第18話 魔法の可能性は狭くない
ただの人間にできることなど、たかが知れている。 とりわけこの魔法世界に於いては、魔法を持つ者と持たない者の差は歴然だ。 ハジメは先日の魔物騒動で、それをまざまざと見せつけられた。
「ハジメ、元気ない?」
「あ、ああ……大丈夫」
レスカが心配げに聞いてくるが、ハジメは空返事で返すしかない。
とりあえずこなさなければならない仕事は常に山積しているため、レスカと二人で手分けして作業を進めている。 しかしそのどれに対しても力が入らない。
ハジメは自分でも何かができるだろうと思っていた分、それが難しいと知った時の反動は大きかった。
もしリバーたちがいない状態でハジメがあのような魔物と遭遇した場合、なす術もなく殺されることだろう。 これまでのように多少肉体を鍛えていたところで、それは変わることのない事実だ。
先日もフエンが居なければ死んでいたし、こうやって生きていられるのは偶然の産物だ。 つまり、いつでも死ねるこの世界で、ハジメは今のところその事実の抵抗できるだけの手段を持ち合わせていないのだ。
ハジメは新しい世界、新しい生活の中で、何かしら出来ることが増えるものだと期待していた。 そしてそれは現実に可能であり、地球での怠慢な生活に比較すれば、生きて行くための術を多く学べている。
しかしこの世界に於いてはハジメができることよりもできないことの方が多く存在しており、結局はできないという意識をハジメに植え付けていた。
ハジメの両手で掬える物事の範囲はあまりにも狭く、広い世界は彼に酷く矮小な存在だという感覚を与えるのだ。
それは相対的な感覚であり、ハジメ個人を見てみれば明らかに成長が見えるものなのだが、本人が感じてしまった印象はそう簡単に拭うことができない。
(駄目だな……。 出来る出来ないで考えたら、その度に心が折れそうになる……って、分かっちゃいるんだけどな)
出来ないことを挙げ出したらキリが無い。 だからこそハジメは自身に出来ることを見出そうとするのだが……。
(俺に出来ることなんて、……なぁ? とりあえず、この負の思考ループから抜け出すには、考え方を変えるしかないんだよな)
ハジメは今一番やりたいことを考えてみる。
(必要最低限の会話能力。 これはやりたいことをというよりやるべきことだな。 だとすると一番はやっぱり魔法を使うこと、か)
今でもハジメはその夢を諦めていない。 もし以前との違いを言い表すなら、それは単なる興味によるものではなく、生きるための術として欲しているという点だろう。
魔法があれば自分の身を守れるばかりか、レスカを守ることにも使える。
今のところ魔法に何かを見出せるようなことはないが、まだ魔法が使えないと決まったわけではない。
そして魔法を知るためには、前提条件として言葉を学ばなければならない。
やりたいことを推し進めるためにはまず、ハジメはやるべきことが足りていないのだ。
やりたいことばかり目標に動いていれば、今のように力不足を感じて動けなくなる。 ハジメは今回の魔物騒ぎでそれを十分に理解した。 であれば、今は無駄なことは考えずにやるべきことに邁進するしかない。
(散々考えたけど、やれることは無限にあるんだよな。 今出来ないことが多いだけで、今後全てができないってわけじゃないんだ)
ハジメは自分にそう思い込ませて思考を変化させる。
ここは地球のようにただダラダラしているだけで生きていける世界ではない。 親から仕送りが来るわけでもなければ、腹が減ったらコンビニに行けばいいというわけでもない。
生きることには労力が必要であり、そうするからこそ生きていることを実感できる世界なのだ。 そう考えれば地球でのハジメは死んでいたも同然だし、生を実感できるようになったのはこの世界のおかげである。
何が言いたいかといえば、
(生きてることに感謝できるだけで、俺の人生って儲けものってことだよな)
そういうことだ。
「レスカ、言葉教える」
「あれ? なんかハジメの顔が変わった気がするー」
「話す、練習」
