から先に淘汰されていますが?」
「詭弁だな。 時代にそぐわねぇよ、あんた」
ファバイは危機的状況に陥ってもなお強気に出る。 挑発的な視線をカチュアに向け続ける。
「危険ですね。 この者たちの存在は、今後の世の中に悪影響を及ぼしかねない」
「殺すです?」
「物騒だなぁ。 俺らよりやってること酷いぜ?」
「私の予想が正しければ、この閉鎖空間で彼ら全てを殺し尽くすことが最善かと」
「予想って何です?」
「おいおい、勝手に話を進めんなよ。 やるって言うなら俺らも抵抗するかんな? その場合、そっちも多少の怪我は覚悟してもらう。 あと、お前とエスナが奴隷区画に秘匿してた物資も戻ってこないと思えよな」
「……お前たちは本当に面倒なことするです」
(うーん……。 俺だけ置いてけぼりだな)
現在のハジメは誰からも脅威と思われておらず、完全な部外者的立ち位置を保っている。
客観的な視点で現状を俯瞰できるという立場ではあるが、いかんせん前情報が無さすぎてそれもできていない。 つまり、役立たずの野次馬だ。
(フエンちゃんの発言からすると、コイツらは魔法使いじゃなくて俺の予想は間違ってたわけだ。 それなのに、中級である俺を上回る身体能力で翻弄してきた。 その理由が、化け物連中が増えたタイミングってのが分からん。 本来なら化け物に作用するはずの魔法がコイツらに良影響を与えてたとすると、二者間の違いは何だ? ……駄目だ駄目だ、無駄な思考に時間を割くな。 これ以上考えても答えは出ないんだから)
「ま、指示したのはニナだけどな。 つまるところ、俺らを殺しても意味はねぇわけだな」
「ニナはどこ行ったです?」
「それは──」
「フエン様、こっちですよ」
ファバイを遮るように、背後からは女性の声。
ハジメを含めた三人は思わず背後に視線を向けた。
「《排斥》」
突如、吹き抜ける突風。
振り向くと、そこには魔法を唱えたニナの姿が。
「……は?」
これに対し、フエンだけが一際警戒心を強めてニナを見つめ続けた。
ハジメは何が起こっているか分からず静止。
ニナの魔法発動を受けて即座に周辺を確認したカチュアも、フエンに続いて状況判断を終えた。
「フエン、三人の姿が見えません」
ゴレグもマリビも、目の前に居たファバイさえも忽然と姿を消している。
「……それは問題じゃないです」
「彼女がニナですか?」
「そうです。 奴隷区画の現まとめ役といったところです」
「三人が消えたのは彼女の魔法影響で間違いないでしょうが、何かご存知ですか?」
「理解不能です。 ニナ、お前もそろそろ何か喋ったらどうです?」
相変わらず余裕を見せるニナに対し、フエンは問いを投げた。
「カチュアなどを連れているので敵に回られたのかと」
「ふざけた事を言うんじゃないです。 お前こそ、何の真似です?」
「彼らを退場させたこと?」
「魔法を使ってることです」
フエンから問い詰められてもなお、ニナは飄々とした様子で佇む。
「……?」
カチュアは二人の会話内容が理解できていない。 どこかしら違和感を覚えるものがあるが、邪魔するわけにもいかないので、ハジメと目を合わせて内容の動きを待つ。
「お前は魔法使いじゃなかったはずです。 どうして魔法を使えるです?」
ニナは緑色掛かり古ぼけた魔導書を手にしている。 今にも崩れ落ちそうな魔導書からは、経年劣化のような印象を受ける、
「魔法の研究をしているのは魔法使いだけではないってことですね。 彼らもまた、擬似魔法を体現しているので」
「答えになってないです。 もっと分かるように話すです」
「魔法使い一強の、非魔法使いが魔法を使えないという時代は終わりを迎えちゃったんですよ。 この言葉の意味はお分かりですよね?」
「お前、それは──」
フエンは目を凝らしてニナの身体を観察すると、彼女の内側からマナが漏れ出しているのが分かる。 放出量としてはコントロールが不十分だが、非魔法使いではあり得ない現象だ。
「ニナ、あなたの魔導書は一体誰のものですか?」
ここでカチュアがフエンを遮って、神妙な顔つきで問うた。
「誰の……? カチュアお前、何言ってるです?」
「魔導書はその大きさから形まで、同一のものはこの世に二つと存在しません。 それなのに、私はニナの魔導書に見覚えがある。 彼女が魔法を使う瞬間を初めて目撃したというのに」
「……?」
「その質問をしている時点で分かっているんじゃない? この魔導書は──」
