第93話 舞い散る霧
霧立ち込める未開域──。
《死亡遊戯》指定領域のギリギリ内側を進んでいたハジメとエマ。 二人は思わず足を止めた。
「やっぱそうなるか……」
ロドリゲスはエスナやモノと交戦を続けながら、遠隔攻撃魔法を領域の外部へ向けている。 それは単純な魔弾のようで、しかし着弾地点では小爆発が周辺環境を荒らしている。
「エマ、危険感知を最意優先で頼む……!」
「はいっす……」
ここは空間魔法内における未開域部分で、ここを除けば身を隠せる場所はほとんど存在しない。
エスナらの戦闘は、概ね未開域と町の中間あたりで行われている。 今のところハジメたちが直接の攻撃を受けることは無く済んでいるが、そうでない者たちも居る。 身を隠さずに散り散りに逃げ出した者たちだ。 彼らはロドリゲスの魔法によって弄ばれ、次々と殺されてゆく。
「ああクソ、もう少し早く来るべきだったな……。 あれじゃ格好の的だ……助けねぇと」
「無理しちゃダメっす……! あの人たちはハジメさんとは何も──」
──関係ない。 エマはそう言い掛けてやめた。
「……? とにかく、領主はエスナを相手取りながら周辺に攻撃する余裕さえある。 というか、なんだ。 定期的に回復してやがるのか……?」
エスナの攻撃はロドリゲスに有効なダメージを叩き込んで切るように見える。
「お、おい……! 何が起きてるか教えろよ……!?」
状況判断に努めるハジメの背後で、狼狽えるハンターたちの動揺が際立つ。 彼らはメイグスの指示通り未開域内に身を隠すことを選択した者たちであり、狩られる運命を先延ばしにされただけの哀れな子羊だ。
「静かにしてくれ……。 さっきも言っただろ? あんたらは領主の魔法に囚われて逃げられないし、解放条件は伝えた通りだ。 どうせ戦わないと死ぬんだから、しっかり頭を働かしてくれ」
「だからって、あんなのと戦えって言われても無理だろ……。 モノとあの不気味な女ですらギリギリじゃねえかよ……」
エスナの防御能力が一級品とはいえ、彼女が攻撃を十分に行えていないところを見ると優勢とは言えない。 エスナとモノでロドリゲスを留められているか遊ばれているかは自明だろう。
「だからあっちが崩壊しないうちに次の策を講じなきゃならないんだろ? 思考の邪魔だから黙っててくれよ……!」
ハジメの怒声が響いたことで、周囲のハンターたちは少し静かになった。
ハジメとしてもエスナがみすみすやられるのを眺めているつもりはない。 領主という未知の敵を解析するには相当な時間を要することは分かっている。
(こいつら、狼狽えてないで自分で考えろよ……。 五月蝿過ぎて、まじで思考が纏まらないぞ……?)
