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オミナス・ワールド  作者: ひとやま あてる
第3章 第3幕 Apostles in Corruption
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第98話 想定通り

「やはりお前は耐えるか。 防御性能は一級品だな」


 《滅波ルインウェーブ》の余波を受け、ついにモルテヴァは更地となった。 ロドリゲスを中心とした数十メートル級のクレーターの外に、立っているのはエスナだけだ。 少なくとも、ここには二人以外の姿は見えない。


「ゔッ……。 耐え切れては、いないけどね……」


 エスナの前面には《断絶セヴァレンス》による障壁が展開されている。 しかしながらそれはボロボロと各所が崩れており、貫通した攻撃の一部は彼女の身体を傷つけていた。


(ラフィアンとユハンに障壁を張ったぶん、こちらの防御が薄まったわね……。 迂闊だった。 おかげで万全では無い状態で対敵してしまったわ。 あとはニナ達だけど、無事逃げられたことを信じましょう。 見たところ領主は回復していないし、死者は出ていないはず)


「なるほど、こうすれば良かったのだな」

「なに、かしら?」

「霧だ。 吹き飛ばしてしまえば、お前の姿もくっきりと見える」


(どういうわけか、ロドリゲスは霧を克服してここまで来た。 でもまた霧に埋めてしまえば──)


「やめておけ」

「……?」

「この霧だ。 また我を閉じ込めるつもりだろうが、その度に我は先ほどの魔法を使う。 そうなれば困るのはお前の方だろう?」

「意味が分からないわ。 取り込まれたら困るような口振りだけれど」

「勘違いするな。 このような、完全に規模に寄った魔法程度では我は倒せん」


 ロドリゲスは相変わらず余裕の見える発言を溢している。 エスナにはそれが虚勢には聞こえないから困ったところだ。


「倒されたいの?」

「お前の底を見たいだけだ。 それにまだ、お前の生い立ちを聞いておらん。 お前を下せば、色々と話してくれるのだろう?」

「そうだったわね。 けれど、私の霧ならあなたを倒せるわよ」

「無理だな。 お前は我とこうなる前に人員を揃えるべきだった。 小賢しく下らない攻撃など繰り返さず、一心不乱に手数を増やすべきだったのだ」

「何を言っているの……?」

「我も個の極地に至ったとはいえ、個では数には勝てない。 その数も質が低ければ意味は無いが、我に勝とうとするのならそれ以外に方法は無かった」

「随分と饒舌に攻略法を教えてくれるのね」

「これはもう、お前たちには取り返しのつかない手段だからだ。 お前たちは仲間内で数を減らし、手札を失い続けている。 お前は真っ先に、不確定要素であるゼラを始末すべきだったのだ。 そうすれば、もう少しマシな結果に繋がったやもしれぬ。 だから──」


 ロドリゲスの姿が掻き消えた。


「──こうなる」


 エスナは違和感を脳で知覚する前に、後方の障壁を厚くしていた。


「ッ……!」


 衝撃がエスナの後頭部に突き刺さっている。


 エスナにそれほど驚きは無かった。 背後で攻撃を受け止めたという確かな実感があるからだ。 しかしそれも、ロドリゲスの意図した通りかもしれないが。


 エスナは障壁を細かく分散させながら、すぐに背後へ向き直った。


「お前はここで、我を引き付け続けなければならない」


 ロドリゲスから繰り出される拳の応酬。


「ぐっ……」


  エスナは反撃を許されることなく、防御に徹するしかない。


 拳の乱打。 乱打。 乱打。


(腕が四本あるせいで、動きが読めない……)


 断絶障壁は、身体から離れるほどに強度を減じる。 だからといって衝撃を体表面に張ろうものなら、貫通した衝撃だけで隙を生じる恐れがある。 そのためのエスナは、できるだけ体表面に近く、それでも離れすぎない位置に障壁を展開して攻撃をいなす。


(魔導書すら持たず、純粋な肉体能力と手数で攻めてくる……。 一番嫌な展開ね)


