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オミナス・ワールド  作者: ひとやま あてる
第3章 第3幕 Apostles in Corruption
108/156

第100話 均衡崩壊

100話で3章が終わるはずでしたが、纏まりませんでした……。

「レイシ、私を早く解放しなさい! でないとユハン様が……!」

「あー、はいはい。 それはあとでね」

「いいから早くッ!!」

「どうせあんたじゃ何もできないんだから。 無能は黙って使われてなよ」

「貴様ッ……!」


 レイシとモノは、もちろんモルテヴァの町中にいる。 しかし彼女らの姿は誰の目にも映らない。 レイシの《全反射トータル・リフレクション》の効果が発揮されているからだ。 だからといって爆撃降り注ぐ悪環境を無視できるというわけではない。 あくまで誰からも見えないだけだ。


「動きたいなら勝手にすればいいよ。 ま、できるものなら」

「なら早く魔法を解きなさい! そうすれば済む話です!」


 《蓄積鎧ストレージ・アーマー》で最大限までダメージを溜め込んだモノは、極限まで防御力を高め続けている。 しかしその反動で一切の身動きができなくなっている。


 無用の長物と成り果てているモノだが、盾としての機能は現状あまりにも優秀だ。 死亡必至のロドリゲスの攻撃を耐え凌ぎ、今なお爆撃を受け続けているおかげで、もはや爆撃程度ではぴくりとも動かない。


「今んとこユハンは大丈夫だって。 こっちで見ててあげるから、あんたはそこで蓋の役目を果たしてなよ」


 レイシは《潜光ミラージュ・ダイブ》で《反射鏡リフレクション・ミラー》に潜り、鏡面をモノで覆い隠すことで物理的な干渉から逃れている。


 《反射鏡》は光魔法を反射・吸収する特殊な魔法。 また、内部が鏡の世界となっており、複数設置するとそれらの間を行き来することも可能だ。 この効果を用いて、レイシは超重量のモノを町まで運んできた。 そして現在は別の鏡から町を俯瞰して状況確認に徹している。


「ユハン様の詳細を! 何も分からないこの状況は苦痛でしかありません……!」

「うっさいなぁ。 今は爆撃で騒音だらけだからいいけどさ、これ以上騒ぐなら喉に穴開けて喋れなくするよ?」

「……本当に愚劣ですね、あなたは」

「効率的って言って。 ま、ユハンの状況はと言うと──」


 ユハンは町に送られてもなお、無気力な様子は変わらない。 それでも自殺願望があるわけではなく、爆撃に対して魔法での最低限の処理は行なっている。


『《君臨レイン》。 次期領主たるこの私を、傷つけるな』


 その魔法一つで、ユハンに到達する攻撃は無くなった。 尚且つ、攻撃による余波でさえ彼を避けるようになった。 無数の攻撃も、ロドリゲスの手を離れて仕舞えば単なる現象だ。 この町で行われることであれば、ユハンはあらゆる点で上位に立つことができる。


「──ってことで、放置してても問題なさそう。 分かった?」

「言葉だけで、全てを信じろと……?」

「ま、信じなくてもいいよ」

「それが事実だったとして、ここで留まり続ける理由にはなりません……! 私は何としてもユハン様を守らなければならないのです! 私がユハン様の盾となって戦えば、領主様の隙も生まれるはず。 だからそろそろ、行動させてください!」


 モノは心から叫んだ。 ユハンを守る──それが、彼女の命よりも大切な使命なのだから。 しかしレイシの返答は相変わらず無機質なものだ。 寄り添う気すら感じられない。


「別に傍観してるだけじゃないっての。 ちょうどさっき、ドミナの懐からこっそり霊薬ソーマも盗んできたしね。 あの領主を倒すんなら、味方ですら欺かないといけないわけ。 だからこそ、勝つ確率を最大限まで高めるためにここにいる。 領主を倒さないとユハンが生き残る可能性はないわけだし、動かないことこそ最善ってことを理解しなよ」