今すぐ助力に馳せ参じたい気持ちと、行っても助けになるどころか邪魔になるだろうという気持ちが鬩ぎ合い、結果として冷静さを欠いた選択は取らずに済んでいる。 しかしながら周囲の騒音が不安を伝播させ、それが更なる騒音となってハジメの集中力を乱す。
「ハジメさん……」
エマが不安げな声を漏らした。 どうにもハンターたちが殺気立った雰囲気を纏い始めているからだ。
(エマに対する視線も妙だしな……。 暴動になって攻撃されないとも限らないし、俺たちが結界を出入りできるって知られるのも面倒だ。 アプローチを変えるか)
「ああ、ここに居ても碌なことが無い。 移動するぞ」
「はいっす……」
「て、てめぇ! どこ行きやがる……!?」
動き出したハジメとエマを見て、ハンターたちから怒号が飛び交い始めた。 彼らがそれぞれ武器を手にしたことから、二人は急いでその場を離れる。
背後から迫る者たちの余裕の無さを見て、ハジメは憐憫を向けた。
(ああなったらお終いだな……。 ギリギリの精神状態だったんだろう。 せめて助けようと思ったけど、もう関わってやるつもりはないな)
彼らは役に立たないどころか、ハジメたちへ牙を剥いてきた。 助けてやる義理もないため、ハジメは彼らを軸とした戦略の可能性を捨てた。
ハジメは走り続ける中で、リセスの言葉を思い返していた。
『あなたたちは好きに動いてください。 もし逃げる場合は一声だけお願いします』
『そんな勝手なこと……』
『あなたたちの選択肢は、逃走、戦闘、補助……この三つ。 逃げるのも良いでしょう。 戦うことは推奨されません。 あくまで参加するというのであれば──』
(これは俺が悪いのもあったけど、取り残されたハンターたちを制御しながら作戦を立案するのは無理だった。 俺たちの特殊な立場を鑑みると、やるべきは増援を呼ぶことだな)
「エマ、奥に向かうぞ」
「え、本当に……?」
勢いのまま、二人は結界の壁をするりと超えた。 ハジメはその一瞬だけ恐怖を感じたが、何とか抜けられたことで安堵感が訪れる。
「魔人でも何でも、使えるものは使うしかない」
「間に合うっすかね……」
これから向かうのは、数時間前にハジメが訪れた未開域の奥地。 ユハンの話では、ウルを含めた魔人が潜んでいるという。
(目的地まで、徒歩では数時間掛かった。 《強化》で高めた身体機能であっても、往復で何時間だ……? エマを連れていることも考えると絶望的な時間経過。 だけど変に参戦して、無駄に場を掻き乱して死ぬよりは幾分かマシだ)
「今は外部からゲニウスも補助してくれてる。 だから信じるしかない」
「そう、っすね……」
▽
「……ふん、生意気な女だ。 しかしその耐久にどんな意味がある? そうしている間にも、囚われたハンターどもが次々に死んでおるぞ?」
「はぁ……はぁ……」
「防御系統の魔法とは元来、相当な量のマナを消費するものだ。 だからこそ貴様のそれは既に常人の域を超えているが、所詮は人間の限界を僅かばかり超えたに過ぎん。 腕一本程度の完全魔人化では、我には及ばんぞ」
「完全、魔人化……?」
エスナが問いを投げたことで、ロドリゲスは動きを止めた。
ロドリゲスは腕を組んで大仰に構えているが、腕は合計で四本構えられている。 それらは全てエスナと同様に黒く染まっており、人間の形状すら保たれている。
「知らぬとは異な事よ」
「私のこれが……はぁ……あなたと同じとでも言いたいわけ……?」
「異形化とは魔人への導入。 形態復元を以て魔人化は完了する。 貴様のそれはこの過程を踏んできたであろう?」
「知らないわ……そんな過程。 勝手に知った気に、ならないで」
「ふむ、これは奇妙な症例だな。 であれば、どうやってそれを為した? 生来のものであれば、その年齢まで生き長られていることはあるまい。 処分されていて然るべきだからな」
魔人が増加しているこの時代、生まれつき身体の一部が異形化している者も珍しくはない。 それらは生後すぐ殺処分され、産んだ母親さえも同様の末路を辿る。 だからこそ、異形かを残したまま生存可能なのは、後天的にその身を穢した者のみだ。
「そんなことが知りたいの?」