ニナが魔導書を雑に振るうと、その表面がハラリと剥げ落ち、細かい紙片が舞った。
「──私が奪い取ったものだってことを」
▽
「ええい、忌々しい! 本来であればすでに発動できているものを! いつまで経っても魔法が発動可能にならん……」
商業区画まで戻ってきたロドリゲス。
「それに──ん? あの女は確か……」
何気なく動いてアンドレイの精神操作にも意識を傾けていた今しがた、ロドリゲスは視界の端に見覚えのある人物を見つけた。
ロドリゲスがゼラに追われて貴族区画から平民区画へ移動している際、デミタスと戦闘を繰り広げていたエスナだとすぐに気付いた。
エスナは瓦礫の隙間に身を預けて休んでいるようで、俯いた状態でみじろぎ一つ見せていない。 その周囲には分厚い水の板が貼られており、防御を意図した魔法が展開されていることが伺える。
「この状況下で呑気に休むとは、どういった精神構造をしておるのだ……」
ロドリゲスはエスナに嫌悪の視線を向けながら呪詛を吐いた。
「それに一丁前に防御まで張っておって。 防御力に自信があると見せつけているつもりか?」
ロドリゲスは周囲は全てが敵と言える状況のため、怒りを禁じ得ない。
ロドリゲスは現在、次に発動すべき魔法にマナを注いで詠唱状態で維持している。 そのため、ここから魔法を使用することはできず、無防備なはずのエスナに攻撃を仕掛けることが難しい。 だからこそ、解消できない怒りが常に彼の内部で蟠る。
「デミタスとエクセスがどこにも居らん……。 奴らめ、雑な仕事ばかりしおって」
アンドレイの魔法を辿ってみても、確認できるのは少数の人間のみ。 エスナがここに残っていることを鑑みても、デミタスらが負けた線はは濃厚。
「魔法を中断してこの女を殺すか……? いや、それでは《人魔混成》で時間を稼いだ意味がない。 しかし、先んじて来たはいいがユハンより先にゼラが到着するのは明白。 チッ……場所を変えるしかあるまいか」
ロドリゲスは断腸の思いで移動を開始。 目的地は貴族区画。
「こうなるのであれば、ユハンの思考誘導にはもう少し時間を掛けるべきだったな……。 思考を揺り動かす刺激があれば、あれは容易に解除されてしまう」
ロドリゲスの気掛かりはリヒトの存在。 彼を地下深くに幽閉しているものの、見つかれば救出されて利用さえされかねない。
「アンドレイの足も遅々として動かん。 やはり思考抑制程度では大した効果しか期待できんか……。 ユハンを弄るくらいであれば、アンドレイを思考破壊によって完全な傀儡へと堕とす方が賢明だろう。 そうすれば使用可能な魔法の範囲も広がるというもの。 消耗品に成り下がるのが厄介な点だが、仕方あるまい。 では……さらばだ、アンドレイ」
ロドリゲスは、アンドレイを操作する魔導具にありったけのマナを込めた。
「──グッ……ガ……」
平民区画でゆっくりとした歩みを見せていたアンドレイ。 その身体がビクリと揺れた。
「……ァ……く、そ……」
忘我のままにロドリゲスによる精神操作を至上命題と誤認していた彼だが、一瞬だけ本来の意識を取り戻した。
「町のために尽くしてきた結末が……これ……か……」
しかしすぐに全ての意識が黒く塗り潰された。 目は落ち窪み、肩はダラリと垂れ下がり、人間らしさが失われてゆく。
アンドレイがしばらく動かないままでいると、そこから徐に魔導書が取り出された。
「……………………《吸魔樹牢》」
モルテヴァの全床面を覆い尽くした根が、マナを吸う植物の魔物へと変貌し始めた。
▽
「「!?」」
(魔導書を奪う、だと……? この女は何を言ってやがる? 内容が予想外すぎて思考がついていかねぇ……)
驚くフエンとハジメを横目に、崩れかけた魔導書を手にニナは続ける。
「魔法使いになれた気でいたけど、魔導書も消耗品なのか。 面倒だけど、いずれまた奪い取らないといけないじゃない。 あのバズって男は楽だったんだけどね」
ニナは意味深な発言を残しつつ、しかし理解させる気は無いようだ。
「やはりバズでしたか……。 その装丁も随分と薄汚れてるようですし、魔法適性の無い人間が魔法を得るどころか風属性まで使用できるとなると……」
「そのあたりは好きに推測すればいい。 こっちも手駒を減らされたくないから魔法を使ったけど。 さて、どうしますかフエン様?」
「お前一人でこの数を相手するですか?」
