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5話


 一瞬の浮遊感を味わった後、眩しさが(おさ)まってきた。


 もう目を開けてもいいのだろうか?


 不安だが…。



 ゆっくりと瞼を上げると目の前には沼。


 右向いても沼。


 左向いても沼。


 後ろは地面。


 俺の立っている場所は沼と地面の境目。


 空は今にも雨の降りそうな曇り。



 もうちょっとマシなところに転移できんかったんかい。



「一先ず拠点探しだな。こんなところで進化はできねえ」



 この沼が毒沼ならまた別の話なんだが……。


 触っても痛みや痺れなんかは分からないからごく普通の沼なのだろう。


 いくら俺が毒は効かない身体になったとはいえ、異世界の毒にはまだ耐性が付いていない。


 不用意に近づくだけでも危ないだろうな。



 沼と隣接する地面は若干湿っているものの十分しっかりとした家は建てられそうだ。


 できれば洞窟なんかがあると多少マシなんだがな。


 そんなどこぞの小説みたいなご都合主義は無いだろう。



 沼から歩いて数分の場所にはちらほらと木が見え始めた。


 ぽつぽつと生えているだけだからこの先に森があるというのは楽観的過ぎるだろうか?


 木と言っても緑が生い茂るような木ではなく沼地に近い所為なのか栄養が足りていないのかは全く分からないが、木の葉一つも生えていない。


 枯れているわけではないだろう。


 ただただ色が灰色の謎の木というだけだ。


 異世界なんだ日本の常識で語るようなことはしない。


 郷に入っては郷に従え、だ。



 謎の木を目印に木の多い方へと進むと、森と言って差し支えないような謎の木の密集地帯に来た。


 沼から歩いておよそ7、8分というところか。


 見た感じ木の実とか絶対生らないような見た目なんだよなぁ。


 食文化が発達しているとはいえ食材が手に入らないんじゃあ意味がない。


 まあ俺料理できないけどな。



 一応目に留まった謎の木を抜いては『収納』し、家の建材にすべく回収していく。


 木は灰色という点を除けばしっかりとした根を張り芯がある。


 建材にしても強度は問題なさそうだ。


 日本でいうところの竹のようなものなのか、この木は。


 根が異常に発達している。


 一本引き抜くと二本目三本目が続いて抜ける。


 身体を一から作ったお陰かすごい力持ちになった。


 ついでに木の周りに絡まってたどう頑張っても千切れない蔓を持っていこう。


 沼地全土毒沼化計画の毒は俺から生成すればいい。


 沼地を毒沼にするのなんか簡単だ。


 多分毒を散布すればいいはず。


 間違ってたらすまん。



 はい。


 元の沼地に戻ってきました。


 俺のスキル欄には建築といった技術系のスキルは取っていない。


 じゃあどうやって建築するのか。


 気合とノリだけでいけるだろ。


 できればドワーフとかに建ててほしいけど、贅沢なことは言ってられない。


 簡易でいいんだ。



 十分後。



 よし!一先ず生活できるだけのログハウスは出来た。


 木と木のつなぎ目は沼が接着剤になってくれたし、蔓は支柱と組み合わせるのに使った。


 気合とノリにしてはいい出来だ。


 因みに『工作』と『建築』と『樵』っていうスキルが手に入った。


 樵?してないけど。抜いただけだし。


 庭も整える。


 川じゃなくて沼だけど人口河を作ってそこに余った木と石で橋を作る。


 汗かくけど楽しいな、こういうのも。


 木を引っこ抜く時に苗木があったのでそれも周りに植えておく。


 ちょっとでも景観が良くなればいい。


 根が不安材料ではあるが今持ってる木がこれしかない。


 灰色のログハウスに灰色の木が生えた庭に沼地を渡る橋か。


 しかも後々この沼地は毒沼と化す。


 なんか魔王と間違われそうだな。


 『魔剣』持ってるし。


 『聖剣』もあるけど。




 ログハウスの中に入ってみると割と快適だった。


 素人が作ったにしては空気窓もあるし、風が入ってくるようなこともないしでありがたい。


 自画自賛になるが……。


 自慢できる人もいないしな。



 もうすぐ夕方だな。


 家作りに時間がかかってしまった。


 腹も減ったけど、何も食うもんが無いしな。


 魔物でも探すか?


 こんな沼地に住む魔物とかいるのか?


 知らんけど。



 なんか魔物の位置が分かるスキルとかなかったっけ?



「ステータス」


◇◆◇


名前:マコト・ティト

性別:男

身長:178㎝

体重:65㎏

スキル:毒生成・毒無効・総合格闘術・詐術・硬質化・再生・異常状態無効・鑑定・言語理解・収納・展開・進化・封印・解放・聖剣・魔剣・操糸術・幻術・腐食・生活魔法・無属性魔法・暗視・幸運・直感・魔力操作・魔力感知・手品・囮・工作・建築・樵


◇◆◇



 見づらっ!!


 この身長体重も省略できないのか?


 お、出来たわ。


 つーか異世界来て2㎏痩せたんだが。


 飯食ってねえからかな……。


 そうだ、魔物って魔法使えるやつがいるって言ってなかったっけ?


