プロローグ
拙い文章ですが、好きになってもらえたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
プロローグ
人間はその獣性を理性という檻に閉じ込め、飼いならした気でいるが、それは間違いである。
浅野和成のその呟きに込められた真意を、野望を、理解して賞賛した者は、果たしてどれ程いたのだろうか。
普段はボサボサに寝癖をつけたままの髪をワックスで固め、一張羅の黒い高級スーツを身に纏う。たったそれだけで、ニートの様な風貌からどこかの企業のエリートサラリーマンに。それは、先日まで社会から爪弾きにされてきた浅野が、現代社会に溶け込む為の仮装だった。
こんなもので推し測られる性質や能力などあってたまるかと、浅野は姿見に映る自身を見て、不服そうに鼻を鳴す。
履き慣れない革靴に足を入れ、待機室にあてがわれた六畳ほどの部屋から大ホールに向かって歩き出す。やたら大きくて重い観音扉を押し開け、大ホールに入れば、そこには虚ろな目をした百二十名の人間が集まっていた。皆、浅野の計画に賛同し、共に破滅に向かって行く仲間だ。
そこに至った理由などどうでもいい。来るもの拒まず、浅野は人を受け入れ続けた。
人々の視線を受け、照明の当たる壇上に着くと、浅野和之は子供の様に無邪気な笑顔を浮かべ語り始める。
「これは人類への罰だという人もいるでしょう。でも私が目指すところは。このプロジェクトの核はそんな大袈裟なものではありません」
静まりかえった場内。しかし誰一人として浅野から視線は外さない。
「決して勘違いしないでください。人間は悪くない。ただ私が気に食わなかっただけなんです。たった一言発するだけに、何万人もの視線や感情や境遇に配慮しなくてはいけない現代。窮屈だ。高度に発展しすぎた文明の申し子達は、悪意なく私を苦しめる。何故こんな時代に生まれてしまったのかと嘆き続けました。でも違う。間違っていたのは時代ではなく、在り方なのです」
強く握りしめた拳を突き上げ、浅野は告げた。
「ここを、獣の街とする」
一拍の間。後に場内は熱気と歓声に包まれる。
誰もが右手を上げ、こう叫んだ。「獣であれ」と。
初めの1ページ。初めの一歩です。
ドキドキする世界観を作れる様に頑張ります。