「協力関係は生きていますよね」
「こっちの邪魔しておいて、まだそんなこと言うですか」
「邪魔だとは随分な言いようですね。 こっちは最大限、手足のように働いていたじゃないですか」
「それなら今まで通りフエンに従うです」
「それは難しい相談かと。 すでに階級の垣根は破壊され、魔法使い・非魔法使いに大した差異も無い。上下関係をハッキリさせたいなら、力で示すしかないんですよ。 それが嫌なら、対等な話し合いで」
「仮初の力で随分と生意気になったものです」
(面倒な存在が出てきたです。 戦ったら多分勝てるですけど、力に溺れた人間はどう転ぶか不明です。 消耗品って言ってる以上、魔導書を使い潰すような用途で魔法を展開された場合、何が起こるか分からないのが厄介です……)
フエンは悩む。
魔導書はなにも、無限に使用できる──それこそ魔法のようなアイテムではない。 連続使用は魔導書疲弊を来すし、そうならないのは魔法使いが無意識下に制限を掛けているからだ。 空間型魔法などの高度な魔法に解除後の縛りがあるのも、そういった理由から。 魔導書が疲弊すれば魔法出力は低下し、本来魔導書がカバーするはずの負担を手痛い身体影響という形で被ることもある。
「……カチュア、どう思うです?」
「敵対行為は歓迎できません。 不安定な魔導書を解放されば、何が引き起こされるか分かりませんので」
「それに関しては同意です。 質問ですけど、あの魔導書は元々発色の強い緑だったです?」
「ええ、もっと鮮やかな印象でした。 バズという魔法使いも三十代半ばの年齢でしたので、あそこまで使い古される機会は無かったはずです。 リヒト様の魔導書よりも燻んだ、あのような外観の魔導書を私はこれまでに見た記憶はありませんし」
「……疑問は残るですけど、ある程度推測はついてきたです」
「そうですね」
(いやいや、マジで何言ってるか分かんねぇって……。 俺はここにいても放置プレイ気味だし、もういっそ消えてもバレないんじゃね?)
知識の置いてけぼりを食らっているハジメは別のことを考え始めていた。 メインターゲットはエマであり、ここで時間を食っているとマズいという直感があるからだ。 その一方で、この三人から有益な情報が得られる可能性もあるため、大胆な行動には出られないでいる。
「ニナ、バズは生きていますか?」
「いきなり核心を突いてくるのね。 でもその質問に答えるメリットを提示して。 一方的な情報搾取には応じない」
(元の持ち主が生きてる、って……重要な情報か? 分かんねぇな。 でも核心って言ってるし……)
ハジメはハジメで、少ない情報から考察を進める。
(このニナって女の言う通りなら今後、魔法使いは狩られる側の対象になってくる。 魔導書を奪い取る条件、または奪い取られないための対策……そのあたりを知るべきか)
「フエン、構いませんね?」
「問題なしです」
「では、こちらの情報提示から。 現在、領主様は大規模な魔法発動を計画しています。 範囲内の生物を供物にする形で発動することで、何かしらより大きな効果を得るつもりでしょう」
「それで?」
「領主様を倒すにしても逃げ出すにしても、必要な情報ではないですか?」
「残り時間は?」
「具体的には言えませんが、もう間も無く発動されるのは確実です」
「うーん……。 じゃあ一度逃げて、その間に発動させちゃうのが良さそう。 領主も無防備に突っ立ってるわけもなさそうだし、手をこまねいてる間に発動されたら面倒じゃない? そういうのって、大体ギリギリか間に合わないのが通例でしょ?」
「それによって領主様が手をつけられない状態になるかもしれませんよ?」
「領主を止める理由は? その手段は? 人員は? 足並みも揃えられていない状態での行動って危険よね。 領主を確実に止める自信があって言ってる? 状況判断が不十分じゃない?」
畳み掛けられる正論にカチュアは押される。
「それに、もうすでに大した人数は残っていない。 一度魔法を空撃ちさせてから領主を始末するのが良いと思うんだけど?」
「カチュア、ニナの発言には一理あるです」
「……そう、ですね。 現状を理解しているニナの意見を採用しましょう。 それでは──ゔッ!?」
「チッ……そういうことしてくる」
「なん……です!? ……《浮遊》……ッ!」
「ぐぁッ……!」