 『魔力感知』でこの周辺の魔物を探索すればいいんじゃね?



 そうと決まれば……。



「魔力感知!!」



 お?


 おお?


 おおお?


 分かる、分かるぞ!?


 なんか俺の周りの空気中にも魔力があるのだろう。


 薄いカーテンに包まれてる感じがする。


 なんかこう、あまり言い表せないけど、フワァって感じ。



 で、沼の中は……?


 おお!なんかいっぱいいる!


 俺に毒は効かないから安心して食べ放題だな!!


 食中毒は大丈夫でも寄生虫は無理だけど。



 さて、どうやって捕まえようか?


 釣り?ぬ、沼釣り?


 聞いたことないんだが。


 手づかみしてみるか。


 幸い魔力感知が働いてるし、どこにいるかは把握できてる。



 そーろと、そーろと、沼に足の振動が伝わらないように歩く。


 釣り堀やテトラポッドの釣りは騒ぐと魚が逃げるっていうし合ってるだろ。


 真上から一気に掴みにかかる。



「捕った!!」



 捕ったけどなんだこのピラニアは?


 超狂暴そうな顔に下顎の出た口、鋭そうな牙、そして目つきが悪い。


 まんまピラニア。



 まあ食えんことは無いだろ。


 本来なら捌きたいけどナイフないしな。


 『聖剣』と『魔剣』使ってみるか。


 どうやればいいんだ?



 一先ず我が手の中にあるピラニアを木で速攻作ったまな板に置く。



 そしてとりあえず右手と左手を突き出して右手に『聖剣』左手に『魔剣』のつもりで発動してみる。



「聖剣!魔剣!」



 右手には光の粒が集まって金色の金属でできたと思われる両刃の剣が、左手には黒い闇っぽい粒が集まって漆黒の両刃の剣が生成される。


 かっこいいな。


 でも傍から見ると完全にキ〇トさんですね、これ。


 それに魚を捌く用の長さじゃない。


 これ短くならないのか?


 念じたらそうな、ると、か……。


 言った傍からなったわ。


 どっちも宝剣みたいな形にはなったものの刃渡り15センチより長いくらいになった。


 三徳包丁みたいだ。


 形は三徳包丁に程遠いが。



 魚を捌く動画は見たことがあるので今日は捌いてみる。


 先ず洗おう。


 沼から出てきたばっかだし。


 えーと、水水。


 水は?


 見たところ沼。


 水は?


 あれ!?水は!?



 あっ俺生活魔法使えるんだった。


 水出せないか?水。


 今気づいたけど水無いと死ぬやん。


 剣出してる間にまな板の上で息絶えたであろうピラニアを見る。


 洗う前にまな板に置いて悪いがまな板も一緒に洗えばノープロブレム。



 水というより魔法ってどう使うんだよ。



「水出ろや!」



 おー。


 指した方向に指から水が出た。


 なんか小便みたいだな。


 あ、お食事中の方すいません。


 お食事中は俺もじゃねえか。


 捌くところからだけど……。



 これでパシャパシャと魚とまな板と三徳包丁(聖剣)を洗う。


 魔剣の方は止めておいた。


 なんか聖剣の方が浄化されそうだったし。



 まず頭を落とし、腸を取り、中をきれいに洗う。


 川を剥いだ後、背骨に沿って三枚おろしをする。


 骨側に身も残ってるし、何回も切ったからちょっと不出来だけど出来た。


 で、刺身のように厚さ1㎝くらいで切っていく。


 皿は無いので葉っぱに盛り付ける。


 すげえ旨そうなんだが。



 岩塩っぽいしょっぱい石も見つけたので、粉々にして振りかける。


 毒効かないってこういう時いいよね。


 まだ耐性付いてないから効くけど。



 でもスキル欄に『毒無効』ってあったような気がしないでもない。


 効かないのかは明日試すか。



 まあいいや。


 実食!!



 手づかみで摘まんで口に運ぶ。



「うめえ!!」



 なんというか、身は白身でコリコリしてる。


 岩塩が魚本来の味を引き出しているのかほのかに甘い。


 これは美味しい。


 生活魔法で指先にライターくらいの火を灯して刺身を炙ってみる。


 思った以上に油が出てくるな。


 あまり適していないのかもしれないけど、食ってみてから考える。



「いや、うめえ」



 これも美味しい。


 さっきはコリコリしていたが、今度は炙った時間が若干長かったのか口の中に入れた途端に口の中でホロホロと崩れていった。


 この魚当たりだな。


 食糧難は大丈夫そうだ。



 似たような魔力を持っている奴もめちゃくちゃいるようだし、どんな味がするのか楽しみだ。



 食事を終えるとすぐさま眠気が襲ってきたので今日はもう寝ることにする。


 魔物が襲ってきたら怖いけど、今日見回って野生動物的なのはいなかった。


 まあ何とかなるだろう。



誤字報告をして下さった方ありがとうございます!!

初めて誤字報告から誤字を直しました。

誤字報告のやり方を教えてほしい……。

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