「フゥンッ!」

「ッ……」


 ロドリゲスが四本の腕を二組に分け、それぞれで拳を固めて順番に振り下ろし続けた。


 ミシ、ミシリ──。


 打撃のたびに障壁から破片が舞う。


「障壁の損壊が進んでいるぞ。 どうした、得意の魔法で攻めてくるが良い」

「簡単に、言わないでッ」


(領主も馬鹿じゃないから同時に腕四本も使って攻撃してくることはなさそうね。 腕を失えば魔導書は使えなくなるわけだけど、その場合の保険を掛けていてもおかしくはない。 やっぱり、防御はもう少し厚くするべきね。 攻撃に転じれば、一瞬で持っていかれる気がするわ)


 エスナは油断なく障壁を厚くした。


「なるほど。 現状、やや我の攻撃がやや劣るようだ。 褒めてやろう」

「どう……も!」


 攻撃が障壁に接触する瞬間、エスナは障壁を押し出した。 拳が弾かれ、ロドリゲスの身体が一瞬ぐらつく。


 隙を突いてエスナは地を蹴って後ろへ跳んだ。


「《凝集アグリゲーション》」


 着地までの間に、エスナの手元には霧の刃が握られていた。 そして着地と同時に大きく振るう。


「はっ!」


 刃の先から生み出されるのは、霧の剣閃。 霧の性質からそれほど速度は出ていないが、この魔法の本質は違う場所にある。


「空間リソースの変換か。 その全てを打ち払えば、お前は詰むのだな」


 ロドリゲスは剣閃を受け止めるべく片手を前に突き出した。 手掌を広げて受け止めるつもりらしい。 あわよくば握り潰そうという意思すら感じられる。


 その時、ロドリゲスの全方位から細かい霧の刃が姿を見せた。 それらは全てロドリゲスを狙って放たれている。


「手数が増えたとて──」


 全ての刃がロドリゲスに集中。 皮膚を裂く斬撃音が共鳴した。


 ロドリゲスはエスナから放たれた攻撃を文字通り握り潰した。 その他全ても、回避することなく生身で受けた。


「──我は倒せぬ」


 集中砲火浴びせたはずだが、ロドリゲスは微動だにせず全てを受け切っていた。


 ロドリゲスの皮膚には無数の切り傷。 しかし、それだけだ。 薄皮に裂け目を入れられる程度の攻撃力では、出血させることはおろかダメージさえ生じさせられていない。


(一連の集中攻撃でもほとんど無傷って、相当な魔法防御力ね。 攻撃的な性格じゃないことがこれほど悔やまれることはないわ。 でも、全くの無傷ってわけでもない。 それなら──)


「どうかしら……ね!」


 エスナは霧の刃を振るう。 ただひたすらに、空間リソースを消費しながら。


「ふん、無駄なことを」


 ロドリゲスは柔風でも受けるような佇まいでゆっくりとエスナに向けて歩み始めた。 腕の一本には魔導書が展開されている。


「《限定強化ディフィニット》」


 魔導書が掻き消え、ロドリゲスの身体が震えた。


(マナは領主の身体全体に色濃く広がって──)


 次の瞬間、ロドリゲスはエスナの目の前に居た。 彼の背後で、石畳が思い出したかのように破片を散らして爆ぜている。


 予備動作無く迫った脅威に対し、エスナは直感だけを信じて身体を逸らした。 頭部だけをなるべく遠くにずらしたという形か。


 ブ、シュ。 エスナの右頬からそんな音が。


(傷? どうして?)


 粉々に砕けた障壁の破片の存在。 それが、直感だけで動いていたエスナの脳に思考を伴わせてくれる。


(抵抗すら感じさせない拳の通過。 あの拳には、防御を無効化する類の魔法が纏われた。 攻撃力上昇どころじゃない付加効果があるわね。 犠牲魔法で間違いないけど、触媒はどこ?)