四人は突然の頭痛に苛まれて悲鳴を上げた。 全身を襲う倦怠感や脱力感、頭痛の性状から、ニナ以外はこれがマナ枯渇による症状だとすぐに理解した。
急速に吸い出されるマナの感覚は、どう考えても足元から。
まず反応したのはニナ。 彼女は違和感の発生源を即座に踏み抜いた。
身体強化状態のニナの脚力は、地面に這い回っていた根を一瞬で潰してしまっている。 しかしそれらは凄まじい勢いでマナ発生源たるニナに向かって伸び始める。
ニナは根の猛攻を掻い潜るように地面を蹴り、建物の上を跳ねつつその場を後に。
「カチュア、こっち来るです……!」
フエンは、より近い位置に立っていたカチュアの腕を掴み、魔導書の浮遊で引き上げた。 この二人の対しても、無数の根は御馳走を逃さんとばかりに触手を広げる。
「待ッ──くっそ、判断が遅れた……!」
この時、ハジメだけは有効な回避行動を取れなかった。 一瞬の判断ミスは、視界を全て覆い尽くす根という形でハジメに罰を下す。
ハジメはまず、足の裏に《歪虚》を押し広げた。
「……っふゥ……!」
これにより、足元の根及びマナ吸収作用が消失。 それでも根は諦めることなくハジメの足に絡みつこうとして、その結果全てが高圧で捩じ切れるという動作が繰り返される。
(《歪虚》が有効な現状、短時間であれば根の猛襲に耐えられる。 だけど、物量で来られれば一瞬で耐久値はゼロ……お終いだ。 触れられたら動きを封じられるだけじゃなくて、マナを吸われて再始動すら難しくなる。 それを回避するには、根の弾幕が薄い方向へ逃げ続けて、安全地帯を目指すしかない)
ハジメの思考は高速で回転し、眼球が目まぐるしく動いて周囲の情報収集を開始。 しかしそのためにはまず、根による視界不良を取り払わなければならない。
「邪魔……だ!」
ハジメは地面を蹴り、身を丸めながら根の群れに突っ込んだ。 《歪虚》がそのリソースを減じながら、ハジメの弾幕通過を可能にする。
視界が晴れた。
(フエンちゃんとカチュアさんはもう遥か上空。 それでも追い回されてるところを見ると助けを乞うのは厳しいだろうな。 あと一瞬見えたニナって女は、ずっと建物の上を移動してる。 確かに地上に居るよりは幾分かマシだろうし、奴隷区画の構造を熟知してるのは間違いない。 エマのこともあるし……つまり、ニナについて行くのが最善ってことか)
ハジメが一旦着地すると、その部分の根が激しく蠢き出した。 どうやら全てに追尾性があるわけではなく、反応性に動き出すようだ。
「あっぶな!」
ハジメは慌てて《歪虚》範囲を広げて根を打ち消し、最低限の接地で壁を蹴って建物を
(ニナが見えた……って、何してるんだ?)
「《排斥》! 《排斥》! 《排斥》!」
ニナは根に追いかけられながら、区画の各所に見られる謎の構造物に魔法をぶつけている。 それは根が絡まってできた2メートルほどの柱状物で、魔法を受けて剥がされた内側には人間の姿が覗いている。
(俺らより先に飲み込まれた人間が居たのか……! だからニナは魔法で──)
続けてニナの魔法が人間にぶつかると、直後そこに彼の姿は無かった。 どうやら強制的に移動、ないし吹き飛ばすような魔法効果らしいことが伺える。
(捕まったらあんな風になるのか……。 雁字搦めにされて身じろぎすら出来なくなるって考えると、一度でも動きを止めたら詰みだな)
ハジメがニナの背後に付けると、ニナは忌々しげな視線を一瞬だけ向けてきた。
「ニナ、エマの居場所を知りたい! 知ってるなら教えてくれ!」
「は? どうして教えないといけないわけ?」
「エマを助けに来たんだ! 誰かがここに彼女を連れ去ったって聞いたから俺はここに来てるんだよ! あんたの今やってることが俺の想定通りなら、手伝えることがあるはずだ!」
ニナは前を向いて逡巡を見せ、
「……ついてきて」
背後を向かず呟くように言った。
「ああ、助かる」
(ニナが魔法を奪う手段を持ち合わせてるのは気掛かりだけど、情報の少ない中で動き回るのは無理があるしな……。 《歪虚》を切らさないようにしつつ、いつでも逃げられるように準備だけはしておくか)
暴れ回るアンドレイの魔法によって翻弄されるハジメ。 立て続けに引き起こされる事象に、考える間すら与えられない。
そんな中。 各所で根が吸収したマナは、ロドリゲスの元へと運ばれ続けていた。
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