「魔法の解明とは、未知の探求だ。 目の前に転がっている未知を拾わずして何が魔法使いか」
「その姿で魔法使いと言われても困るのだけれど」
「なに、減るものでもあるまい。 どうせ死ぬのなら、最期くらい会話に興じても良いのではないか?」
「随分と悠長ね。 その間に私たちがあなたを屠る算段を立てられないとでも思っているのかしら?」
「好きにすれば良い。 我の勝利は揺るがん。 この万能感、この全能感を以てして達成できぬものなどないのだから」
ロドリゲスの言葉には、圧倒的な強者の余裕が垣間見える。 確かに、それを裏付けるだけの実力が彼にはある。
「モノ、行っていいわよ」
「何を言うのです」
「力不足だから下がりなさい。 こう言わないと分からない?」
「何を巫山戯た事を」
「いいじゃない。 ユハンと一緒にいてあげたら? どうせ皆死ぬんだし」
「……本気で言っているのですか?」
「ここまでのやりとりで勝てないことは理解できたはずよね? 上限のある魔法無効化なんて、圧倒的な物理攻撃の前では無意味だったでしょ? 私たちの戦いに着いてこれないんだから、居てくれても迷惑だわ」
「諦めるのも結構ですが、今後私たちの邪魔だけはしないでください」
モノが憎々しげな声を残しながら去り、エスナとロドリゲスだけが残される。
「随分と乱暴な別れだ」
「別に仲良しこよしのお友達というわけでもないから。 さて、これで邪魔者は居なくなったし、好きに質問していいわよ」
「ふん、妙な女だ。 何やら内に秘めたものがあるようだが、見逃してやろう。 では、貴様が魔人化した経緯を全て話せ。 そうすれば苦しまずに殺してやる」
「魔人になると慈悲を覚えるのかしら。 そうね……じゃあ──」
敵同士だというのに、戦場の中心で繰り広げられる奇怪な光景。 ロドリゲスは研究的興味から、エスナの悠長な会話にも耳を傾けている。
「──って訳。 そこに私の意思は介在していないから、勝手に分析するといいわ」
「ふむ……因子は異形化した父親と、親しい人物の死。 接続状態も関連している、か。 状況再現は困難だが、いや、或いは……」
エスナは体験した内容を事細かに説明した。
ロドリゲスは満足したような口ぶりで、顎に手を当てて思考を巡らせている。
(言っても四半時くらいの経過だったけど、ある程度の時間稼ぎはできたかな)
エスナが目線だけで周囲を俯瞰すると、姿を見せている人物はいない。 恐らく未開域部分に隠れ潜んでいるのだろう。 かといって隠れられる場所も限られているため、そこを攻められれば一気に瓦解する可能性も高い。
(領主は、いくら傷つこうとも人間を殺すことで回復できる。 だからこそ、決めるなら一撃でやらなくちゃならない。 ここまでのやり取りでフエンちゃんも気付いてくれているはずだし、気付いていると期待して動かないとダメね。 とはいえ、タイミングがシビアなのよね。 どうしようかしら……)
ロドリゲスも無敵というわけではない。 エスナの攻撃も届くし、身体の一部を欠損させられる程度には戦えている。 しかし、そこまでだ。 ある一定以上のダメージを受けるとロドリゲスは殺人を経て回復に走るし、いつまでもエスナの相手をしてくれるわけでもない。
(だだっ広い空間にこっそりと私のマナを浸透させるのは骨の折れる作業だから、攻撃開始までにはもうしばらく時間が欲しいのよね。 魔人化率の高い領主を相手できるのは同様に魔人化してる私くらいのものだから、誰かに時間稼ぎを頼むのも難しいし。 やっぱり、私ももう少し人間を辞めないといけないのかな)
「ときに──この霧は貴様の仕業か」
「……!?」
(え? 私のマナに気づかれても、それが霧とは直結しないはずなんだけど……。 いつの間にかマナの操作を誤っていたのかな。 マズいわね)
未開域は水分に富んだ広大な密林であり、高々とした木々の上空は濃霧に覆われた空間。 エスナはゆっくりとマナを放出し、霧を自らの武器として掌握している最中だった。 エスナは霧を武器庫として、大量の攻撃手段を生成することで回避不能の攻撃を叩き込むつもりだった。
