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第七話「天上(汚泥)の女神は俺(僕)に微笑む」

 序章と凍る世界with流氷教室(絶対零度の自己紹介)をいじりました。

凍るはともかく序章は全然違うので読み直した方がいいかもです。


 咲花はすべての質問に答えた後、ユックリと席に戻ってくる。

 嗚呼、俺も質問責めに遭ってみてぇなぁ。

 無い物ねだりをしている俺に、横の席に座った咲花が、ナント話しかけてきた。

「東………君だよね?」

「そうだけど、どうしたの?」

 上辺は至極冷静そうだが、心の中は上を下への大騒動だ。

 何故なら俺の準備万端のシミュの中にすら話し掛けられる、という想定は無かったから。


 何でちゃんとシミュをしとかねぇんだ!

 責任者は誰だ!

 出てきやがれ!


 ウワ、ヤベェって緊急事態!

 女子に話し掛けられてるって!


 大佐!

 涙で前が見えません!


 落ち着くんだ大尉!

 私達脳内人格に泣くという機能は搭載されていない!

 ドイツ軍人はうろたえない!


 テメェが落ち着けよ。

 何時から軍人に成ったんだよ?


 俺達、機能・搭載ってロボか何かか?


 話が脱線してるぞ。

 議題に戻れ。


 一先ずあちらサンの言う事聞いてみようぜ?


 バカが!

 バカも休み休み言え!

こんなんでやってボロが出たらどうする気だ!

だから貴様はバカなんだ!


 責任者出したってどうにか何のかよ、この頭でっかち!!


 自分を罵る様な悲しいマネすんな。

先ずはこの状況を乗り越える事が―――


 喧々囂々の脳内会議は、咲花の質問によって打ち切られた。「どんな風に特待生になったんですか?…イエ、ちょっと気になっただけで意味はないんですけどソノ…………」

 いや、そんなに畏まられるとやりづらいんだけど。

 別に失礼な質問じゃねぇんだからさ。

「大会で勝ちまくってたら学校の人が来てさ、内の学校に来ませんかって誘われたんだよ。…………なんか漫画とかそのままで笑えるでしょ?」

 非常によくやった俺!!

 かなり自然な感じで笑いを挟んだぞ!

 満足感に浸ってる俺に咲花が更に尋ねてくる。

「東君って空手はどの位強いの?」

 !!!!!!!!!!!!!!

 この質問はヤバい!!

 上手く答えないと彼女の心にフィアーを刻む事になっちまうぜ!(暴走気味)

「ン〜、一応大会とかを連覇する位は………アハハ」

 スッバッラッシイ!!

 これなら謙遜してる感じで怖くなくない!?

「大会を連覇したんですか!?スゴく強いんですね!」

 照れるからそんなストレートに褒めんなよ。

 むずかゆくなった俺は話題を強引に代える。

「それよりさ、咲花……さんはヌイグルミを集める事が趣味なんだよね?どんなコがいるの?」

「エ?ヌイグルミ?え〜と、ポンタにミーチャン、ゴンにムイムイ」

(ポンタとミーチャンとゴンと、ムイムイ!?

 何ムイムイって!? スッゲェ気になんだけど!!!

 これは聞いとかなきゃ、夜もおちおち眠れねぇぜ!

 俺が口を開くよりも早く咲花が言った。

「あ、もし良ければ家に来ませんか?家のコ達も喜ぶと思うんですけど?」


 龍輝は教室の異質な空気に気付かない。

 タダ咲花の、満開の笑顔に心奪われていた。

 どういうアクロバットをしたんだろうな、俺。

 フローチャートが拝めるんなら穴が空く程見てみてぇ。

 ゼッテェ、有り得ない様な確率と難易度の裏ルートだぜ。


 皮肉る脳内人格に拳を叩き込む。

 ウゼェ。黙ってろ。

 今俺は下駄箱で、咲花と[和やか]に会話している。

 そこには怯えも戸惑いも無い。

 正真正銘のクラス仲間との温かい交流だ。


 この惑星直列みたいな体験を精一杯味わおう、と俺は胸の内で呟いた。


 コイツにも拳を叩き込んだ。

「咲花さんの家はどの辺りに在るの?」

 咲花に見とれた後、全力で俺から目を逸らす外野をシカトで流す。

 今はそんなのに割く心は俺の中に余ってねぇ!!!

