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第12話 ボッチとマドンナの馴れ初め



 4限目の退屈でつまらない現代社会の授業を聞き流しながら、改めて河南との思い出を軽く振り返ってみる。


 

 ※



 ()()()()、気が付いたら河南からちょくちょく話しかけられるようになっていたのだ。


 まあこの頃の俺は嬉しく思う余裕は無くはた迷惑に感じていたから、全体的に必要以上に河南に対して冷たい態度をもってあしらっていただけなんだが。


 教室の端っこの席でひっそりと本を読んで過ごしていたあるときだった。


「──何読んでるの、ラップくん?」


「……ラノベだ」


 クラス中の男子が一度は彼女に惚れて、一度はフラれた事があるのだという噂が出てるのだ。


 そんな渦中の中心人物が今、俺のようなモブに話しかけているのだ。しかもあだ名で君付けって、なんだか普通に呼ばれるよりも気恥ずかしいなこれ。


 ちなみに俺の本名の荒牧ラファエロの、下の名の正式名称はRaphaeloだ。


 そこから最初の3文字を発音しただけのゴロがそのまま俺のあだ名となった。


 恐らく1年生の春の三者面談で片岡先生に知られたことで広まったんだっけ。


「へ〜ラノベか〜。どんなお話なの?ラブコメもの?」


「……内容が気になるなら自分でググってくれ。それか買って読め」


「え〜それじゃあつまんないじゃん。アタシに直接教えてよ〜」


「はぁ、嫌だよめんどくさい」


 毎度毎度お疲れ様だなと思うが、なんで俺にそこまで構ってくるんだ?


 それともなんだ、クラスで唯一俺だけが彼女に告白してないからなのか?


 それでマドンナとしてのプライドがそれを許してないんだとしたら。


 これはこれでかなりめんどくさい案件だぞ。


 ──また違う日にもそれは続いた。


「ラップくんおはよ〜。今日もカッコいいね」


「本気でそう思うなら眼科にでも行ってきた方が良いんじゃないか?」


 こんな寝癖の凄いやつが読書してる姿がカッコいいとか、新手の嫌がらせか?


「ねね、その本の表紙カッコいいな!その人めっちゃ強そうだね!」


「……実は作中で一番弱かったりするけどな」


 盛大にネタバラシになるが、どうせ読まないだろうし別に良いだろう。


「お〜!その表紙の女の子たち皆可愛いね!しっしっし、さてさてはラップくん。実はこういう子らがタイプだったのか〜?ふむふむムッツリさんだね〜」


「っ!?ほんとうるっさいヤツだな、そんなんじゃねえよ。……はあ」


 俺はラノベを読む度に表紙を外して机の上に置いていたんだが、コンニャロめいつまで俺が裏に置いてる表紙を捲ってはネタにすれば気が済むんだよ。


 よしやっぱり面倒臭いけど、もう今日からラノベの表紙は机の中に入れることにするか。


 まあ話しかけられると言っても別に毎日とかでも無く、ほんの週に数回程度の頻度だったんだが、この光景がクラスで起きるたびに注目もされていたのでそれが嫌だった。


 冷たい態度取っとけば女の子は嫌がるはずなのになんでめげないんだこいつ?