「しかし……!」


 この口論に意味はない。 モノもそれは分かっている。 そもそもこれは口論ですらなく、モノが感情をぶつけているだけだ。 それでも、主人のために動かないということは彼女にとってあまりにももどかしく、苦痛だ。


「動かないから。 あんたが何を言おうと、何をしようと。 領主が本当に勝ちを確信した瞬間。 絶対にそこしか、狙わない」


 狂気にも近いレイシの忍耐と集中力。 それを感じて、モノはただ固唾を飲むしかなかった。



          ▽



「見つけたぞ」

「あっ……」


 ロドリゲスは疾走の際の設置面積を最小に隠密性を担保しつつ、凄まじい膂力で町を駆けた。 向かった先は当然、戦いの軸となる程の活躍を見せているメイの居所だ。


 ロドリゲスはメイの前に立ち塞がった。 同時に一瞬だけ眩暈のような感覚を覚えた。


(この娘が張った防御系統の魔法か? レジストしたところをみると大したことはないな)


 症状はすぐに消失し、ロドリゲスは無視して拳を振り上げた。


 爆撃によって、メイが各地に潜ませていた魔物は悉く潰されている。 対個人の戦いにおいて無類の逃避性能を誇る彼女の《転換シフト》も、移動先が無ければ意味をなさない。


「死ね」


 容赦なく振り下ろされるロドリゲスの拳。 《限定強化ディフィニット》の効力は、エスナの障壁を貫通していることから保証されている。


 何かに勘づいたロドリゲス。


 ジュッ──。


 ロドリゲスは攻撃の手を引き、身体を捻らせた。 高速で通り抜けた黒い光が、彼の指先に触れている。


 そのまま、黒い光は地面に触れて消えた。


「なん、だ……?」


 突然の酩酊感。


 ガクン、とロドリゲスの身体が支えを失ったように崩れた。


(視覚への作用? 手足の感覚も鈍い。 なるほど、精神作用を持った攻撃か……小賢しい。 効かんというのに)


 ロドリゲスの身体は言うことを聞かなくとも、思考はクリアなまま。


「フンッ!」


 脳を侵さんとする敵のマナに対し、ロドリゲスは意識だけで頭部を含めた全身に自らのマナを巡らせた。 マナの侵食を、上から無理矢理に押し潰した形だ。


 結果は想定通り。 ロドリゲスの視界が眩暈状態から正常化され、全ての感覚が急激に引き戻される。


(そろそろこれも、使いどきだろう)


 気づけば、先ほど受けた攻撃によってロドリゲスの右腕の一本が腐り落ちていた。 にも関わらず、ロドリゲスに驚きはない。


「お前は……()()()()()()


 ロドリゲスは攻撃の飛んできた貴族区画を真っ直ぐに見た。 その左眼の網膜に刻まれた、特殊な魔法陣を顕にしながら。


 ロドリゲスは、壁越しにゼラの姿が見えている。


(テシガワラから聞いていた通り、魂の救済とは魂の消費によって条件付けられるようだ。 《万に一つ(リィンカーネーション)》を発動した時点でこれが発現したところをみると、我は一万の魂を保持した状態だったということだろう。 なるほど、興味深い知見だ)


 ロドリゲスの視界の端で、メイが身を翻して逃走を図っていた。


「《滅波ルインウェーブ》」


 ロドリゲスは、敵を確実に死に至らしめるため各個撃破を狙っていた。 しかしながらまだまだ邪魔は多いようで、面倒になった彼はメイを追うことはしなかった。 その代わり、容赦ない攻撃範囲攻撃で以て、逃げる彼女を背中から飲み込んだ。 そのまま結果を確認することなく、身をかがめた。