「うん! 頑張ろー!」
未だハジメは目に見えた成長など実感できない。
だが、成長に向けて動き出すことはできていた。
▽
「ご迷惑をお掛けしました……」
「いえいえ迷惑などと。 むしろエスナさんが居なければ魔物討伐は為っていませんよ」
「そう、ですか……。 お役に立てたのであれば何よりでございますです」
「では続きを始めましょう。 時間はいくらあっても足りませんから」
エスナに回復ポーション用い、彼女の復帰を待って特訓が再開された。
ここ数日の間に大蛇の魔物の解体はすでに終えられており、その肉は保存用に加工されたり胃に流し込まれたり、有益な結果を齎している。
また素材に関してもいずれ買取が付くようなので、リバーふところじじょうも安泰だ。
「あの……実はリバーさんとフエン……さん、が騎士の身分だとお聞きいたしまして……」
エスナがそんなことを言い出した。
思い返してみれば、ここまで彼女の言葉遣いが変だ。 慣れない尊敬語を無理に用いようとしている印象を受ける。
「ああ、そんなことお気になさらず。 騎士爵など主人が気まぐれで私たちに与えたものですし、正式な叙勲儀式を経た訳でもないので便宜的な肩書きですよ」
「で、でも……いえ、しかし……」
「今更知って関係性が変化するようなものでもないですし、今まで通り接してください」
「そう、仰るのであれば……」
「身分など瑣末なものですよ。 それに、我々も元々は下層の人間。 身分を得たところで本質は変わりませんよ。 私は私のままですから」
「そういうことに、しておきます……」
「では今日の指導はフエンさんにお願いします」
「承ったです」
「えっと……?」
これまでとは違う流れに、エスナは戸惑う。
もちろんここまでのリバーの指導でメキメキと魔法力を増大させているエスナだが、今のところそこに不安はない。 むしろリバーとの二人の時間が減ってしまうので、惜しいまである。
「単純な反復練習は必須です。 けど、想像力を膨らませるのも大切、です」
「はぁ……」
「先日フエンさんはハジメさんからアドバイスを得て、何かを掴んだようなのですよ」
「ハジメ、が……?」
「どうにも彼には謎が多いですが、まぁ今回のことは決して悪い内容でもありません。 これは全ての魔法使いに共通の課題なのですから」
「じゃあフエンが説明するです」
フエンが言うには、魔法はただ吐き出されるものではないらしい。 発動するまでの過程も重要で、想像力が魔法に変化を及ぼすという。
試しにエスナが異なる形の断絶をイメージして発動してみると、確かに少し歪な形のそれが出現した。 しかしそのイメージが邪魔しているせいか魔法自体の強度が落ち、本来のスペックが発揮できなかった。
「いい意味でも悪い意味でも、影響は大きいですねぇ」
ここからは普段の反復に加え、それぞれの魔法を運用しやすいように改変していくこととなった。
「その、イメージというものがイマイチ……」
「水属性の魔法使いに教えを請えれば良いのですが、あなたの先生もそうではありませんからねぇ」
「はい。 先生は土属性ですし、両親との接触もあまりなかったようですので……」
「リバーさんとエスナで思考を共有すればいいのです。 二人ならできると思うのです」
「あぁー……。 そんなことも可能と聞きますね」
「えっと、どういう……?」
「そうですねぇ。 例えば──」
思考の共有とは、魔法発動において複数の魔法使いが協力する際に用いられる技法のことである。
まず《魔弾》や《魔刃》、《爆発》そして《魔域》など、どの属性にも共通する魔法が存在する。 それらであれば、異なる魔法使い同士が同じ魔法を思い浮かべて発動することで混じり合う場合がある。 これを魔法混合と呼ぶ。
魔法混合では、本来触れ合わなかったはずの属性が掛け合わされることでその可能性は爆発的に増大し、下級魔法の魔弾ですら中級以上の可能性が出力される場合もある。 逆に、相性が悪いと本来の威力にすら届かない場合もある、いわば諸刃の剣である。 また一朝一夕で仕上がらないのがそれらの特徴でもあるために、長く連れ添った者同士や、同じ環境で育った仲間でしか発動し得ない奥義でもある。