 ──そんな俺の塩対応に周りの連中が興味を持ってインタビューまでされた。


「お前アリサちゃんのどこが不満なんだよ人生棒に振ってんぞお前!?あんな容姿端麗で才色兼備な女性に構ってもらえて嬉しくねえのかよ!?」


 たしかこいつ数週間前に告って玉砕したんだっけ。熱意が凄えなオイ。


「ああ……、全く興味が無いな。むしろこんな風に悪目立ちしてしまってるから逆に迷惑だと感じてる程だな……」


 まあ本当は内心少し嬉しかったりもするんだが、それを口に出したらついに男子の嫉妬の炎に焼き滅ぼされそうだし、河南が一段と調子に乗ったら嫌だから隠した。


 こうして羨ましがられたりするんだが、はっきり言うと迷惑この上ない。


 静かに高校生活を送りたいと思っていた俺としては、今みたいに目立ちたくはなかった。


「お前実は性欲が無かったりするのか?女子の方を見向きもしねえもんな?」


 そうやって河南たちを見ながら聞いてくるんだが、俺を聖人とでも勘違いしてるのか?俺だってそこら辺に居る健康的な思春期の男子と基本的に一緒だぞ。


「知らないのか?女子って男子の視線に敏感なんだぞ。俺みたいな陰キャが不用意な視線を向けた日には、キモいキモい合唱が1週間は続くだろうな」


 悲しきことにこれは中学時代に巨乳の子を見つめていると実際に起きたのだ。


「いや1週間ってお前な……。それに彼女と付き合いたいとは思わんのか?」


「冗談じゃない、俺は誰とも付き合う気はないぞ。そもそもこんな陰キャの俺に声をかけてくるのは、なにか裏があるに決まってるだろ。何企んでんだが」


「お前って本当しみったれてるよな……」


「余計なお世話だ、俺は石橋を叩いて()()()()タイプなんだよ」


「あっはっは、なんだそりゃおもしれーな。……けど、あんな高嶺の花だぞ?」


 だから付き合わないの?ってか。


 これだから恋に飢えた路傍(ろぼう)の石どもは。


「美しい花だからこそ俺は眺めることに徹するのが1番だと思うけどな。栄養豊富な土与えて水やりもして、ちゃんと日光を浴びせる役割は自分じゃないといけない理由は無いだろう?俺は花を愛でるに限る」


 特に現代の男子ときたら「いや俺は今すぐに女の花を散らしたい」とかなんとかですぐに落花狼藉(らっかろうせき)に走りたがったり強く望むヤツが多いからな。


 まあ俺も年頃だから共感はできても想像と現実の区別はついてるその考えを支援することはできないな。


 幸い今の時代はインターネットが普及してるからそれで十分だし。


 ──なにより不用意に花弁を散らしても可哀想なだけだろ。


「眺めもしてない癖に何言ってんだ?お前やっぱり変なやつなんだな。……けど口にするのは猛烈に癪なんだが、お前はあいつがお前のことを好きだとは思わねえのか?」


 そんなに嫌な顔するくらいだったら勝手にフェードアウトしとけば良かっただろ、それじゃあ「余計なお世話だよバーカ」でこのやり取りが終わったってのに。


 けどこいつのセリフにも一理ある。


 俺は某ラノベのように謎の鈍感デバフを受けてるわけじゃ無いから、今日までの河南の態度からは何となく引っ掛かりは覚えていた。


 けどそれはやはり十中八九()()が原因だろうし、仮にそうだとしたらそれは歪なモノだと思う。


「あり得ないに決まってるだろ。アイツのような完璧超人が俺みたいな陰キャのコミュ障に惚れる道理なんて無いからな」


「ったく捻くれ度合いヤバすぎだろ。だってあいつ結構お前のこと褒めてあげてたじゃん?」


 恋は盲目だとでも言いたいのか?俺はその手には乗らんぞ。


 人を散々持ち上げては最後に突き落として笑いものにするつもりなんだろう。


「確かにそうかもだが、俺が好かれる理由なんて無かったはずだ」


「好きだから……じゃねえの?理由なんて理屈を後付けするための言語化だろ」


「詭弁だな。恋愛においてフラグ回収は重要だぞ」


「何だそりゃ。つーか何お前童貞くさいこと言ってんの?」


「事実だし余計なお世話だ。……惚れるきっかけだよそもそもあいつとは幼馴染でもないし過去に一度も会ったことは無いはずだからな。接点がないのに人が人を好きになるはずが無いだろ」


「ごめんなんかお前のことが可哀想に思えてきたわ……なんか色々ごめんな」


 そう言うとチャイムが鳴ったのでやっと帰ってくれた。


 それは良いんだが最後の最後で気持ち悪い同情押し付けて勝手に憐れむなよ。


 そんなレッテルがクラス内に浸透してもこっちは迷惑なだけだ。


 けどまあもう寄って来ないなら今日は収穫があったと思おう。



 ※



 まあ……心の底から不愉快な存在だと思ってる訳じゃ無いんだよな。


この作品を読んで、


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