「次は──」


 ロドリゲスは今度、地面を激しく踏み締めて弾丸のように飛び上がった。


 一瞬で商業区画を眼下に見据え、標的を捉えていた。


「──ゼラ、お前だ」


 ゼラは忌々しげな視線を残しながら天を仰いだ。


「見えて……って、まぁそうだよね。 お仲間なら当然か」


 ゼラは《負力変換コンバート・ネガティブエナジー》で攻撃力を高め、貴族区画から壁越しにロドリゲスを狙った。 黒い光は音も生じさせていない。 本来であれば、姿さえも見せていないゼラの攻撃は予測されにくいはずだ。 しかしロドリゲスは反応して見せた。


「《怪光線ビザレ・ライト》──《分裂スプリット》」


 《怪光線》は、対象に肉体的・精神的な不調を複数生じさせる攻撃魔法。 光線そのものに殺傷性は皆無であり、付加効果によって生じる効果は多種多様。 そこに指向性変化を加えることにで光線は分裂し、接触した数だけ複数の効果であったり相乗効果さえも狙うことができるようになった。 分裂したことで攻撃力は下がってしまうが、攻撃性を求めていない魔法のためデメリットは皆無と言える。


「そのようなもの──」


 ロドリゲスは言いかけて、口を閉じた。 単発の攻撃であれば対処のしようもあるが、数が増えれば話は別だ。


 未知の魔法への備えというものは、そもそも少ない。 防御することによって不利益を生じてしまう魔法もある。 ゼラの魔法はまさしくそれだ。


「いや、奪い取ってやろう。 《封石精製クリエイト・シール》」


 封石とは、接触した魔法を一時的に封じ込める性質を持った魔石。


 ロドリゲスが無造作に複数の封石をばら撒くと、それら一つ一つから魔法陣が浮かび上がった。 封石は障壁のように魔法陣を展開しながら、整然と配置されて彼の前面を覆う。 そこに、ゼラの魔法がぶつかる。


「体内から取り出してんじゃん。 こりゃあ、どれだけ貯蓄してるか分からないね」


 封石の群がゼラの攻撃を受け、その先々から脈動した魔石へと姿を変えてゆく。 そして、ゼラの攻撃全てが封石に飲み込まれてしまった。

 

「《封石弾バレット》」

「や、ば」


 ロドリゲスは返す刀で、ゼラの魔法を込めた封石を弾丸として撃ち出している。


 ロドリゲス周囲から次々と打ち上げられている、《分散配置ディスパース》によって数を増やした《犠牲弾バレット》。 ランダム性のそれらに加えて、個人攻撃さえも開始されたわけだ。


 ゼラは逃げる間もなく、その身体を複数の魔弾が貫いた。 地面に触れた魔石は弾け、拡散した効果範囲は彼の身体全てを飲み込んでいる。


「他愛無い」


 着地したロドリゲスは、着弾地点を見た。


「なに……?」


 そこに、ゼラは居ない。


(逃げる動きは見えなかった。 姿を消す魔法か? いや、我の左眼は──)


 そこまで考えて、ロドリゲスは急いで周囲を見渡した。


「チッ……!」


 ロドリゲスがゼラを貴族区画に捉えたのと、身体に違和感を生じたのは同時だった。 ズン、と身体は重くなり、魔導書が強制的に解除された。


 黒い光がロドリゲスの腹部を抜けている。


「マナ枯渇状態。 ロドリゲス、当たりを引いたね」


 距離的にゼラのそんな言葉は届かない。 しかしロドリゲスは即座に自分の置かれた状態を認識した。


 ガキンッ。


 急ぎ魔石を取り出し砕く。 ロドリゲスの身体にマナが充溢する様子はない。 本来であればマナ回復にも応用できる魔石だが、現在の彼の状態はマナを取り込むことすらできないらしい。


「んじゃ、続きよろしく」


 ゼラの姿が一瞬で掻き消えた。 魔法発動兆候もなく、忽然と。 気づけば、左眼の魔法陣も機能を停止している。


「奴め、我の認識していない移動方法を持っているのか? ……それはあとだ。 今はこの身に降りかかった問題、ヲ……?」


 突如、ロドリゲスの心臓がドクンと脈打った。


(攻撃? どこから? いや、誰から?)