魔法というのは魔法使いのコンディションや状況によっても大きく変化し、常に同じものを出力し続けられる者はいないと言われるほどだ。 だからこそ彼らはいつでも同じパフォーマンスを発揮できるように一つ一つの魔法を突き詰めるし、それが魔法戦闘を単純化させている要因でもある。
昔は複数種類の魔法を使えば有利だとも考えられていたが、そもそもオールマイティな魔法使いは存在しないし、ここは平均的な能力よりも突出した能力に軍配が上がる世界だ。 つまるところ脳筋魔法使いが幅を効かせる世界。 小細工が通用するのは狭い界隈だけで合って、戦場などでは一つの魔法を極めた者こそ勝者となり得る。
「好き合ってるなら魔法混合も上手くいくはずです」
「す……!? 好き合っているなんて……そんな……」
「フエンさん、エスナさんの精神を乱さないであげてください」
「それならさっさと精神的安定を覚えさせるです」
いっそのこと抱いてやればコントロールしやすいのに、という言葉がフエンの喉のすぐそこまで出かかった。 しかし、あまり刺激しすぎてもあれなので今回は黙っておいた。
「可能性を広げる意味では無しではないですね。 しかしそれが今からうまくいくのかどうか」
「それなら一緒に暮らせば良いのです」
「なるほど、それは名案ですねぇ」
「えっ!? え、えぇー……!!!?」
「魔法を教える時間も無駄にはなりませんし、良い事尽くめでしょう」
「あ、あの……リバーさん……!?」
エスナは唐突な同棲発言に心臓が跳ねる一方なのだが、リバーにしてみれば魔法特訓の延長でしかないために、それぞれの感覚には齟齬が生じている。
「二人がいちゃついてる間に、フエンはあの変態から情報を得てくるです。 これは互いにwin-winなはずです。 ついでにレスカの魔法力もフエンが見ておいてやるです」
「ちょ、ちょっとフエンちゃん……!」
「じゃあ決まりですね。 ちょうどハジメさんが切り倒した木材などもありますし、家も建ててしまいましょう」
「ちょっと急すぎでは……?」
「木を加工したり細かい作業に魔法を使うのは、結構良い魔法の特訓になるのですよ?」
「い、いえ、そういうことを言っているわけでは……」
エスナは流れに逆らえなかった。
そのままフエンだけが報告へ向かう。
「そうわけなので、お前の仕事は今から家を建てることです」
「……へ?」
ハジメは手を止めた。
ハジメはレスカと絶賛農作業中だったのだが、フエンから告げられる内容が二人ともパッとしない。
「フエンちゃん、どういうこと?」
「リバーさんとエスナの家を建てるです」
「へぁ!? え、えっちなんだけど!」
「お前たち姉妹は発想が豊かで恐れ入るです。 魔法を鍛えるための部屋です」
「レスカ、説明」
「え、えっと、お姉ちゃんとリバーさんの愛のs……じゃなくて特訓部屋を……」
「特訓、納得」
「ハジメ絶対理解してないでしょ!」
「レスカもその変態と暮らせるんだから文句ないはずです。 お前は分かりやすくそいつのことを好いて──」
「ちょおぉおお!?」
レスカは赤い顔をして叫びながらフエンの口を塞ぐ。 フエンはその手の下でモゴモゴ言っている。
「ハジメ、なんでもないからねっ!?」
「どうせこいつは気づいていないのです。 良い機会だから姉妹共々好意の対象に抱かれたら良いのです。 でもヤる場合は予めフエンに報告するです。 情事を聞きながら眠れるほどフエンもお子様じゃないのです」
「ちょっとフエンちゃん黙ろっか!?」
やけに慌てた様子のレスカだが、ハジメにしてみれば仲の良さそうな二人にしか見えない。 それを鈍感というよりは、言葉の障壁のためにあまり状況が理解できないだけだ。
「レスカも姉のためと言い訳できるんだから問題ないはずです」
「フエンちゃん、もういいから!」
そこから簡易住居の建設が急ピッチで進められた。
場所は村から更に離れた、姉妹の家から畑を挟んだ向かい側だ。