エスナの主な攻撃手段は、《断天弾雨》にあるように水滴を高密度の弾丸に変えて打ち出すものだ。 これはラクラ村最後の夜の経験に起因しており、彼女の無意識下で雨は恐ろしいものと認識された結果の産物だ。
「何を驚くことがある? 魔人であれば、マナに敏感なのは周知の事実であろう。 まさか我が気付かないとでも考えていたのか? 愚かな女よ」
「ふぅ……」
エスナは一度思考を立て直す意味で、大きく息を吐いた。
「気付かれたのなら仕方ないわね。 でも、無抵抗の私を殺しても仕方ないでしょう? だから最大限、楽しませてあげようかと思って」
「下らんな。 我は、戦うことそのものに快楽を覚えるような程度の低い存在ではない。 往々にして、そのような者の末路は決まっておるからな。 既に必要な情報は得た。 これ以上貴様のお遊戯に付き合ってやる義理は無い」
「あら悲しい。 じゃあ……そうね。 これならどう?」
「な、に?」
エスナが徐に両五指を合わせた。 祈るような仕草の先には、左手に侵食する黒化が見える。
「出来ることなら……レスカにはそのままの私を見せてあげたかったんだけどね」
「何を言って──いや、何をしている?」
「見たままよ。 可能性を広げるためなら、私はなんだって、するわ……っ」
エスナは侵食に伴って苦悶様表情を強め、それがロドリゲスの研究意欲を刺激する。
「異形化を経ない魔人化か。 苦痛を伴うことも含め、これは非常に興味深い症例だ。 続けると良い」
「あら、そう。 じゃあ……遠慮なく」
(このペースで人間をやめると今後が思いやられるのだけれど、まずは生き残ることを考えましょう)
魔人化は、エスナに更なる力を漲らせてゆく。 それと同時に、人間性が損なわれつつあることもエスナは実感していた。
「ゔッ……」
エスナが五指の接触を解除してもなお、左腕の侵食は緩まない。 まるで意思を持ったような動きで黒が彼女の腕を塗り潰し、魔人としての能力を際立たせる。
(大気中の水分を通して、知覚領域が広がっているわね……。 このマナは確か、レイシとゲニウスね。 闇属性にダメージを期待できるレイシに加えて、ゲニウスの治癒能力は大いに期待できる。 だから、こっちはこっちで心置きなくやっちゃいましょう)
「貴様はここから、一体何を見せるつもりだ?」
「新しい魔法よ」
エスナが魔導書を具現化させた。 脈動するような存在感を振り撒くそれは、徐に新たな頁を見せつける。
「随分と都合の良いこともあるものだな」
「不思議かしら? でも、私にとってはそうでもないの。 だって私には──」
ヤエスの皮を被った魔人。 その最後の抵抗は、命を全て擲ってでも世界を壊さんとする意思の拡散でもあった。 エスナは右腕を飲み込まれたわけだが、当然ながらそれは彼女の肉体だけでなく精神をも犯し始めていた。
魔人ヤエスの消滅とともに、エスナの内側には父親の残滓が流れ込んだ。 それがまず右腕の侵食を食い止めた。 エスナはその後、リバーの遺体から入手した魔核を取り込んだことで彼の残滓も獲得。 二つの意識がエスナの暴走を食い止めており、両腕を魔人化させてもなお強固に彼女を守り続けている。
(──リバーさんだけじゃなくて、お父さんもついてるんだから)
エスナは自らの内側に、彼らの姿を認識したことはない。 しかしながら、仄かな残滓が彼らの存在可能性をちらつかせており、それが彼女の精神安定化をもたらしていた。
「……? なんだ、続きを言え」
「嫌よ。 聞きたいなら私を下してからにしてくれる?」
「生かさず殺さずとは、難しいことを要求するではないか」
エスナの魔導書には夥しい量の文字と魔法陣が浮かび上がり、数ページに渡ってその内側を埋めた。
エスナが右腕の代償で得たのは、近・中距離攻撃に特化した《断天弾雨》。 そして今回、左腕の代償と彼女を取り巻く状況からもう一段階上の魔法が花開いた。
「じゃあ、見せてあげるわ。 空間型魔法──《万霧万象》」
未開域を覆う無数の霧が、意志を持ったようなうねりを見せた。
「む……?」
瀑布の如く、雪崩れ込んでくる霧の重圧。 ロドリゲスはそこに特別な危険性を感じなかった。
「あまり驚かないのね」