 エスナは頬に生じた熱の原因を探りながら、細かくステップを踏んでロドリゲスの攻撃を躱す。


 高速で乱暴に振り回されるロドリゲスの四腕。 脚は二本のため移動の軌道は読みやすいが、いかんせん腕の動きは別だ。


「急にッ、元気になるわね……」


 エスナの障壁を無視するようにして縦横無尽に駆け抜ける攻撃に、エスナは回避に専念するしかなくなる。


「どうした、押されているぞ?」

「殺したいならもっと積極的に来たら?」

「むしろそれが可能だから、困っているのだ」


 ついにロドリゲスの攻撃がエスナを捉えた。


「っぐ……!?」


 メキ、メキ──。


 ロドリゲスの拳がエスナの左腕に突き刺さり、それでもなお勢いは緩まず振り抜かれた。


「これで終わりではないぞ」


 単純な人間であれば、大振りによって動きに隙ができるだろう。 しかしそこは魔人化したロドリゲス。 構造が違う。 何もなかったように走り始めている。


「っ……」


(まずい、左腕が死んだわね……。 まともに動かせそうにない。 両方潰されるのは避けなければならないわね。 攻撃できない以外に大きな支障はないけど、領主を分析しつつ抱え続けるにはこれ以上余計なダメージは看過できない)


「《水鎖ジェイル》」


 エスナの身体に絡みついた細い鎖。 生み出された六本の断端は、どこに向かうともなく宙を揺らめいている。


「我を捉えるつもりか? 馬鹿なことを」


 ロドリゲスが速度を上げ、小刻みに地面を蹴ることで動きに機敏さを増す。 それに対してエスナの速度は決して上がらない。


 二人の距離が詰まり、ロドリゲスの攻撃による殺傷性が増してきているのをエスナも感じている。


「我を捕えぬのか?」

「それが無駄なことは百も承知よ」

「であれば、先にお前の思惑を潰そう」


 ダン──。


 一際力強く踏み抜かれた大地。 しかしそこにロドリゲスは居ない。


 エスナに影が覆い被さった。


(……上!?)


 エスナがこれでもかといった具合に身体を逸らすと、鼻先スレスレを拳が通過。


 エスナの視線がロドリゲスと一瞬交差した。 顔を突き合わせるほどにまで肉薄したこの状況。


「ん゛ッ!?」


 生じた破砕音と瓦礫の破片がエスナの視界を埋めている。 ロドリゲスの攻撃が地面を砕いたのだ。


 エスナに容赦なく叩きつけられる物理的余波。 攻撃を回避してから次の行動へ移ろうとしていたエスナだったが、連続的に生じる事象にまでは頭が回っていなかった。


 破片による直接的な被害は無い。 少なくとも、ロドリゲスの魔法は攻撃の余波にまで影響はしていないようだ。


 ロドリゲスは落下攻撃で、着地直後のしゃがみ姿勢。 エスナがそう思った瞬間、すでに次の攻撃に移っている。


「詰みだ」

「く、っ……!」


 ブゥン──。


 必殺の横薙ぎが再びエスナを砕こうと振り抜かれた。


「……ほう」


 ロドリゲスの攻撃はエスナを捉えていない。 彼はそれだけを確認して攻撃を続ける。


 同じく繰り返される攻防。 しかし明確な違いが現れていた。


「なるほど考えたな」


(上手くいったわね。 これでようやく攻撃に移ることができる)


 ロドリゲスの攻撃が当たる寸前、エスナの鎖が地面に杭のように突き刺さっていた。 鎖が収縮して彼女の身体を引き寄せることで、単純な身体機能だけでは不可能な動きを可能にする。