 ロドリゲスが魔人の肉体になって以降、大半の物理的な攻撃は意味を為さなくなった。 程度の低い魔法効果であれば効果を発揮する前に勝手に打ち消してしまうし、マナ知覚能力も格段に上がっている。 それなのに、未だ効果的なものが幾つか散見されている。


(どこにも誰の姿が見えない……というのは不可解。 少なくとも、何かしらの精神作用が残っているな。 それに、今の攻撃は──)


 身体の内部から湧き上がる不快感。


「──毒、か。 ガハッ!?」


 じんわりと全身を犯される感覚に加え、吐血や眼窩からの出血など。 被毒状態を示す症状が出現し始めた。


(レジストを……)


「……ッ!」


 ロドリゲスの全身が突如激しく硬直。


(雷……! カチュア、か……。 我が攻撃の嵐の中、生き残りは未だ多数)


 再び始まる、雷撃による行動阻害。 前回と違うのは、そこに物理的な攻撃が足されていないこと。


(毒とマナ枯渇でじっくりと殺すつもりか。 だが、それも無駄なこと。 我は今、降り注ぐ攻撃の数々から恩恵を享受している。 耐性を得るという恩恵を)


 ピクッ──。


「そろそろ、だな。 これだけ受け続けていれば当然か……」


 ロドリゲスの麻痺症状が軽くなっている。 マナも少しは充溢し始めたようだ。 それでも、マナ上限がごく低い位置で固定されているような状態のため、魔法は単発発動が精々といったところだ。


(だが、枯渇したマナを回復させるのは絶望的だな。 ゼラめ、厄介なことをしてくれたものだ。 とはいえ所詮奴らの攻撃も、一過性に我を止めることしかできんというわけだ。 時間を掛ければ勝てるという増長した考えを、まずは打ち砕いてやらねばなるまい)


 雷撃が突き刺さった直後、ロドリゲスは即座の動いた。


 効率重視の行動制限が雷撃の強み。 そこに下手な小細工などなく、真っ直ぐにロドリゲスを射抜いていた。 ロドリゲスは敵の姿が見えないながらも、雷撃の放出開始座標だけを頼りに魔法を撃ち出す。


「《封石弾》」


 ロドリゲスも、この一発が限界。


 凄まじい勢いで放たれた魔弾は、そこに居るはずの敵を正確に撃ち抜いた。


「ぐ、ッ……!?」


 思わず漏れた悲鳴から、ロドリゲスは成果を確信した。


「そろそろ首が締まってきた頃合いではないか?」



          ▽



「カチュア!?」


 封石がカチュアの腹部を貫通し、そこに込められたゼラの魔法が具現し始めた。


「!? ……?」


 カチュアの五感が急激に狂い、状況把握すら困難な状態に陥った。 その手がフエンの魔導書から離れ、宙空へ身が投げ出された。


 フエンの眼下には、高速で走り出したロドリゲスの姿がある。 彼は真っ直ぐにカチュアの落下地点を目指している。


(カチュアが……。 ゼラの攻撃で動きが鈍っていたと思いきや、急の元気になりやがるです)


 ここでカチュアを殺されるのはマズいと考えたフエン。 しかしながらカチュアのマナも枯渇気味で、なおかつ攻撃が有効打足り得なくなったのも事実。


 フエンは総合的な判断の下、一気に魔導書で急降下に走った。 魔導書をカチュアの側で一瞬だけ解除し、再び具現化させてページを捲る。


「《風爆エクスプロード》ッ!」


 座標はカチュアとフエン、ちょうど彼女らの中間。 ロドリゲスの到着より数瞬早く、魔法が爆ぜた。


「んっぐ……!」


 カチュアの落下地点に到着し拳を構えるロドリゲス。 その直上でフエンの魔法が発動。


 フエンは耳元で拳の突き抜ける音を感じながら、カチュアとともにロドリゲスの上で左右に吹き飛んだ。


「《浮遊フロート》……!」


 フエンは地面に叩きつけられる前に魔導書を捲り、地面スレスレで魔導書を浮かせて事なきを得る。


 カチュアは激しく地面に転がっている。 ロドリゲスの魔法効果を受けてしまったことで感覚を狂わされ、魔導書を取り出すこともままならない彼女は、フエンのおかげで一時的に回避できたに過ぎなかった。