「結構近いですよ?歩いて十五分程度ですから」

 校門を潜りながら、小走りの咲花が言った。

「ヘェ、近いんですね。登下校が楽って良いですね」

 余りに普通な会話。

 喧嘩になりそうな空気も、緊迫した空気も、殺伐とした空気も、凍り付いた空気も無い。

 以前の俺には考えられなかった、素晴らしい空気だ。

 俺が幸福を味わってると、思わぬ人物がそれを叩き割った。






 僕はタッチャンの自己紹介が終わると同時に席を一番後ろまで運んだ。

 あの女の人が質問してくれたし、タッチャンの努力も報われたかな?

 もしかしたら、こっちに移る意味なかったかもなぁ。

 顔を綻ばせながら喜一は胸の内でひとりごちる。

 机を置き、座って一息つく。

 途端に斜め前に座っていた女の子がこちらに振り向いて話しかけて来た。

「ねぇ、キミさぁ、アノ大きいのと友達なのぉ?」

 スゴく甘い感じの喋り方だね。

 というか!

 その前に!

 何その顔!?

 社会の教科書に出てた山姥ギャル!?

 しかも、なんで髪の毛が味付海苔の親戚みたいになってるの!?

 正直、余り相手にしたくない輩だなぁ。

 それでも無視はヒドいので返事をする。

「そうだが?それがどうかしたか?」

 物言いが若干辛口なのは許して欲しい。

 僕だって人間なんだから。

 山姥はへこたれずに話しかけてくる。

「スッゴォイ!ねぇ、怖くなかったの?」

 何、言ってるの?

 タッチャンが………怖い?

 あんなに優しいのに。

 口は悪いし顔も悪いけど(人相的な意味で)、本当に良い人なのに。

 それを、側に居るだけの僕がまるで英雄?

 何言っちゃってんの?

 頭おかしいんじゃないの?

 僕が検査してあげようか?

 今なら只で叩き割ってあげるよ?

 湧き上がる殺意と憤怒を押さえつつ、僕は冷然と言う。

「別に。龍輝はそんなのじゃない」

「え〜、デモォ、あんなの友達ってスゴいジャン。勇者?って感じ」

「よく、話しても無いヤツの事なのに、怖いやら怖くないやらが分かるんだな。超能力だ。テレビにでも出てろよ。そして失せろ」

 完全に僕の中で愛想とか優しさが吹っ飛んだ。

 悪意を持って、相手に言葉を投げ付ける。

 流石の山姥も鼻白んだのか、声のトーンが変わる。

「ゴメン。そんなに怒ると思わなくて………」

 僕が怒ったって思ってるんだ?

 違うよ?怒ってないよ?

 君の首をへし折って、五体バラバラにして、ミンチにしたいなぁってほんの少し殺意を抱いてるだけだから。

「怒ってはいない。龍輝と俺は親友だからそういう事を言われるのは我慢出来ないだけだ。自分の身が大事なら今後は気をつけるんだな」

 言外に次は許さないと宣告する。

 その時、空気を引き裂く音が響いた。

 主に男子勢が手を天高く挙げていた。




 咲花というらしい美人がタッチャンの隣りに座る。

 暫くモジモジした後、意を決してタッチャンに話しかけた。

 この距離だと、口を読まなくても大丈夫だな。

 五席しか離れてないし。

 …………………………………………………………………………………

 ナ、ナンダッテー!!

 タッチャンが、あのタッチャンが、女の子に誘われてる!?

 なんという奇跡!!お赤飯炊かなくちゃ!!

 でもその前に…………

「楽しそうだし、ストーキングしなくちゃなぁ」

 変装セットでもあれば雰囲気あって尚良いんだけどなぁ。

 無い物ねだりをする僕に山姥が言った。

「舞美達を尾行するの?変装セットがあるけど貸そうか?」

 フルスペックハイ奇跡!!!!

 何で学校に変装セット持ってきてるの!?

 いや、でも貸して欲しいし…………。

 常識と欲望の間で揺れる僕に、山姥が内緒話をするみたいに顔を近付けてきた。

「その代わり………私も混ぜてね?アッ!次、私だ!自己紹介が終わった後に返事聞かせてね?」

 山姥が言うだけ言った後、教壇に歩いていってしまった。

 立つのと話し始めるのは同時だった。

空野香そらのかおり、15歳デェス!只今彼氏作り中デェス!」

 そう言って僕にウインクを飛ばす。

 ハハハハ。

うわぁ、ドウシヨウ。

 ここまでウザいのは予想外だったよ。

 カタイ笑顔を浮かべる僕に、止どまる所を知らずに放言する。

「好きな事はぁ、バスケでぇ、特待生でぇ、特技マジックスキルはぁ、空気を読む事デェス!」

 やはり僕にウインクする。

 キミキミ。

 空気のクの字も読めてないから。

 そんな感じで延々と喋り立てる。

 言い終わった時には皆すっかりダレていて、フリーダムな空気が形成されていた。

 あぁ、確かに緊張とか緊迫とかは無くなったね。

 でもね、キミのおかげでね、皆疲れちゃったんだけど?

