第八話「フルスペックハイ奇跡」
どうすれば読みやすいか、模索中です。
アドバイスか何か欲しいです。
飛び蹴りみてぇな衝撃が背にくる。
急いで振り向くとそこには……………
「喜一!?」
急に喜一が現れた。
しかもスゲェ笑顔でこっちを見てやがる。
「ナ、何で喜一がここに!?そして何故に光学迷彩!?」
「龍輝。今度からは歩幅を考えて歩け。咲花が合わせるのが大変だろうが」
真面目な顔に切り替わって喜一が言った。
思わず咲花を見る。
咲花は苦笑いしながら言った。
「ちょっと、ホンのちょっとだけ、大変だった…………です」
ガイーン、とか付きそうな動作で俺は地面にへたりこんだ。
ダメだ!
こんなんじゃ、俺はダメだ!
ダメ人間だぁ!
こんな調子じゃ何時まで経っても女子と仲良く出来ねぇ!
何故か思考が鬱ゾーンに突入する龍輝。
それを軽やかに躱して喜一が全員を促す。
「歩きつつ話そうぜ。時間の無駄だ。」
そういうと歩き始める。
慌てて追随する咲花達に気付いて、龍輝はトボトボと追いかけた。
「ゲーセンか………寄っていかないか?」
喜一がそう言うと咲花が途端に挙動不審になった。
不思議に思った喜一が質問する。
「嫌か?嫌なら別に良いんだが……………」
「ち、違います!わ、私行った事が無いので………楽しみです!」
「は、初めて!?あ、いや、お前らも別に構わんな?」
今時珍しいな。
ゲーセン経験が無いなんて。
俺と空野が一緒に頷く。
「ヨシ。じゃあ、行くぞ」
俺達は団子状になって自動ドアを潜った。
いきなり薬玉が割れ、クラッカーが鳴り響いた。
「おめでとうございます!貴方方は一万人目と一万一人目と一万二人目と一万三人目とのお客様です!賞品を差し上げます!」
早口に捲し立てた後、店員が喜一にラッピングされた箱×4を渡した。
大きさは丁度…………
「賞品は今週発売したばかりの大人気ゲームソフト[モンスターバトル]です!」
そう、ゲームの箱位………モンスターバトル!?
マジ!?あのモンスターバトル!?
販売と同時に全世界で異例の一千万枚売れたモンスターバトル!?
品切れで予約しても手に入らない幻のゲームじゃねぇか!
喜一も呆然としている。
賞品を渡した店員は営業モードに切り替えて、何処かに行ってしまった。
「クレーンゲームに行こっか。取り敢えずヌイグルミ取らなくちゃ」
苦笑いをしながら喜一が言った。
「さぁ、どれを取って欲しい?奢っちゃうよ?」
上機嫌なご様子で俺達を見回す。
嬉しさの余り地に戻ってる。
教えてやろうかどうか、ひとしきり悩んだ後、熊太郎ソックリなデカいヌイグルミを指差す。
別に良いだろ、こんくらい。
「オーケー。今日の僕はひと味違うよ?何せ幸運の女神が付いてるからね♪」
そう言いつつ、真剣な顔でボタンを押す。
アームは空振る…………と思いきや首のわっかに引っ掛かって持ち上がった。
オイオイ、マジに運良すぎだろ。
落ちてきたヌイグルミを俺に手渡す。
ん?なんか変なカードがついてるぞ?
カードには一番と書かれてる。
後で店員に聞くか。
この後、咲花はクジラの、空野はクラゲをそれぞれ取って貰っていた。
因みに俺はフニャフニャネズミも取って貰った。
全部一度で取りやがった。
どんだけセンスがあるんだよ。
「カードがついてきたんだけど、これは何の為なの?」
首を捻る仕草が可愛い。
口にはゼッテェ出さねぇけどな。
「そういえば私のにもついてきてたよ?何だろうね?」
これでカードが四つ。
全部一番だ。
「僕のにもついてきてるよ。それも二つも。こういうのは店員に聞くのが一番手っ取り早いでしょ」
俺達はカウンターまでゾロゾロと歩いて行った。
店員に全員イッペンにカードを見せたら、店員の顔が驚愕で彩られた。
一言断りを入れた後、猛烈な速度で店の奥に引っ込んだ。
暫くして店員が戻ってきた。
初老のオジサン、恐らく店長と思しき人物を連れている。
どちらも笑おうとして失敗したような顔になっていた。
ゴソゴソと台の下を探した後、悲鳴のように叫んだ。
「おめでとうございます!!クジが当選してらっしゃるのでこちらをドウゾ!!!」
手渡されたのは先程渡された物より二倍程大きいラッピングされた箱。
これはもしや……!!