「今度はこちらの番。 《凝集》」

「またそれか」


 エスナの右手には魔導書。 左手は機能しない。 であれば、他の腕を用意するしかない。


 鎖の先々に霧が集まる。 そこにはやはり、刃が形作られてゆく。


「ここからは一味違うわよ」


 移動に用いられていない鎖が四本。 それぞれが意思を持ったように蠢き、そのたびに剣閃が放たれる。 同時に、周辺の霧からは小型の刃。


 鎖の攻撃速度は、エスナ自身の比ではない。 実質十倍ほどの手数は、それだけでロドリゲスを押し留める物量に変貌。 彼の全身に刻まれた傷が徐々に深くなる。


 ロドリゲスは移動しながら腕を振り回した。 生み出され拳圧が霧の刃を消し去るが、一時凌ぎにしかならない。


 ぼとり。


「……何?」


 ロドリゲスの腕。 その一本が地面に転がった。


(《断絶》を纏わせた攻撃なら……通る)


 切り落とされたとロドリゲスが気付くまでそう時間は掛からなかった。 しかしその時には、すでに断絶の刃が彼を刻み始めていた。



          ▽



「無事なのは……二人だけ?」


 ドミナとリセスの元に、続々と怪我人が運ばれてくる。 メイが魔物に乗せて搬送しているのだ。


「そうみたいだね」

「あの娘に守られてなければ、テメェも危なかっただろうが……」

「おや、ラフィアンはまだ喋れるみたいだ。 この中では唯一の一般人なのに随分と元気だね」

「黙りやがれ、クソ殺人野郎が……」


 ロドリゲスの襲来を受けて一旦は散り散りになったゼラたちだったが、今はここに集結している。 ここに居ないのはモノとレイシ、そして死に損ないのハンター。


「一応エスナの言う通りに毒薬を作成したから、それぞれ内服して。 あと、リセスがみんなから抗体を作成するから動かないで」


 エスナが戦闘を続けている間、時間の許す限り情報共有が為される。


「殺される前に毒で自害させて、最後の一人まで繋げる。 それしか方法はないわ。 エスナは自害する術があるというから任せてるけど、この場合、命の価値が低い順に出ていくしかないのよね」

「一斉に攻める、では……無理なわけ……?」


 ニナが苦痛を滲ませながら上体を起こした。


「まだ寝てなさいよ。 一応説明すると、一斉に攻めて誰かが自殺し損ねた場合が困るから、順番と言っているのよ」

「……分かった。 死に方は自殺で、いい?」


 ここで自殺を避ける方法を言い出さないあたり、誰もロドリゲスを簡単に倒せるとは考えていない。 エスナの霧が依然残っていることも、彼女がロドリゲスに苦戦していることを示す判断材料だ。


「毒の起動は外からも行なう。 どうしても死が避けられなさそうなら、こちらの判断で死んでもらうわ。 私とユハンは、それが可能よ」

「勝手だね。 まぁ……いいけど」

「だからと言って無駄死にさせるつもりはないわ。 可能な限りメイとニナの魔法は緊急回避に充てて、フエンとカチュアは変わらずサポートね」

「了解したです。 じゃあ、あとは順番を決めるです」


 どうにも揉めそうな内容だが、そもそも最初から勝ちが薄いためラフィアンですら文句は垂れない。


「一応最後に聞いておくけど、どうしても生きたいって人は? 領主討伐より命の方が優先的かって意味で聞いているわ」


 手が挙がったのは、ラフィアン、フエン、カチュア、ゼラ、メイ、そしてニナ。


「死にたくはねぇわな。 テメェらと違って明確な目的があるわけじゃねぇが、死にに行く理由も持っちゃいねェ」

「右に同じですね」


 カチュアが賛同する。


「これ以上賛同者が出ないわね。 他は違う意見ってことかしら?」

「私たち、は……一人でも残れば、満足」


 これがニナの意見。


「フエンかエスナが残ればそれで良いです」

「僕とメイなら、命の価値は僕の方が高いね。 かと言って無駄に長生きしてロドリゲスを気持ち良くさせるつもりはないから、先鋒は僕でも構わない。 君たちは諦め気味な雰囲気だけど、僕はそれほど悲観的じゃないからね」

