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第6話 ボッチの久々の女の子との会話

 


 チク、タク、チク、タク。


 うむ普通に気まずいぞこれは。


 他に誰も居ない教室で親しくもない人間と2人きりのこの空間。


 しかも相手は美人の異性と来たものだし、すでに向こうから嫌われているだろうことは容易に推測できる。


 ドアを向いたまま彼女の方へと振り返るのに勇気がいるぞ。


 視界の左上端に注目してみるとすでに午後5時を軽く過ぎてしまっているため、窓から差し込む夕焼けが2人の影を床に軽く映し出している。


 この妙なことの成り行きは過去に体験した図書室での告白場面を彷彿とさせるものだった。


「……ん……」


 だが俺は知っている。ラブコメが起きるのはラノベやアニメの中の世界だけでのみであって、現実には存在しないということを。


 ましてや初対面から嫌われているとも来た。そんなことが現実にも反映される確率は万に一つも無いだろう。


『──これからも友達としてじゃダメかな』


 また不意に過去の告白で受けたセリフを思い出した。


 ふっ。もう二度とあんな思いを蘇らせないためには女の子に対して薄情で愛想の無い素振りを前面に出し、軽薄ぶるのが一番効率的で手っ取り早い。


 そして藤村に更に嫌われることで部を追い出してくれる一石二鳥の状況打開の戦略なのだ。


 トットッ。


 そのために俺は藤村を威圧することにした。作戦はこうだ。


 両手をポケットに突っ込みながら振り向きざまに眉を中央に寄せて力をこめた。


 ヤンキーさをより強調する顎を少し上げて視界の下半分辺りで相手を見つめるのがポイントだ。


 どうださぞ怖いであろう?これから「……何してるのあなた?」と不審に思い問いかけられたら「お前の血肉を食らってやる。そのための分析中だ」と言ってさらに好感度を下げる。


 ──よし俺の脳内シミュレーションは完璧だ。いざ作戦実行だ!


「……ふんんっ……」


 そしてこのまま鼻息を露骨に噴射しながら藤村の反応を窺う。


 するといつの間にか再開させていた読書からこちらに目を向けると、無言で俺の眼球にその猫のようなくりっとした両目を据えてきて人睨みしてきた。


「……」


 ギロリ。


「……うぅっ……」


 無意識な謎の圧力に屈してしまったのかウブなリアクションを返してしまった。


 何やってんだ俺は、作戦が台無しじゃないか。


 今のは生物として敗北したみたいでなんだか悔しいぞ畜生。


「はぁ、その態度が気に入らないわね。棒立ちしてないでさっさと座れば?」


 なぜか彼女には逆らってはいけないような雰囲気を感じてしまい言う通りに。


「……はい、すいません……ではお言葉に甘えて」


 俺は後ろに積まれていた机と椅子と1セットだけ、比較的綺麗な状態のものを取り出した。


 さて肝心のポジショニングだが……。


 うーむ、ここは無難に藤村が座っている位置と反対側に陣地を据えようか。


 俺が物音を立てていた間にも藤村は相変わらず読書に勤しんでいたようだ。


 あの職権濫用女の如く自由奔放なやつだな。


「……ん……」


 机と椅子の配置を終えて自分の席に座ったのは良いものの、完全に手ぶらなため続きが気になっていたラノベの書籍はまだクラス内の机に入りっぱなしだ。


 ここで携帯ゲームをする選択肢もあるがあまり気が乗らない。


 なんせ俺はボッチだった影響でスマホゲームで面白いと感じたゲームにとことん時間を費やせたので、無課金縛りプレイでもそこそこ上達が早かった。


 なんなら中学時代から流行ってたパズル&モンスターでランク800代にまで上り詰めている。


 ゲーム内で様々なダンジョンをクリアしてガチャを引いてを繰り返してるうちにほぼほぼテンプレパーティが完成してたりするからな。


 それに最近はスマホゲームに対する熱意が失われてきたという理由もある。


 それにSNSを開いて他の生徒の投稿をじっくり眺める趣味も俺には無いためどうすればいいんだよこれ。


 目的の無い寝たふりも無意味だから暇だし読書中の藤村の人間観察でも初めようか。


 それにしても藤村がこうして読書してる姿は様になってるな。


 姿勢がピンと張ってて真っ直ぐで、文字を追っている横顔もなかなかの美しさだ。


 ──書籍の表紙のタイトルを見てみると、『嫌われる勇気』だった。


 少し驚いた。俺も普段はラノベばっかり読んでるとはいえ稀に脳味噌に栄養分を与えるかの如く定期的に自己啓発書の類も読み耽りたくなるものだ。


 何よりあの完璧少女のような人間もがそういうの読むのに非常に興味がそそられた。やはり同じ読書愛好家として仲間意識のようなものが芽生えてくる。


「──チッ、何か?」


 2人きりになった途端に舌打ちだと?なんだよ怖過ぎるだろこの子。


 まさか先週に書籍を落としてしまったことをまだ気にしてるのだろうか。


 いやあの頭脳明晰な才女がそんな細かいことを気にするような性格じゃないと思うんだが。


 いやまあ読書中に視線を向けられたら集中の阻害になるからウザいと感じてしまうのは分かるんだがいきなりは勘弁してくれ。


 しかもギロリと睨んできたと思うと視線をまたすぐに文字に向け直して追ってる。


「……この状況が把握できてないから、仕方ないだろ……そもそもここは何部なんだ?」


 教室前のプレートには『〜部』という書き出しも特に見かけなかったし、部員が藤村1人だとしたらそれはそれで意味が余計に分からない。


 すると顔と視線だけをこっちの方に向けてきた。良い進歩だと捉えようか。


「……はあ。なら逆に聞くわ、あなたは何だと思う?」


 質問に質問で返してんじゃねえどんだけ嫌味が好きなんだよ。


 ……けどそうだな、向こうは最初から読書しかしてないし俺が連れて来られなかったら1人きりだったろう。部活動の内容が読書だとすると推理は至極簡単だ。


「──読書部だろう?」


 そんな部活の名前があったかは覚えてないが勝手に作った。


「ふーん、どうしてそう思ったの?」


 意外とボケもイケるタイプだろうか。


「藤村が特に何もない教室内で終始読書に励んでいたからだ。それに」


「いきなり呼び捨て?」


「えっ……いやまあ、嫌だったらさん付けに──」


「別に構わないわ」


 それで良いんかい。

 だったら突っ込むなよ一々俺のセリフに割り込んできやがって。


 学校内で俺が喋ってる瞬間なんて超激レアなイベントだぞ今この瞬間を大事に大事に噛み締めたまえ、ここまで俺が同学年の女子と話したのは初めてなんだからな。


「……それにうちの花園高校で読書が好きな人間なんて逆にあまりいないだろう。だから今まで部員が1人も集まらなかったら想像に難しくない」


 特に国際文化科の連中なんてほぼほぼパリピハウスと言っても差し支えのない空間だし、俺のクラスでも休み時間に読書してる奴なんて俺以外に居なかろう。


 まあそれはこの学校の特性故にそういう人種が集まっているとも言えることだ。


この作品を読んで、


『面白かった!』

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『今後どうなるの?!』


と思ってくれたら。


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