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第13話 ボッチの昼休みでの一幕



「今日もここで食うか」


 4時間目が終わり昼休みになったので俺は購買で買ったサンドイッチとバナナ&ミルクジュースを持って移動して辿り着いた。


 俺専用のボッチ絶景スポット、プラス日光除けの屋根付きだ。


 何とここからグランドを通して奥に聳える山々と空が眺められるのだ。


 体育館の外側で2階へと続く階段の裏だから普段人は来ないし、去年は夏で暑すぎても日陰スポットになっていたから涼しかった。


 そこのベンチに腰掛けると早速チーズ&ハム入りと卵&レタスハム入りのサンドイッチを開封。


「美味いな」


 モグモグ。この妙に噛みごたえのある食感と味が堪らないな。


 まあ俺がただチーズに目がないだけかもしれないが、チーズがトッピングされてるだけでほぼ全ての食べ物が絶品に変貌してしまうから不思議なものだ。


 特にイタリアン料理でパスタとかラザニアにチーズが乗せられた料理を食うたびに俺の頬っぺたは落ちることがもはや確定事項だ。


 うーむ最近はイタリアンを食べていないからそろそろ専門店に行ってみようかな。そう考えてたときに。


「……から……で……!あ……そ……うつ……に俺……は心底……した!」


 なんだ……?


 少し遠くから声が聞こえたので対面のベンチに座り直してみた結果。


 これは俗に言う、愛の告白の真っ最中だろうか。


「なので……今後も、恋人としてあなたと向き合いたいです……!」


 壁際からそっと覗き込むんだ瞬間に目を見開いた。


 なんとそこで藤村が告白を受けていたのだ。


 まあ河南くらいじゃないにせよ彼女もこの学校で相当な人気者だからこれも彼女の学校生活の一部なんだろう。


「へー」


 けどこうして実際に誰かの告白の現場を目撃したのは初めてだな。


 初見で見た感想としては、お熱いねぇ。


 まるで大人の階段を登っているかのようだ。


 いや何の?かは俺にもわからないが、とにかく一生懸命な様子だな。


 一方で片方が冷めてるせいで運動エネルギーの釣り合いが取れてないな。


 あれは温度差が激し過ぎてグッピーが死ねるレベルだぞ。


「……なので……」


 まるで大乱闘ゲームの上Aコマンドを溜めるようなモーションで、両手と目をぎゅっと絞って最後のセリフを吐く準備を整える。


 中学時代で現実恋愛の良さをとうに忘れてしまっていた俺だが、こういう誰かの一生懸命な場面を見るのは久しぶりだからつい夢中になってしまう。


「僕と付き合って下さい!!」


 咆哮からの135度のお辞儀。


 うん改めて観測者の立ち位置で状況を俯瞰してみたら中学時代の俺もあんな感じだったんだろうか。


 何かに全力で向き合おうとしていてどうしても掴み取りたかったものがある、そんな時期も。


 思い出はすでに遠くの日々となってしまったが。


 好きな人に好きだと伝える。


 挑む側は世界に立ち向かうかのような覚悟を決めてその張り裂けんばかりの思いを伝えるのだ。


 確かにドラマチックに演出しているドラマや映画を見ればこの状況を「素敵……!」だと感情移入したがる程に視聴者をグッと惹きつけるものだと言うことは分かっている。


 ゴクゴク。バナナ&ミルクも美味いなぁ全く。


 それでも一度失敗した俺には分かっている。


 これも交渉の一種だということを。愛の告白とは言わば相手を自分の生活の一部に取り込む権利をくれないか、という一方的な要求の突きつけに過ぎないだ。


 それを受ける側にもメリットがあれば飲むし同じ気持ちだったら受け入れられて、その他はサヨナラの2択だ。


 けど相手はあの藤村だ。どう返事するんだろうか。


「そしてやがて僕と結婚して下さい!!」


「ブフーッ」


 重っ!?と思ったと同時に鼻からも牛乳吹いたじゃねえかよ、不意打ちで笑わせやがって。


 俺の貴重なジュース返せやマジで勿体ねえ。


 と思いつつも笑いが止まらない。


 まさかこんなに重い付き合いを高校生がご所望するとは思ってなかった。


 しかもこの光景は俺に身に覚えがあり過ぎる展開だしな。


「クックックックック……」


 目の前の地面に栄養が吸収されてしまったが幸いにも距離があったせいで俺がここに居ることは2人もバレていないようだ。


 さて青春で切り取られたような状況を再び目一杯楽しむとしようか。


 もう一度覗きをしていく。


「……はあ、絶対にお断りするわ」


 随分とバッサリ行くんだなオイ。まあそう言うと思ったけど。


「私は恋愛に全く興味が無いもの。結婚を前提とした付き合いなんて論外ね」


 一切の容赦なく辛辣な言葉を浴びせていく藤村。


 瞳の温度も冷たい気がするな。まるで蛇に睨まれた蛙の如く縮こまる相手の男。


 まあ流石にそれは最初からハードルが高過ぎると思うんだよな。


「そもそもあなたと恋人になっても百害あって一利なしね。むしろ私の貴重な時間がこうして奪われてるだけだから逆に迷惑なだけなの」


 淡々と言葉を紡ぎ出してることから本人も良い加減うんざりしてるだろうことは何となく察せられた。わざわざ相手を突き刺すような言葉を選んでるようだ。


「私もそろそろ飽きてきたの。だから他の連中にももう告白しに来ないように言ってくれるかしら。石ころはどれだけ磨きをかけようとも路傍の石よ」


 徹底的に相手の男の恋愛感情の芽を摘む考えか。


「うぅぅ……」


 おいおい泣き始めたぞ。どうする藤村?


「もう用がないなら目の前から消えてくれるかしら?サヨナラ」


 慈悲のかけらもないな。


 ──モグモグ。


「っ……ごべんなざぁい……!」


 そういうと相手の男は遠くへと走り去ってしまった。


 もう2度と自分に告白をしに来ないように相手の男の恋心をくっしゃくしゃに踏み躙る意図で完膚なきまでに叩き潰す藤村。


 それも男のプライドをズタズタに滅多刺しする勢いで実際に言われたらたまったものじゃないだろう。


 一見残酷に見える一幕だったが、無意識かはわからないがそれも相手の男に対する気遣いにも思われた。


 何せキープの真似事をして自分の承認欲求を満たそうとああいう連中から「私って求められてる」という感情に酔いしれるタイプの女性も世の中に居るからな。


 これはうちの花園高校でも例外じゃない。


 その反面藤村が今したのは相手の恋心を徹底的に追い詰めることで気持ちを冷まさせることを図っているのだ。


 それは言外にお互いの時間を無駄にしないための親切な行いに思えた。


 あいつにも意外と良いところがあったんだな。まあ点藤村は変わってるとも言えるが、ああいう性格だし本人からすればただただ面倒臭いだけだろうな。


 まあこれで一件落着だな。ということで再び自分の世界に浸ろうか。


 さてサンドイッチの最後の一切れを食べてしまおうか。


 モグモグ。


 ……やっぱりチーズとハムの組み合わせは格別だな……。


「っ!あら荒牧くんじゃない」


 グラウンドに視線を向けたまま食べ続けていると、藤村が教室に戻ろうと道を引き返したせいで鉢合わせてしまったようだ。


 てっきりこれから反対方向にある食堂に寄るものとばかり考えてたから意外だ。


 こりゃ流石に聞き耳を立てていたことにバレたかな。


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