代わり...
「そう…
撫子さん、私の勝手な事で巻き込んでしまってごめんなさいね。
見て分からないかもしれないけど今凄く辛くてね。
すぐに治すから…よかったらそれまでお願いできない?」
撫子の近くに瑠架の手を借り歩み寄ると顔の位置を合わせ話し掛けた。
撫子はキョトンとしながらも明るく頭を下げ言うお嬢に優しい微笑みで頷いた。
「ええ、私頑張ります。
演技とかは得意なほうだと思うんです。」
その会話を見た蒼羽が慌てて撫子の腕を引きコソコソと
「なで、この街の頂点だ。
もっと畏まって。」
小さな声で言うが耳の良いお嬢は聞こえていたらしく後から
「蒼羽、撫子さんは私よ。
同等の存在だと思って接して。
あと!」
大きな声を出すと体を労わるように瑠架が乗り出しそうなお嬢を抑えた。
「大丈夫、少し二人きりにさせてちょうだい。」
和がそう言うと5人は立ち上がりその場を離れた。
「お、お嬢様…大丈夫ですか?」
撫子の心配そうな声で2人きりの沈黙はすぐに壊れた。
和はか弱く微笑み苦しそうな声を出していた。
「えぇ、大丈夫よ。
春の城入りに備えているのかもと思って…これを…
誰にも見せてはダメよ?」
そう言うと握りこぶしを出してきた。
撫子はおずおずと手を出すと逆の手で撫子の腕を掴んだ。
「この街の外に出れるの。
何かあった時、誰にも気付かれずに…
門番にも会わずに外へ出られる。
ただ、見る人が見れば分かってしまうの。
だから…」
そこまで言うと椅子から床へ崩れ落ちた。
撫子が駆け寄り抱えられるように起き上がった。
「寝室へ戻りましょう。
今呼んできます!」
そう言い撫子は服を脱ぎ、上着を掛けて他は頭の下に置いてクッションにした。