 ロドリゲスは攻撃後一瞬だけ動きを止めていたが、カチュアが地面を擦る音を聞きつけた瞬間にそちらに走り出していた。


「カチュア、逃げるですっ!」


 フエンがようやく体勢を立て直したタイミングで、ロドリゲスはカチュアに肉薄するまで迫っていた。 そのまま絶死の拳がカチュアの腹部に突き刺さる。


「が──」

「我が糧となれ」


 カチュアの身体がくの字に折れた。 そこへ更に拳がめり込み、渾身の力で振り抜かれた。


「──ぁあ゛ッ……!」


 カチュアは一度激しく地面に叩きつけられ、大きく跳ね上がった。 その際、衝撃によってカチュアの脳が激しく揺さぶられ、掛かった魔弾の効力が解除された。 少しだけ思考する余裕が戻ってくる。


(……これ、は確実に……死ぬ……。 その前に……)


 カチュアは薄れ掛かる意識の中、心臓にマナを集中させた。 そこにはドミナの精製した毒が置かれていた。 ロドリゲス戦を見越して生み出された毒は、強制的な仮死状態を誘発する。 しかしながら、今回においてそれは意味を為さない。


 毒魔法のマナコーティングが壊れ、内部から毒が溢れ出す。 一気にカチュアの全身を駆け巡り、ロドリゲスによる最期の一撃に先んじた。


 カチュアの身体が再び地面に突き刺さった。 今度こそ逃げ場の無いダメージが彼女を死に至らしめた。 ロドリゲスはそう確信した。


「………………どういうことだ?」


 拳を突き刺したまま、ロドリゲスは止まっていた。


 ロドリゲスの身体には、何ら変化が見られない。 本来であれば、殺害を条件とした回復効果が恩恵を示しているはずだ。 腕に感じる対象の肉体反応は、確実な死を告げている。


 ロドリゲスは魔法効果を疑ったが、自身の使用する魔法への信頼は絶対だ。 つまり、今回は条件を満たせなかったということ。


「意地でも我に回復されなくないらしいな。 回復を見越して雑な動きをしていたが、これは失敗だったようだ。 此奴ら……自害を厭わないほどには、度胸があると見える」


 それでも、ロドリゲスが敵の一人を抹殺した事実は変わらない。


「行動阻害の手札が失われたのは痛い、です……」


 フエンはその様子を一部始終見ながら、一部では安心もしていた。 それは、ロドリゲスが回復しなかったことではなく、カチュアが魔人化しなかったことに関してだ。 カチュアの言が事実であれば、彼女が中途半端に死に損なうことは新たな脅威の誕生を意味していたはずだ。


「このままでは──」

「次は──」


 フエンとロドリゲスがここからの動きに思考を巡らせようとした時。


「エスナ……?」

「あの女の魔法ではないな。 なるほど、これが例の……」


 押し寄せる濃霧。 一度モルテヴァの壁面にぶつかって跳ね上げられた霧が、瀑布の如く町を飲み込もうとしていた。


 フエンは霧の正体を知らない。


 一方で、ロドリゲスは十分に理解しているし予測も立っている。 もちろん、そこに確認されている存在のことも。


 そもそもモルテヴァが存在する理由は、未開域を調査することに端を発している。 モルテヴァ以外に複数の町が包囲網を敷いていることからも、未開域への脅威が伺える。 本来敵国同士の四国が協力関係を維持できているのは、唯一未開域に対してのみだ。 それほどまでに、未開域──霧の魔竜による被害はあとを絶たない。


「魔人エスナ……面倒な存在を引き入れおって」


 魔竜の息吹。 全てを狂わせる霧が、モルテヴァ全土を飲み込んだ。

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