Episode 1
俺は坂上 聡美。スタントウーマンだ。
女みたいな名前だが、実際、肉体は女性である。精神は男だが。
「坂上さん!」
子ども向け特撮ヒーロードラマの撮影中。俺は女性のヒーローの変身体を演じていた。
「はい?」
休憩中、変身前を演じる女優の田中 冴子に、俺は声をかけられた。
「監督知りませんか?」
「監督? いないの?」
「はい。今、みんなで捜してるんですが……」
「私の出番はまだだから休憩してたけど、ここには来なかったわ」
「そうですか……」
「私も一緒に捜すよ」
「ありがとうございます」
俺はマナ、つまり人の生命エネルギーのようなものを察知して監督を捜し出す。
……?
監督のマナが感じられない。
「きゃああああ!」
どこからか悲鳴が聞こえてきた。
俺と冴子はすぐさま駆けつける。
監督が倒れており、そこに女性が腰を抜かして座り込んでいた。
監督は血まみれで、すでに絶命している。
「か、監督!」
「そんな……!」
「田中さん、とりあえず警察に」
「はい!」
冴子が携帯で110番している。
微かにマナの力を感じる。
「怪しいものがないか見てくるわね」
俺は現場を離れ、辺りを捜索した。
マナを追い、森の中で犯人を見つける。
「おい!」
「……!?」
驚き戸惑う犯人。いや、怪人だった。
「貴様、何者だ! なぜ監督を殺した!?」
「カー!」
怪人が襲いかかってくる。
俺は攻撃をかわし、反撃した。
「ぐえ!」
怪人は倒れた。
マナの数値を計測する。
人間とあまり変わらないか。
「ほう。怪人を見ても逃げず立ち向かうか」
謎の声がどこからか聞こえてくる。
声の主である男が俺の前に現れた。
「誰だ」
俺は構える。
「お前、女の姿をしているが、中身は男だな? それも、地球人ではない」
「……!? なぜわかる?」
「俺はスクリプト人のバッカスだ」
「クリプトン人? 著作権は大丈夫か?」
「それはスーパーマンだ! スクリプト人だよ!」
「スクリプト人が監督を殺したのはなぜだ?」
「待て待て。俺は殺してない」
「あの怪人はお前が使役してたんじゃないのか?」
「違うな。やつは我々スクリプト人と敵対しているジャヴァ人だ」
「ジャヴァ人?」
「ああ。やつらは非力ながらも地球人を一掃し、地球を我が物にしようとする侵略者だ」
「なるほどな……って、信じれっか!」
俺はちゃぶ台をひっくり返した。
「そのちゃぶ台はどこから出てきたのだ?」
「気にするな。で、仮にあんたがスクリプト人で、さっきの怪人が敵対しているジャヴァ人だとして、お前は何しにきたんだ?」
「俺はジャヴァ人が地球に怪人を放ったのを察知して追いかけてきたんだ。スクリプト人は宇宙警察機構の集まりでな、そういう情報網には長けているんだ」
「宇宙警察機構?」
「聞いたぞ。邪神マデラを倒したんだってな」
「ああ」
「そこでだ。君の力を見込んで頼みたい。ジャヴァ人を止めるため、君に協力してほしい」
「いやだね」
「そこをなんとか」
「やれやれ。仕方ねえな」
「本当か?」
「ああ。そこまで言われちゃ、断れねえよ」
「それはありがたい」
「だが、監督を殺したこいつはどうすればいい? こいつを警察に突き出すのか?」
俺は後ろで寝込んでるはずの怪人を親指で差した。
「逃げたぞ」
「なに!?」
振り返ると、逃げようと走っている怪人の姿が見えた。
「行かすか!」
俺は怪人の前に回り込み、叩きのめしてロープで縛り付け、冴子が呼んだ警察に引き渡した。
「怪人が吉崎さんを?」
吉崎。監督の苗字だ。
「ご協力感謝します」
警察が事件を処理し、怪人を連行した。
「監督死んじゃったし、ドラマパートは誰が進行させるの?」
「それは私がやりましょう」
助監督の阿形 宗介だ。