もうこの頃にはリバーが村で何をしようと文句を言う人間はいなかったし、そもそも被差別騎士とはいえ騎士爵を持つリバーやフエンに何かを提言しようとは思わなかったようだ。
リバーに囲われている事実から、エスナの立場も村人とは一線を画するものになっている。 そういうこともあって、今やリバーはやりたい放題だ。 とはいえ本来の目的は魔人を討伐することなので、やりたいようにやらせてもらえなければ困ると言ったところだ。
「まずは基礎からやっていきますか」
ハジメは言われるがまま、教えられるがままに作業に徹した。
家づくりに関してハジメが知っていることなど皆無だし、それを知っているリバーに従っていれば問題は起こらない。
(リバーってほんと何でも知ってる……つぅか、できるよな。 やっぱ一人で色んなことができるようになんねぇと、外でも生きていけないのかね)
ハジメは男としても人間としても圧倒的な差を見せつけられながら、家の完成に貢献していく。 と言っても、ハジメにできることなど運搬や掘削くらいなものだし、精密な作業に関しては一切手が出せていない状況である。
それでもハジメは工程をしっかり記憶に叩き込みつつ、空いた時間は肉体強化に邁進する。
リバーは影を拳に変えて岩石を砂利に砕いたり、フエンは風で木材を切断したり、地球で言う機械によって成される行為は全て手動だ。 だからこそ魔法それぞれに精度が求められるし、人間では到底不可能な技術を体得している彼らをハジメは尊敬する。
エスナもその一端を発揮しようとしているし、ハジメはやはり置いていかれているという感覚を拭えない。 そもそもが彼らと同じ路線上を走っていないのだから置いていかれているという感覚はおかしな話だが、そう考えてしまう以上はそこに追いつきたいと思うのも仕方のないことだ。
そんなハジメの思考とは裏腹に作業は着々と進み、2週間と掛からず簡易宿舎が完成した。 細かい材料は村にある使えそうなものを総動員しており、そこに魔法的技能がふんだんに用いられて着工から完成まではやけにスムーズだった。
簡易だけあって扉一つ窓一つの簡単な作りだが、大人二人が住むには十分な大きさだし、エスナたち姉妹の家より豪華に見えてしまうのは何故だろう。
簡易宿舎にリバーとエスナが暮らすのは何故かみんな知っていて、村の男連中からしたら村の綺麗所を持って行かれて気に入らない様子だが、身分という壁がその邪魔をする。 また村に恩恵を授けてさえくれているために、リバーを大っぴらに悪く言える人間はいない。
(エスナも狩りに出て、人間としての強さは頭ひとつ抜きん出てるんだよなぁ)
この間まで線が細い弱々しかったエスナも、今では立派な魔法使いだ。 魔弾による攻撃も、そろそろ木に孔を穿てる程度には成長している。
成長しているのはなにもエスナだけでなく、リバーやフエンも同様だ。
「《闇弾》」
リバーの魔弾が彼の手から放出されたかと思うと、軌道を軽く変更させた。 そのままそれはカーブのような軌道を経て、狙いとは違う木を破壊した。
ベキベキと音を立てて倒れる若い木。
魔法の練習という名目で、木々の数年の努力がへし折られるのだから、自然側からしたらたまったもんじゃない。 が、どこを見渡しても緑しかないラクラ村でそんなことを気にする人間はいない。
「いくです。 ……《穿弾》」
魔弾であれば、発動と共にエネルギーの塊が打ち出される。
しかしこの穿弾は詠唱した瞬間から魔弾が手のひらに形成され、フエンの手のひらの上でゆっくりと形を変えていく。 まるで金属が捻られるような歪な変化は──その形状は、敵を確実に貫くという意志の表れ。
ハジメのアドバイスを得てフエンが繰り返し試行錯誤を重ねた結果生まれたのが穿弾。
魔法の習得には、いくつかの方法が存在している。
まず簡易魔道書──基本的な魔法しか込められない──を自身の魔道書に触れさせて転写する方法。 初期の魔法導入にはこれが一般的なのだが、エスナの師匠たる魔法使いはこれを用いなかったためエスナの魔法使用開始は大きく遅れた。