「空間型と聞こえは良いが、そこに攻撃性を感知できぬからな。 規模に大半のリソースを費やした魔法など、個の極致に達した我には意味を成さない。 期待外れとはこのことだ。 判断を誤ったな、魔人エスナ」
「過誤かどうかは、その身で体験するといいわ」
風にエスナの髪が靡いた。 霧を伴った冷たい空気が吹き荒れている。
モルテヴァを含めた一帯が、徐々に白く薄らいでゆく。
この時、未開域奥地にてエスナの魔法に感応する存在があった。 それはゆっくりと、引き寄せられる様に動き始めた。
▽
未開域。 人間の手が及ばない場所は、総じてそう呼称される。
モルテヴァの北部に見える未開域だが、これはエーデルグライト王国の中南部を埋め尽くしており、ヴェリア公国やトラキア連邦にまで広大な範囲を占めている。
モルテヴァからトラキアを目指すのなら、未開域を真っ直ぐ突っ切るのが最短距離だろう。 しかしそれは全く推奨されない。 未開域とはつまり魔物の巣窟であり、正常な思考の持ち主であれば奥深くまで進むことは一考する価値すらない。
一方で、魔人の出現母地は概ね未開域だろうと判断されている。 実際、ラフィアン率いる調査隊が魔人と遭遇しているし、その他類似する事例が世界各地で見られている。
エーデルグライト南部ではモルテヴァが率先して開拓を推し進めており、各国の大きな都市が未開域を取り囲むように配置されている。 未開域が魔人を産むのか、魔人が未開域に生息しているだけなのかは未だ不明だが、いずれにせよ人類として開拓すべき場所なのは間違いない。
「お父さん、ちょっと見て!」
「どうした、シノン?」
エーデルグライト王国、リーヴス領東部の町──イズカ。 その郊外に位置する高原には、物見櫓のような居宅が設営されていた。
シノンと呼ばれた褐色肌の娘は単眼望遠鏡を覗きながら、同じく褐色肌の父トナライを呼んだ。
トナライは急いでハシゴを駆け上がり、シノンの居る高台から未開域を眺めた。
「なるほど、あれか。 あの方向で未開域を担当している都市は……」
「ヒースコート領の……えっと、モルテヴァ? じゃなかったっけ?」
「そうだ、その方面はモルテヴァだ。 してシノンよ、あの動きをどう見る?」
彼らの視線の遥か先では、未開域を覆う霧がおかしな挙動を見せている。 まるで意志を持ったかのようなその動きは、とても自然に引き起こされたものではない。
「ちょっと待って。 でも……ううん、多分間違いないと思う。 あ! ほら、見てよ!」
シノンが指差したのはモルテヴァではなく、そこより遥か北部。
未開域は概ね全範囲が霧に覆い隠されているわけだが、シノンの指した場所だけは違っていた。 その地点の霧が寄り集まり、直下の緑樹が姿を晒し始めている。
寄り集まった霧は形を変え、とある生物を模した姿を呈している。 それはまるで──。
「おお、あれはまさしく“霧の魔竜”! やはりこっちに移動してきておったか! これは王国に来て正解だったのう!」
「言った通りでしょ! 私の予想通り!」
「よくやったぞ、優秀な娘よ」
「ほらお父さん、急がないと! 観測に遅れちゃう!」
「焦るな、シノン。 準備に時間が掛かるでな」
「じゃあ私は先に町に行って馬を借りてくるから、あとで合流ね」
「おうさ」
父娘は、嬉々として準備に取り掛かる。 彼女らはヴェリア公国出身のハンターであり、未知の調査を主な活動としている。 その中でもとりわけ、未開域に関する事象が彼らの調査対象だ。
今回彼らの目の前に現れたのは、竜の姿をした霧状の高濃度マナ凝集体。 太古より度々観測される、霧の魔竜と呼ばれる自然災害。 度々人界に現れては、あらゆる生命に害を及ぼす災厄の一つ。
「ハッ……ハッ……ハッ……!」
大量の荷物をリュックに詰め込み、シノンは走る。
「霧の魔竜! 今度こそ謎を解き明かしてやるんだから!」
魔竜の活性化をかわきりに、アルス世界は激動の時代へ突入してゆく。
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作者の執筆力に繋がりますので、ギモン・シツモン・イチャモンなど、良いものも悪いものもどうかご意見よろしくお願いします。