「死ぬのも仕事なの」

「ユハンは相変わらず何考えてるんだか」

「……」


 ゼラの煽りも無視してユハンは俯いたままだ。


「あなたたちの意思も汲んで、順番と役割を割り振るわ。」


 順に出番が割り与えられていく。 これが本当に最後の作戦会議だろう。


「それにしても、レイシとモノの姿がずっと見えないのが不穏ね……」

「どこにもいないの」

「メイ、探し漏れはないのかい?」

「生き残りを虱潰しに探してるけど、見つからないの」

「居ないのなら仕方がないわね。あとはハンターたちだけど、そっちはどう?」


 ロドリゲスの回復ソースとなりそうなハンターは、メイの魔物が領域内を駆け巡って処理している。 そもそも彼女の魔物にやられる程度であれば、存在している方が邪魔でしかない。


「あとひと……り?」


 キィィィ……──ン。


 メイが言いかけたところで、全員が違和感に気付いた。


「ぐっ……」

「なんだァ……?」


 全員に等しく生じる頭痛。


「リセス、これって……」


 脳内で鳴り響く警鐘。


「へぇ、向こうもやる気みたいだ。 メイ、僕が先に行く。 そのあとで、全員を転移させてくれ」

「あい」

「転移、って……待ちなさい! 縮小範囲も分からないうちに──」

「《転移シフト》」


 まずゼラが姿を消した。


「どんどん行くの」

「カチュア、ついて来いです! 《浮遊フロート》」


 次々に魔物と入れ替わる者たちを尻目に、フエンも移動を開始。


 確実なのは、彼女らが現在居る場所は領域の範囲外になっていること。 であれば、領域離脱のペナルティが下されるまで時間はそう無い。


「順序決めが意味を失いましたね」

「そうでもないです。 最低限の行動指針は定まってるはずです」

「だと、いいですが」


(私の雷も、所詮は足止めとしてか作用していないのが残念ですね。 サポートとして死ぬ順番は後半ですが、そこまで私の価値は高くない。 上級魔法使いといえど、状況によっては使い物にはならないというわけですね。 エスナもまだ戦っているというのに、情けない限りです)


 カチュアはフエンの魔導書に捕まりながら、背後の未開域を見た。 瀑布のように溢れて迫る大量の霧からは、エスナが未だ諦めていないという様子が伺える。


「エスナを全力でサポートしましょう」

「当然で──抜けたですか」


 唐突に脳内の警鐘が止んだ。 領域内に戻れたのだろう。 ひとまずの不安は去った。 そう思ったのも束の間──。


「それにしても……」

「あまりにも狭い、です」


 縮小された領域。 ロドリゲスの仕業とみて間違いない現状は、これから挑む課題があまりにも高い壁だということを認識させてくる。


 ここまでは、エスナの魔法が規模の面で大きくロドリゲスを上回っていた。 彼が言うように、膨大な数に個人で挑むのは無謀だ。 この場合の数とは規模に相当し、個人とはロドリゲス自身の強度。


 領域が狭められた今、相対的にエスナの魔法的規模は大きく減じたと言わざるを得ない。


 領域縮小の意味を理解した者は、自身がロドリゲスの手の届く場所に居ることを具に感じ取った。 圧倒的強者と一緒に鳥籠へ放り込まれたということを。


「あれは……!」


 カチュアが思わず声を上げた。


 誰もが無視できないマナの鼓動。 発生源はモルテヴァのど真ん中。


 あまりにも強い魔法の産声は、これから起こる未来を容易に想像させる。 魔法使いではないラフィアンでさえ、その不気味さは拭いきれないものだった。


 音が消える。


 風が止まる。


 霧が明ける。


 しかし、静寂は一瞬。


 ロドリゲスの全身から放出される膨大なエネルギー。 それは個人から溢れ出すとは到底考えられない容量だった。


「《滅波》」


 黒い魔法は世界にロドリゲスの存在を知らしめるべく、凄まじい爆鳴を響かせた。

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作者の執筆力に繋がりますので、ギモン・シツモン・イチャモンなど、良いものも悪いものもどうかご意見よろしくお願いします。

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