「大人気ゲーム機[ドリーマー]です!!!」
叫び切った後、店長は奥に走って行ってしまった。
オイオイ、グレートに運が良すぎるだろ、常識的に考えなくとも。
「何で走って行ってしまったんですか?」
咲花は心底分からない、といった顔で俺に尋ねた。
「そこは触れてやんな。流しとけ」
龍輝も地が出てしまった。
この状況下では動揺しているようだ。
ゲームセンターを出たのはそれから15分後の事だった。
女の子が持って歩くのは無理だからと、喜一にゲーム機を三台持たされる。
これ位四つ纏めても無いみてぇなもんじゃねぇか、つったら喜一に化け物呼ばわりされた。
………………………傷付いた。
商店街のアーケードを歩く。
抽選会を見た咲花が、手を打ち合わせた後言った。
「そうだ!ここに丁度クジ四回分があるんです!皆でやりませんか?!」
そんな楽しげに話されたら誰も断れねぇ。
断る気は毛頭ないし。
「良いね!それ名案だよ、サッキー!」
変なあだ名を言ったのは空野だ。
そのネーミングセンスを小一時間問い詰めたい。
「そうと決まったら早くやろう!」
喜一は既に列に並んでる。
もう地でいくんだな。
嬉しい様な寂しい様な、微妙な感情が湧いた。
「どんな景品があるのかな?」
最新型の量子コンピュータが五台、十万円分の旅行券が二十枚、米十キロが三十袋、フルーツ盛合わせが四十個、花火とお菓子セットが百個、ティッシュペーパー一ダースが二百…………何か豪勢だなぁ、予算大丈夫か?
咲花は俺が読み上げたのを聞いて、閃いたとばかりに言った。
「今気付いたんですけど、量子コンピュータを当てればモンスターバトルがすぐ出来ますよ!!」
微笑ましいな、咲花は。
そんなに簡単に当たったら、もう景品は一つ残らずかっさらわれてるよ。
それにそういう事を言ってる人に限ってポケットティッシュのみとか悲惨な目に遭うんだぜ?
順番が回ってきた。
咲花が抽選四回分の券を渡す。
順番は咲花→空野→喜一→俺だ。
咲花が回した。
エイ!とか何とか言いながら回す。
出てきた色は……金だ。
「大当た〜り!一等の量子コンピュータだ、嬢ちゃん!おめでとう!」
「うわぁ、やった〜!見てください、一等を出しましたよ!」
満面の笑顔でこっちに振り向く。
ホントに出た金だ。
少し信じられなくて目を擦る。
やっぱり金だ。
なんだ?今日は幸運の叩き売り販売でもやってんのか? 幸運率が凄まじい事になってるんだが?
神様辺りがサボタージュでもかましてやがんのか?
なんとなくこの先の予測がつきそうな気がしてきた。
空野が勢い良くガラガラと回した。
スピードが速過ぎて案の定、玉が玉が出ねぇ。(オルガ風)
ゆっくりと回すと金が出た。
オッサンがベルを物凄く振り回す。
「オオオオあた〜〜りぃ〜!!量子コンピュータをもう一台プレゼントだ嬢ちゃん!」
空野は咲花と手を取り合ってはしゃいでいる。
マズい、非現実すぎるだろ俺。
頭を振りつつ自分の考えを否定する。
その時には喜一も回していた。
ガラガラという音と共に出たのは金だ。
いよいよ俺の想像が現実のモノとなりそうだ。
オッサンはベルを振るのも忘れて、中の玉が均一になるように必死に揺さぶったり、逆に回したりした。
その後、まるで挑むかのような目付きで俺を見る。
ガラガラと抽選台が回る。
俺が出した色は……………金だった。
涙目のオッサンからパソコンを貰うのはかなりの抵抗があった。
……………貰ったけどな。
俺は量子コンピュータを二台ずつ肩に担いで、アーケードを抜けた。
やっぱりパソコンを四台も持って帰ってたらおかしいよな。
俺は集まる目線の意味をそう履き違えた。
量子コンピュータは一台四十キロ位あるから良い筋トレになるな。
人は彼を化け物と呼ぶ。