 当然、僕もね。


 山姥が無気力になってる僕に言った。

「断る気力も無いでしょぉ?」

 満面の笑顔とともに話す。

 取り敢えず頷いてやった。

 この人が男で且つ体力が残ってたら殴るんだけどなぁ。




 順調に自己紹介が進む。

 大取の僕に順番が回ってくる。

 前に立った僕に女子の黄色い歓声がぶつかる。

 ハァ、いつもの事だけど慣れないなぁ。

 でも、タッチャンの為にも頑張んなきゃ!

 軽く息を吸い込んだ後、喋る。

「笑田喜一、年齢は15歳。東龍輝が言っていた[喜一]というのは俺の事だ。龍輝と同じ空手のスポーツ特待生だ。特技はクレーンゲームで龍輝の為にウサギやらトリやらクラゲやらを取ってやっている。そのお陰でクレーンは得意中の得意だ。趣味は龍輝をいじって遊ぶ事と新しい技を龍輝で試す事だ。俺のオモチャだから、俺の許可無く苛めるなよ」

 終始不機嫌面をして言う。

 こう言えばまるでタッチャンがイジメられっこみたいで、コワモテ度が下がるハズだ。


 喜一はやや得意気に龍輝を見た。

 龍輝は咲花と話をしていて、話を聞いていた風では無い。


 あの泥棒猫!!

 僕はシャウトする寸前で踏み止どまった。




 ツケバナにサングラス、ヒゲの変装をする。

 学校では浮きまくる恰好だけど、そこはご愛嬌だ。

 タッチャンと咲花さんが楽しそうに玄関で話をしてる。

 さっきは咲花さんの所為でタッチャンに聞いてもらえ無かったけど、タッチャンの笑顔に免じて許す!

 だって、本当に嬉そうだもん。

 悔しさで歯が軋む位だけ、少し噛み締める。

 くそぅ、何かよく分かんないけど、くそぅ。

 横の山姥、空野さんが僕に言った。

「折角変装したんだから、後ろ二メートル位まで近寄ろうよ」

 チャレンジャーだね!?

 この怪しげ爆発の変装でバレないつもり!?

 寧ろ変装関係ないよね!?

 そんなに近付けば例え変装してても意味ないよね!?

 尾行って言葉の意味、分かってる!?

「ちょっ、ムリだって!!」

 無謀な提案に驚きを隠せない僕。

 しかし空野さんはその斜め上をいっていた。

「変装セット型光学迷彩に複合式探知相殺機が起動してるから気付かれないって」

 一女子高生が何を所持してんの!?

 初めて聞いたよ、そんな隠密用の機械!!

 しかも、変装型である意図が分かんないし!!

「そこはご都合ですよ」




 大いなる力が働いていつの間にか、タッチャン達の後ろ二メートルについていた。

 もういい。

 全部流してしまおう。

 …………………………………

 もしかして………歩幅を合わせるとかそういうのを知らないのかな?

 タッチャンは。

 そりゃまあ、一緒に帰ったりする事が無かったからしょうがないけど……………世話が焼けるなぁ、もう。

「テリャ!」

 タッチャンに跳び蹴りを食らわす。

 「ウエッ!」

 急な事だった為タッチャンがたたらを踏む。

 コケないとこや痛いと言わない事とかがタッチャン・クオリティだなぁ。




 世話が焼けるよなぁ。

 こんな簡単な事も知らないんだから。

 今度から一つ一つ教えていかなきゃ。

 ホンット、世話が焼ける。


 変装セットを取った喜一の顔は、とても嬉しそうに笑っていた。



 咲花舞美さきばなまみ

 八月八日生まれ

 157cm ??kg


 日本美人に見られがちだが、実際は西洋人形そのままな人。

 目が見えないのは理由があって…………






 空野香そらのかおり

 十二月十二日生まれ

 160cm  ??kg


 汚物キャラに見られがちな可哀相な女性。

 実は…………。


 ご都合・話を強引に戻す・キャラを面白くする等々、作者には重宝する道具的汚物キャラ。

 喜一に惚れてるのもそっちの方が面白い為。


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