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【part1】ヤンキーと勇者ご一行

「あん?なんだテメー、メンチ切ってんじゃねえぞコラ」

「な、なんだい君は。め、めんち?」

「こうちゃんやめよう、僕らの恰好が目立つんだよ」

「待ってくれ小森くん、どう考えてもこいつらの恰好の方がおかしいじゃねーか」

「なんだと小僧、真っ黒な服着やがって、お前らまさか魔王軍のモンじゃねえだろうな」

「学ランってんだよ筋肉ダルマ。マオーグンだか知らねーが、タイマンすっか?」

「ウハハ、威勢の良いガキだな。気に入った。俺が相手してやる。魔物の相手にも飽きてたとこだ」

「ダン!やめるんだ!彼らはきっと異世界から来た者だ」

「へっ、上等だ。小森くん、下がってな。このでくのぼうわからせてやるからよ」

「こうちゃんダメだってば!どう見てもその人たち冒険者だよ!悪い人じゃないよ!多分!」


ダンと呼ばれる筋骨隆々の大男は、まるでRPGの「戦士」かのような風貌だ。

担いでいた大斧をドシンと降ろすと、嬉しそうに首をボキボキと鳴らす。

一方こうちゃんはというと、こちらもまた嬉しそうに鞄を投げ捨て、肩をグルグル回している。


そこに割って入る、これまたいかにもRPGの「勇者」のような好青年。

「ダン、待て。だめだ。そんなに魔物の相手に飽きたなら、僕が相手になってやる」

一見華奢にも見える勇者だが、剣と盾を捨てて大男の前に立ちふさがる。

「うるせーな優男、今話まとまったんだから引っ込んでろよ」

ただのヤンキーが口を挟む。


「なっ…、僕は君のことを思って言っているんだぞ!!」

「ガハハ、本人がそういうんだから仕方ねえなハルフミ。安心しろや、ちょいと勉強させてやるだけだ」

どうやら勇者っぽい男はハルフミというらしい。


「もういいじゃないハルフミ、やらせてあげれば。そうしたら彼も身の程がわかるでしょ。ダンだって殺しゃしないわよ」

今のこれまで冷めた目で傍観していた、この場で唯一の女性が気だるそうに声をかける。

RPGでのイメージとは言動が少し異なるが、見た目は完全に「神官」である。

となると、彼女の隣に腰かけ、未だ我関せずな青いローブの男は、「魔法使い」だろうか。


「馬鹿なことを言うんじゃないリリーナ。シンイチロウも黙ってないで止めてくれ!」

「………」

あの魔法使い…、シンイチロウっていうのか…。


僕がのんきにRPGと現実(現実?)のイメージの違いにショックを受けていると、


「ああめんどくせえ!誰の心配してくれてんだオラァ!!!」

ヤンキーは勇者っぽい男を押しのけ、ついに大男に飛び掛かってしまった。


「さあこいクソガキ!!勇者パーティーの力教えてやるぜ!!」

え?やっぱりこの人たち勇者ご一行なの?

いやいやそれどころじゃない、早く止めないと!いやいや勇者に止められないものを僕が止められるわけ…

僕が頭を抱えていると、


ゴッッッッッ!!!!!!!


拳が、骨を捉えた音がした。


「こうちゃん!!!!」

今の音はヤバイ。

何が殺しはしないだ!!ただの高校生に手を出して何が勇者ご一行だ!!


「口ほどにもない奴だなオイ」


・・・あれ?


10mほど吹き飛んで、1回2回とバウンドしながら転がっていく大男。


「ダン…?え…?」

空いた口が塞がらない勇者。


「嘘でしょ…?」

目をむいて驚く神官。


「馬鹿な…!」

シンイチロウ喋る。


…えーと


理解が追い付かないなか、大男を殴り飛ばしてアイコスで一服しはじめた友人に僕はなんと声をかければよいのだろうか。



「…こうちゃん。世界、救ってみる…?」

こんな状況で、僕は何を言っているんだろうか。



「馬鹿言わないでくれよ小森くん」

厳密には煙ではない水蒸気をフゥと細く吐き出しながら、彼は言った。




「俺はヤンキーだぜ?」




どうしてこんなことになってしまったのか。

どうして盗んだバイクで走り出してしまったのか。

どうして尾崎は僕たちをこの世界に誘ったのか。

暗い夜の、帳の中へ――――

ヤンキー:小笠原 昂大

僕:小森くん


勇者:ハルフミ

戦士:ダン

神官:リリーナ

魔法使い:シンイチロウ

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