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その不思議な客人は穏やかな庭に強烈な光を灯す

「なんだ、想像以上に小娘ではないか!」


訂正しよう。

決して私の知っている御伽噺には、こんな失礼な人はいない。


「これ、宵月が隠れてしまったではないか。

こう見えても立派な淑女であってな。そのような物言いは許さんぞ。」


「へぇ、泣く子も黙るあんたでも自分の番には弱いわけだ。ねぇ、君ここにきてどれくらい?」


「勝手に話しかけるでない。宵月、此奴は昔馴染みでな。すまないが少し我慢してやってくれ。」


月の背中に隠れて着物の後ろからこの怪しい青年を睨んでいた私のそっと前に押し出す。

いつも私の勝手にさせてくれる月にしては珍しいので、何か事情があるのだろう。


「はじめまして。篁 宵月です。ここにきてどれくらいかははっきりわかりませんが、一月くらいだと思ってます。」


「え?一月?それなのにそんなに……」


「ソル!余計なことは申すなと言ったはずだ!」


「おーおー怖い怖い。宵月ちゃん僕はソル。月とはたまーにお茶するお友達ってとこかな?以後お見知り置きを。あ、あと君が警戒している僕の心の声は聞こえないから安心してね。さっきからなにも聞こえないでしょ?」


目を見開いて驚くとソルと名乗った青年は輝くような笑顔を見せて明るく笑う。


「よっぽど大切にされてるんだねぇ。君の悩みは少なくてもこの庭を訪れる者には当てはまらないから安心してもいいよ!」


その陰に隠れるところなんて月にソックリだ!


笑いながら私の髪をくしゃくしゃに撫で回す。

咄嗟のことに体を硬くした私を月が背中から抱きしめて、髪も綺麗に梳き直してくれる。


「だからお前にはあわせなくなかったのだ。だいたい馴れ馴れしすぎる!もう顔は見たのだから満足しただろう。帰れ!」


珍しく口調の荒い月に驚きながら、でも私に触れる手は変わらず優しく安心させてくれる。


「そうはいかない。どうやら僕は君と話さなくてはいけない事が多そうだ。まだこの子には知られたくないのなら僕からは言わないけど、こんなに神力が高くなってしまってはもう現世に返すのは難しいだろうに。この子の意思はどうなの?」


「ソル!よい、あちらで話すとしよう。宵月悪いが少し向こうの庭の様子を見てきてくれるか?あとでお茶にするからいくつか花を見繕ってきてほしいのだ。そうだな、赤い花を中心に頼む。美しい曼珠沙華なども入れてもらえぬか?」


「うん、わかった。」


月の様子に少し離れた方がいいと感じた私は、大人しく月に言われた通り少し離れた庭に行くことにする。


「お姫さんのこと大事にしてんなー。じゃあまたな、お姫さん。」


ソルさんの顔はやっぱりとてもさわやかな笑顔なのに、なぜかとても底がしれない顔に見えて怯えてしまう。


軽く会釈をして私は庭へ歩き出した。

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