2話
実行日は彼女の命日。
悪夢から丁度一年経った。
復讐するにはぴったりな日だろう。
見ていてくれ。
仇を討つから。
あのクズはそれなりの地位にいるらしく、アジトの奥まで進まないと会えない。
それにはまず下っ端から殺していく必要がある。
アジトは繁華街の中にあり食中毒事件を引き起こすことも簡単だが、どうせなら客も巻き込んで大量虐殺するのもいいだろう。
親はクズ。
彼女は殺された。
彼女の両親には信じてもらえず、警察を呼ぶ始末。
俺の価値は復讐という目的を持ったただの人間だ。
悲しむやつはいない。
なら盛大に巻き込んでやろうじゃないか。
子供の時から事件をさらに大きくしたり、混乱させるのが好きだった。
消火栓を押したり、電車を止めたり。
いつからこうなったのかは分からないが、少なくとも彼女の死によって何かが壊れたのは確かだ。
繁華街の通気口に筋弛緩剤を気化させて入れる。
これで数分待てば繁華街の者は全て動けなくなるだろう。
更にクロロホルムを入れ意識を落とす。
最後に換気扇を全て機能停止しありとあらゆる場所に練炭を置いていく。
大量一酸化炭素中毒殺人だ。
意識が落ちるだろうその間にクズのところまで走る。
強面の奴も護衛らしき奴も普段からガスマスクなど付けておらず、倒れている。
クズは幹部のお気に入りらしく最上階の一つ下の部屋でパーティーをしていた。
デカい音量で女を侍らせて酒を飲んでいる所為か、俺が部屋に入ったことも気づいていない様だ。
部屋と言ってもダンスホールくらいの広さはあり、五十人ほどでパーティーをしている。
この部屋にも勿論筋肉弛緩剤とクロロホルムは散布している。
数分待つと一人また一人と膝から崩れ落ちているのが確認できる。
俺には毒は効かないので高みの見物だ。
毒を警戒してか食い物には手を付けなくなり、護衛を呼び慌しくなってきたがもう遅い。
そして誰も起き上がることは無くなった。
実に静かだ。
音楽は切った。
クズが指をさしてこちらを睨んでいる。
お望み道理傍へ行ってやろう。
「お……あ…ぇあ……」
「ははっ何言ってるか解んねーよ!!」
勢いよくクズの顔面に足を振り下ろす。
鼻から大量の血が噴き出たが気にしない。
酒が回ってることもありよく出るな。
「お、がぁ……」
「なぁ、覚えてるよなぁ?自分の息子を忘れるわけがねぇよなあ?」
質問と同時に仰向けになったクズの腹を蹴っていく。
「じゃあてめぇが何したか分かってるよなぁ!!」
「おぐぅ」
鈍い音がしてクズは吐瀉物をまき散らす。
「俺の彼女を殺しやがって!!」
「ごぼっ…」
「てめえを殺すことを何度夢見たことか!!」
「う……」
「てめえの顔を見ていたらあの悪夢を思い出す!!」
できるだけ惨たらしく苦しみを味わせてやりたかったが、このままだと俺がどうにかなりそうだ。
もういいや。
「死ねよ」
「うごぉ!!」
右足で首を踏み潰す。
ショック死と窒息死が相まって全ての穴から液体が出てきている。
親父を殺したが何も感じない。
俺の右足は血やら何やらでぐちゃぐちゃだが、そんなことはどうでもいい。
なにより仇討ちが終わった。
あとはちらほらと残っている奴らにお礼をするだけだ。
一酸化中毒死になるにも時間がかかるため、この繁華街全てを焼き切らなければならない。
これで証拠も犯人も全て闇の中だ。
最初から最後まで俺の自己満足だった。
次生まれ変わるならもっといい家庭に生まれたい。
こういうのはもう勘弁だ。
火の手が広がる。
毒が効かなくなった体になったのはいいが、痛みに鈍くなってしまったお陰で火が体を纏っても痛くない。
これでようやく解放されたかな。
復讐終わりです。
主人公の名前出すの忘れてました。
次出します。