次に魔法を実際に見せることで視覚による魔法習得を期待する方法。 これは一般的というよりは最も雑な方法で、これは簡易魔道書と違って見せつける魔法使いの力量がそのまま知覚される。 そのため取り込む側の魔法使いはそのイメージを強く受けてしまうため、あまり経験のない魔法使いの魔法を見た場合は、悪いイメージそのままに魔法成長が遅れてしまう。
エスナを教える魔法使いも攻撃魔法一般に強くなかったため、悪影響を心配してこの方法も取っていない。 加えてメレドから時間を掛けて教えてくれとの依頼──過度なエスナの成長は危険だという裏の意図があった──も受けていたために、もっと基本的な部分の純粋な魔法力を仕上げる教育がエスナ行われていた。
外部からの刺激をなるべく与えず、自然な成長の中で魔法発現を促す方法──これが従来の魔法発現機構であり、魔法使い本来の性質を十全に発揮できる最も安全かつ成長が期待できる方法でもある。 これがエスナに施されていた教育。
現代の魔法は効率化や最適化の面から様々な不純物が混じった──謂わば加工品であり、エスナもリバーの影響を受けて加工されてしまったということになる。
しかし、エスナの場合は彼女の意志を確認した上での固有魔法発現だったために、大きく彼女の成長方向としては間違いではなかったとも言える。 ヤエスの名を出して意志をコントロールしたという風にも解釈できるが。
魔法は様々な要因によって成長するため、成長方向を規定するという意味では教えを与えることは間違っていない。 しかし、魔法使いの本質的な成長方向を見定めないままに行われる現代の教育は魔法の発展を妨げていると言っても良い。
ビシ──ッ……。
フエンが穿弾を押し出した。 それは魔弾とは比較にならない速度で射出されている。
穿弾は、イメージ力を受けた魔弾が姿を変えた、新たな魔法の可能性。
これが三つ目の魔法習得方法。 反復使用や試行錯誤の結果、魔法使いが外部影響を受けつつ自らの中で独自に魔法を生成する方式であり、位階を次のステージへ引き上げる最低条件。
穿弾を受けた木の幹には指の細さ程度の孔が穿たれており、この魔法の真髄はそこに留まらない。 そこから10メートル以上に渡って存在している構造物には、軒並み傷がつけられている。
「や……やっと、一発完成したです……はぁ……はぁ……」
「風属性の特性を取り込んだ、良い魔法ですねぇ」
速度と貫通力を備えたそれは、魔弾から派生しつつも、全く異なる趣を備えている。
しかし魔法の方向性を改変するという手法にはかなりの精神力と集中力を持って行かれており、過度の疲労がフエンを襲っている。
「……はぁ……これで、あいつの中ではまだ完成していない、というのが驚きです……」
ハジメが図式化してフエンに伝えてきた魔法の可能性は、ただ貫通するだけのシロモノではなかった。 具体的には、穿弾に更に回転力が加わり、木を貫通しつつ破壊し尽くすイメージ。
「彼は私たちとは異なる体系を学んでいるようですからね。 もしかしたら戦争などを実際に見ているのかもしれませんねぇ」
戦争や実際の戦闘経験は、否が応でも魔法使いの成長を促す要因になる。
しかし、リバーの指摘は合っているようで間違っている。
ハジメに戦争経験はもとより、喧嘩の経験すらない。 だが映像や資料で戦争や紛争を見てはいるし、危険な兵器の数々を知っている。 知っているという事実は脅威になりうるし、この世界が大量破壊兵器を生み出していないのは単に知らないからである。
兵器的作用の魔法は実現されていないが、それも時間の問題。 魔法使いが増えて研究が進めば、いずれ到達しうるのが大量虐殺の未来である。
各国同士での戦争行為は世界の寿命を縮め、勇者の存在もまた……。
それから約1ヶ月ほど後──。
突如天気が崩れ、激しい雨が村を襲った。 それは五年前を思い出させるような、陰鬱として重苦しい雨だった。
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